八条学園騒動記
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第七百三十九話 スパイは何処にいるその五
「牛がスパイか」
「そんな筈ないだろ」
「有り得ないわ」
二人共全力で否定した、二人は犯人を捜す推理でないとこれといっておかしなことはない。スパイについても然りである。
「もうね」
「牛がどうしてスパイをするんだ」
「幾らマウリアでは市民でも」
「あるものか」
「そうだ、有り得ないことだ」
タムタムも疑っておらず言った。
「そんな偏見は捨てることだ」
「マハラジャタウンの人達がスパイなんてな」
「エウロパのね」
「本当に有り得ないな」
「そんなことはね」
「確かに独特だが」
マハラジャタウンのマウリアの者達もというのだ。
「しかしな」
「それでもだな」
「スパイじゃないわね」
「断じてな」
「そう思うなら偏見ね」
「偏見は唾棄すべきものだ」
まさにというのだ。
「それこそだ」
「エウロパの連中だな」
「あいつ等と同じになるわね」
「何が白人至上主義だ」
タムタムは顔を顰めさせて唾棄する様に言った、実際に。
「あんなもの何になる」
「正直言ってナンセンスだからね」
ジャッキーの目も冷たいものだった、声もそうなっていてこれ以上はないまでに軽蔑の気持ちを以て言うのだった。
「そんなもの只の迷信だからね」
「科学的に言うと間違っているな」
「そうした妄想だからね」
「考えですらない」
「本当に迷信で妄想よね」
「そんな類のことでしかない」
「そうよね、白人が一番優れてるって」
人間の中でというのだ。
「じゃあ知能指数でも運動能力でもね」
「連合のどの国よりも上でないとだ」
「エウロパのどの国もね」
「成り立たない話だが」
それでもというのだ。
「しかしな」
「それでもだ」
テンボも言うことだった。
「現実は正反対だ」
「連合のどの国もだ」
「エウロパのどの国よりも勝っているな」
「知能指数も運動能力もな」
「他のことでもな」
「連合は混血が進んでいるしだ」
それにというのだ。
「誰もが努力している」
「個人差でしかないからな、人間の能力は」
「知能指数も運動能力もだ」
「努力すればな」
「何とでもなる」
よくなるというのだ。
「そうなる」
「そうだからな」
「意味ない考えもどきだな」
「まさにな」
その通りだというのだ。
「そう言うしかないな」
「しかしね」
ジャッキーはまた言った。
「産業革命でちょっと技術手に入れてね」
「そこまで傲慢になれるのも凄いな」
テンボが応えた。
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