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神々の塔

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第五十四話 八艘跳びその二

「世界史見たらな」
「兄弟を殺した人はやな」
「我が国かてな」
 中国にしてもというのだ。
「ほんまな」
「そうした人はおるな」
「結構な」
 中里に真面目な顔で話した。
「おるで」
「唐の太宗もやしな」
 羅はまずはこの人物の名を挙げた、中国の歴史において名君と名高く今も讃えられている人物である。
「宋の太宗もな」
「そうしたことしてるな」
「それで他の国でもやろ」
「そうした話は多いな」
 中里も否定しなかった。
「オスマン=トルコかてな」
「あそこは皇帝になった人以外の兄弟皆殺してたやろ」
「皇位継承争い避ける溜めにな」
「そやなかったら幽閉してたし」
「過酷やったな」
「欧州でもあるし」
 そうした話はというのだ。
「ほんまな」
「頼朝さんみたいな人はやな」
「おるやろ、というか織田信長さんも」
「弟さん殺してるな」
「そやな」
「もっと言えば室町幕府も江戸幕府も」
 頼朝の鎌倉幕府だけでなくというのだ。
「そうした話あるな」
「常にな」
「そや、それはな」 
 実際にというのだ。
「嫌な話やが」
「どうしてもあるな」
「ほんまな」
「お家騒動はこっちの世界でもあるしな」
 メルヴィルはその顔をこれ以上はないまでに顰めさせて話した。
「あちこちで」
「家督とか財産争ってな」
「そやな」
「何処でもあるな」
「結局何かあったらな」
 跡を継ぐにあたってだ。
「こうしたことはな」
「常やな」
「人の世にはあるわ」
 そうしたものだというのだ。
「確かに頼朝さんは人気ないのは当然やが」
「それでもやな」
「お家騒動\は人の世の常でな」
 それでというのだ。
「頼朝さんだけが特別やない」
「他にも色々あるな」
「それこそ家督とか財産とか巡って」
「身内同士で争うな」
「血を分けた兄弟同士でもな」
「それもまた人やな」
「そや」
 メルヴィルは言い切った。
「そうしたもんや」
「そやな」
「しかし」
 ここでだ、トウェインは中里に話した。
「源氏はそればっかりやったな」
「身内同士で殺し合ってな」
「それに尽きたな」
「結果それでや」
「誰もおらん様になったな」
「源氏の血は絶えたわ」
 源為義の家系はだ。 
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