X ーthe another storyー
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第五十二話 祝宴その九
「貴方はおそらく姉さんと共にね」
「夢見としてだね」
「働いてもらうわ」
「そうなるんだね」
「これからは眠った時にね」
その時にというのだ。
「そうなるわ」
「常にじゃなくて」
「ええ、それでいいかしら」
「いいよ、僕も地の龍だから」
だからだとだ、牙暁は答えた。
「そうさせてもらうよ」
「それではね」
「お話は終わりましたね」
星史郎がここでこう言った。
「では僕はこれで」
「行くのね」
「そうさせてもらいます」
庚に微笑みを向けて答えた。
「これから」
「そうなのね」
「楽しかったですよ」
澄んだ、曇りのない笑顔での言葉だった。
「皆さんと一緒にいて」
「そうなの」
「もう素直に言っていいですね」
その笑顔のまま言うのだった。
「昴流君、北都さんと一緒にいた時と同じだけです」
「楽しかったのね」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「お礼を言わせて頂きます」
「お礼はいいけれど」
「そうはいきません。まことにです」
「素晴らしい思い出になったのね」
「僕にとって。その思い出を胸に」
二つのそれをというのだ。
「あちらに行きます」
「そうするのね」
「地獄になると思いましたが」
それでもとだ、彼は言ったのだった。
「煉獄になりました」
「そちらに行って」
「そこからです」
「生まれ変わるわね」
「そうなるとのことです」
「そうなのね」
「ではその煉獄からです」
星史郎はさらに言った。
「皆さんを見守っていますね」
「そうしてくれるの」
「はい、そちらから」
「お願いするわね、毎年お墓参りはするから」
「皆さんが」
「そして彼もね」
「前を向いたうえで」
星史郎はここでも微笑んで話した。
「そうですね」
「そうよ、彼もこれからね」
「では憂いはありません、それでは」
「さようなら」
「はい、お元気で」
全ての仲間達に告げてだ、星史郎は姿を消した。消えるその最後まで笑顔であった。そこで目覚めてだった。
地の龍達は日常に戻った、やがて彼等も退院してだった。
鏡護も退院した、その彼の傍には封真と小鳥、そしてだった。
神威もいた、鏡護は三人を見て話した。
「三人でとはな」
「思わなかったか」
「こうして生きていることすらな」
封真に微笑んで答えた。
「思わなかった」
「けれどこれは現実だよ」
「そうだな、皆生きてな」
そうしてというのだ。
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