神々の塔
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第五十二話 名前その九
「それ故にわかりにくいが」
「鬼もいてますね」
「あちらの世界にもな」
「そしてその鬼に」
「山にいる者達が入っておるな」
「間違えられたりですね」
「しておる、だが鬼は悪さもするが」
このことは事実だが、というのだ。
「それだけではない」
「人と同じくですね」
「よいこともする、鬼にも心がある」
「何かと言われましても」
「外見や持つ力は違うが」
人とは、というのだ。
「しかし心がある、人の心があればだ」
「人であって」
「神霊の心を持てばな」
「神霊になりますね」
「そして外道の心を持てば」
その時はというのだ。
「外道となる、それは鬼だけでなくだ」
「人も同じですね」
「左様、鬼にも外道がおり」
それと共にというのだ。
「人にも外道がいる、わしを見るのだ」
「ああ、起きた世界の」
芥川が応えた。
「元は人やったという」
「人の心をなくしてだ」
「鬼になりましたね」
「そうだったな、だが鬼も実はだ」
「心があり」
「正邪も弁えていてな」
その実はというのだ。
「悪い者もおれば」
「ええ人もおる」
「それは山の民も西の者達も同じだ」
鬼と混同された人々もいうのだ。
「悪しき心を持つ者こそだ」
「問題ですね」
「左様、わしが人を食ったかどうかはな」
「なかったですね」
「獣の肉を喰らい」
そうしてというのだ。
「酒を飲むが」
「そのお酒が」
「わかるな、そして山賊であったからな」
「盗みをしてましたか」
「人を攫ってな」
「そこは童話と同じですね」
「だが人を喰ったりな」
その童話の様にというのだ、お伽草紙においては酒呑童子と彼の配下の者達が人間の刺身や生き血を口にする場面が書かれている。
「そんなことはしていない」
「人が人を喰う」
「あるにはあるが」
そうした話もというのだ。
「わしはな」
「そんなことはしませんか」
「猪や鹿は喰った」
そうした獣の肉はというのだ。
「刺身にもした」
「それはあきません」
シェリルがすぐに言ってきた。
「野生の獣や川魚のお肉は」
「この世界では刺身にして喰うなら冷凍するな」
「うんとそうして」
徹底的に冷凍させるのだ、術や冷凍庫を用いて。
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