八条学園騒動記
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第七百三十二話 ナマケモノその十
「それではです」
「今はアマゾンの哺乳類達を観てな」
そうしてというのだ。
「そのうえでだ」
「次はですね」
「有袋類だ」
「その様に」
「あとだ」
ここで大尉はジャガーをまた観て言った。
「ジャガーは豹に似ているな」
「そっくりですね」
上等兵もジャガーを観て答えた。
「模様が多少違うだけで」
「外見も大きさもな」
「豹そっくりです」
「生息地域も同じ密林だしな」
「尚更ですね」
「そっくりだ、しかしだ」
それでもとだ、大尉は上等兵に話した。今ジャガー達は自分達のコーナーの中で穏やかに寝ている。
「日本語ではライオンとなる」
「ライオンですか」
「アメリカライオンと呼ぶのだ」
日本ではというのだ。
「地球ではアメリカ大陸に棲息しているからな」
「だからですか」
「豹ではなくな」
「ライオンですか」
「そうな」
「ライオンには観えないです」
上等兵は首を傾げさせて答えた。
「とても」
「私もだ」
「ライオンというとどうしても」
この生きものならというのだ。
「鬣がです」
「雄にあるな」
「雌にはないですが」
それでもというのだ。
「やはりライオンといえばです」
「鬣だな」
「それがないので」
「そうだな、しかしだ」
「日本語ではですか」
「そう呼ぶのだ」
「アメリカライオンだと」
「面白いことにな、日本語は複雑だが」
エウロパではその難解さから悪魔の言語とさえ呼ばれている。
「こうしたこともだ」
「ありますね」
「そうだ」
こう上等兵に話した。
「次に行く生きものでもある」
「有袋類でも」
「そのことを言っておく」
前以てというのだ。
「日本語はな」
「ジャガーの様な生きものを豹でなくですね」
「ライオンと呼ぶこともな」
「生態も豹そっくりですね」
ジャガーはとだ、上等兵はこのことを確認した。
「そうですね」
「そう言っていいな、だが」
「それでもですか」
「日本語ではそうなる」
「左様ですか」
「漢字で書くと尚面白い」
大尉はこうも言った。
「これがな」
「亜米利加獅子ですか」
「そうなる」
「日本語や中国語は他国に漢字をあてますね」
「中国は元々漢字の国だしな」
「その漢字を使う日本もまた」
「国家や生きものにだ」
「漢字をあてますね」
「それでそうなる」
ジャガーを漢字で表現すればというのだ。
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