イベリス
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第百三十話 最高のカードその八
「節度があり真面目で清潔な環境ですね」
「私の周りは」
「周りの方に恵まれていて」
そうしてというのだ。
「そのことで問題はです」
「ないですか」
「ご家族やご親戚学校で問題はないですね」
「はい、部活もで」
咲は速水も見て答えた。
「全く」
「そう思われるならこのままの環境で」
「いていいですか」
「はい、この環境はきっと小山さんを素晴らしい人に成長させてくれます」
そうしてくれるというのだ。
「ですから」
「このままですね」
「いて下さい」
「そうさせてもらいます」
「それでは、そして九枚目ですが」
最後から数えて二番目のそれに入った。
「今度は願望や恐れですが」
「何が出るかですね」
「そうです、それは」
カードを裏返した、すると。
塔の逆だった、咲はそのカードを見て顔を強張らせた、そうしてそのうえで速水に対して即座に尋ねた。
「あの、塔は」
「正でも逆でも意味はほぼ変わりません」
「どれも破滅とかですね」
「それを表すです」
そうしたというのだ。
「タロットで最悪のカードです」
「そう言われてますね」
「ですがこれは小山さんの恐れていることですね」
「破滅することですか」
「これはどなたでもですので」
だからだというのだ。
「この場合は特にです」
「気にすることはないですか」
「破滅は普通はしたくないものです」
こう言うのだった。
「ですから」
「この九枚目のことはですね」
「特に」
これといってとだ、速水はまた言った。
「気にされないで下さい、小山さんに破滅願望がないことは明らかですし」
「私そんな」
咲もそれは否定した。
「破滅したいとか」
「そうです、真面目に生きておられ道を踏み外さないので」
だからだというのだ。
「このことはです」
「はっきりしていますか」
「はい」
そうだというのだ。
「無意識でもそれがありますと」
「出ますか」
「どうしても、ですがそうしたものはないので」
咲には無意識でもというのだ。
「まことにです」
「気にしなくていいですか」
「そうです、ではです」
「最後の十枚目ですね」
「最終結果小山さんの人生全体のこととなりますが」
それがというのだ。
「今わかります」
「そうですか」
「いいですね」
右目で咲を見て問うた。
「裏返しても」
「わかりました」
これが咲の返事だった。
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