リュカ伝の外伝
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トモダチ100人分だよね?(後日談編)
(グランバニア城下町:プービル)
ルディーSIDE
週が明けてリュカ様に看板の件をご報告。
お忙しくて中々お会い出来なかった。
即時に事務所に確認をしに。
タイミングの問題でプリ・ピーの皆さんは居らず僕だけが結果を知る事に。
するとビックリ!
何と賭けに勝ったのはキャロラインさんだけに。
リュカ様曰く、
「文字以外の看板はガキっぽい。良いんだよオフィスなんだから文字だけで! 言ったろ『気張んなくて良い』ってさ」との事です。
キャロラインさんの言っていた事と同じ事を仰った。
アイリーンさんは悔しがりそうだなぁ……
結果的には僕の責任だし、ご飯を奢るのには僕もお金を出したいな。
ってか一緒に食事に行きたいなぁ!
早速看板を入り口の上に設置する。
大きさ的には丁度良い。
これでこの建物が何なのかが分かる様になった。
設置が終わり少し眺めてると……
「ここが新しいオフィス事務所ね。事務員の応募で来ました。給料は社長からの直接身体支給で雇ってちょうだい」
と、僕と社長(リュカ様)に話しかける女性の声が……
視線を向けると、そこには丸眼鏡を掛けた両頬がチークで赤い女性が一人。
……ってか、ビアンカ様だ!?
「え、事務員? 別に募集はかけてなかったけどなぁ……」
「そんな事は如何でも良いのよ! 私も何か仕事が欲しいの。暇なのよぉ……何かリュカは楽しそうな事を沢山やってるし。狡い!」
パッと見変装で王妃陛下だとは判りにくいけど、いくら治安の良いグランバニア王都でもビアンカ様がお一人でフラつかれるのは危ないのでは無いだろうか?
……と思う人も居るだろう。居るよね?
しかしながらご安心ください。
ビアンカ様の腕には巻き付くぬいぐるみの様に一匹のホイミスライムが武装されているんです。
只のホイミスライムではございません!
リュカ様等と共に世界を平和にする冒険に随行した歴戦の強者!
それがこちらに御座すホイミスライムのホイミンさんなのです!
僕などがビアンカ様に襲いかかろうモノなら、一瞬でご先祖様の元へと片道旅行が強行されます!
「ふ~ん……まぁ良いけど。まだ商売としては軌道に乗ってないから、お給料は払えないよ? 前回のコンサートの売り上げをメンバーの娘に均等に渡しても足りてないくらいだからね。アイリーンちゃんなんか『絶対に超有名バンドになって見せます! そうなったらギャラは多くして貰いますけども、それまでは無給でも構いませんわ! バイトは続けていきますので……』って言ってくれてるし」
「訊いてなかったの? 私の給料は経営者である社長からの直接身体支給って言ったのよ! 不払いは許さないわ!」
「なるほど……だとすると既に多額の前金を支払っているなぁ」
わぁ大人の会話♥
「前金制とか無いわよ。全て日給制で毎日支払って貰うわよ!」
「困るなぁ……支払先は沢山あるから、僕一人だと大変だ(笑)」
リュカ様ならではのお悩み!
「まぁ兎も角、立ち話もなんだから一旦中に入ろうよ」
リュカ様がスマートな動作で入り口を開けると、慣れた身の熟しでビアンカ様が中に入る。
美男美女がやると凄く様になるよね。
僕はまだ2階と屋上にしか行った事が無かったため初めて見学させてもらうんだけど、1階の奥は応接家具とか置いてあって休憩出来る部屋になっている。
壁には何枚か絵画が飾ってあり、その中の一つに魅入られてしまう。
どなたがモデルなのかは分からないのだけれど、凜とした表情の女性が描かれている。
絵の端に目をやると、そこには宮廷画家の“ラッセル・クリステンセン”さんのサインが入っている!
流石だ! 上手すぎる! 技術もセンスも桁違いだ!!
思わず絵に見入っていたら、ビアンカ様が奥でお茶の用意をしてくれてた。
本当は一番下っ端の僕が率先して用意しなきゃダメなんだろう……
恥ずかしい限りである!
「すみません! ぼ、僕がやるべきでした!」
僕の分の紅茶まで用意してくれたビアンカ様に、慌てて謝罪。
「何言ってんのよ。私はここの事務員よ。お茶くみも私の仕事なの」
でも優しく許してくれる女神っぷり。
「まだ雇うとは言ってないが?」
「あら、拒否権があるとお思いですか社長?」
「そりゃぁ……僕はこの会社の社長で、この国の王様だからねぇ」
「でも私は貴方の妻なんですよぉ?」
「うわぁ……本当だ、僕に拒否権なんて存在しなかった(笑)」
「オホホホホッ、解ればよろしい!」
う~ん……王族の世界でも奥様が一番偉いんだな。勉強になる。
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暫くの間のんびりティータイム。
お二人から『一人暮らしには慣れたか?』とか『彼女が出来たのか?』等の世間話で和んでいた。
そうしているうちにプリ・ピーの皆さんが事務所に入ってきた。
どうやら看板の結果を皆さんで確認するために、学校で集合してからここに来たそうだ。
キャロラインさんの一人勝ちに、彼女は大喜び。
「え~! 社長ぅ~……楽器の絵が描かれた看板では駄目でしたかぁ!?」
「アイリーンちゃんはあっちを推してたの? ダメダメ、あんなガキっぽいのは! ちゃんと大人が仕事する会社の看板なんだから、文字だけで良いんだよ」
「やったぁ~……私の見解と完全一致! 私ってば社長と相性が良いのかもぉ?」
「くぅぅっ! 悔しい!」
キャロラインさんの喜び様とアイリーンさんの悔しがり方が対照的すぎて楽しい。
「あの……ところでそちらの女性はどなたですか?」
キャロラインさんとアイリーンさんの言動に苦笑いしてた他のメンバーさんの中から、アーノさんが気になりリュカ様に問うた。
「あぁ……僕の奥さんのビアn……ルービス。募集してないのに強引に今日からここの事務員になってくれた美女。よろしくね」
「な、なるほど! で、では我々は“奥様”とお呼びすれば良いですね」
そ、そうか……リュカ様を名前で呼んじゃ駄目なのだから、ビアンカ様も別名で呼ばないといけないんだな。
流石アイリーンさんだ。よく気付く。
「さて……今日は軽めに練習して、夕方には“ニック・ジャガー”さんのお店で賭けの負けを支払うわよ」
「まぁ……勝ったのはキャロちゃん一人だから、負けたウチらへの負担は低いわねぇん」
「何言ってんすかピノパイセン! この賭けは優越感を得るためのモノですよ! いやぁ~……最高に優越感を感じてますわぁ!」
本当に仲が良いのだろう、キャロラインさんはアイリーンさんの肩に手を置き愉悦に浸っている。
「くぅぅぅぅっ!」
「何だぁ? 僕がどの看板を選ぶかで賭けをしてたの?」
そうだった……リュカ様には言ってないんだった。
「あ、なんかすみません。どうしても私たちのプライドが掛かってまして……勝手な事をしてしまいました」
「いや別に賭けくらいは良いけどさ。喧嘩はしないでよ」
確かに喧嘩なんてされては困ってしまう。
今回の件は僕の実力の無さが最たる原因なのだから、この賭けも僕が責任を負うべきだ。
「あの何でしたら、練習後の食事会と称した賭けの結果は僕に会計を支払わせて貰えませんか? 僕が3つも作ってしまったのが原因ですから」
「お、それが良いじゃん。こいつの実家は凄げー金持ちだから、集っても問題ないと思うよ(笑)」
「それはそれは……でもねルディー君。今回は違うんだなぁ。何度も言うけど優越感を得るために負けた者にはお金を支払わせる事に意味があるのだからね!」
「そ、そうですか……残念です。で、でも是非僕も一緒に食事会に行って良いですか!? 自分の分のお金は当然支払いますからぁ」
「当然問題ないわよぉ! ねぇ皆?」
「えぇ」「問題なし」「一緒に行きましょ」
勝者のキャロラインさんからも、他の方々からも了承を貰い一緒に食事会に行ける事となった。やったね♥
「じゃぁ……新しい事務員さんの歓迎会を一緒に行おう。そっちをお前が支払えよ」
なるほど!
それは良い考えだと思う。流石リュカ様だ!
「う、嘘でしょリュカ……いくら何でもこんな子供に集らないでしょ……」
しかしビアンカ様……いや奥様からは疑問の声が。
別に問題ないんですけども?
「いやそうは言うけどさぁ……こいつ凄げー額の仕送りを貰ってるんだぜ、祖父さんから(笑)」
「そ、そうなのルディー君?」
「あ、はい。お祖父様から毎月10000G送って貰ってます!」
「ま、毎月10000G!?」
奥様からの質問に答えただけなのだが、やっぱり一般的な仕送り額としては高額だよね。
周りで話を聞いていたキャロラインさんから驚きの声が響いた。
「あのハゲ、孫に甘いんだよ! 若い男はちょっとくらい金銭的に苦労した方が良いと思うがね」
「そんな事言って……リュカだってアミーが一人暮らしするって言ったらもっと仕送りするでしょ!」
奥様が意地悪く言う。アミーちゃん可愛いからなぁ……
「女の子は金銭的な苦労はしない方が良いんだよ! 変な稼ぎ口が多いから、金銭的な苦労をすると碌な選択肢を選ばない可能性がある」
確かにそうかもしれない。
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因みにこの日の夕飯は、GEOの皆さんと楽しく食事会をしました。
勝者のキャロラインさんが肉じゃが定食とビールを5杯もお替わりをしたため、他のメンバーさんたちからブーイングに遭ってました(笑)
皆さん凄く楽しそうだったです!
ルディーSIDE END
後書き
ルディー君SIDEの「トモダチ100人」シリーズは
2023年11月の入院中に全部を書き上げました。
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