リュカ伝の外伝
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サクラマウ
(グランバニア城下町:グランバニア運河)
ルクレツィアSIDE
「ちょほいと待ちなはぁ~!」
アルル様はこの方を避けていた。
「キャッキャッキャッ♡」
アミー様はこの方の歌を聴きたかった。
「一曲、歌わせてもらうぜ!」
だから歌おうとしているのだろうけど、今はそういう場合じゃない。
いや……そんな事は解っているのだろう。
それがこの方……プーサンと言う通り名のリュカ陛下なのだから。
ラングストン隊長から警護任務を言い渡され数ヶ月。
正月の休みはご家族団欒でと思い、随行しなかった事を後悔した。
行くだけ行って殿下等の視界に入らない位置でお守りしていれば、アルル様にも迷惑は掛けなかっただろう。
だからこそ今、目の前に居る危機を私が追い払うべきだたのだ。
しかしながら出遅れた……
隊長や陛下から市井では無闇に剣を振り回すなと言われていた為、タイミングを逃した!
その所為で……
今私等の目の前ではプーサンと呼ばれるストリートミュージシャンがAGを弾きながら歌っている。
一刻も早くこの場から去りたかったアルル様……
その心情を理解している私……
酔った勢いでナンパして邪魔されてる酔っ払い二人……
誰もがこの人の出現を疎ましく思っている中、唯一喜んで居られるのがアミー様。
プーサンの歌に合わせて可愛く手を叩きご満悦である。
如何すれば良いのだろう?
歌う前に『東へ西へ』とタイトルコールして歌い出したのだが、赤ん坊が喜ぶ歌には聴こえない。
昼寝をしたら夜は寝れないと赤子に訴えて如何する?
そして何でそんな歌でアミー様は喜べるのだ!?
「おう、何なんだお前は!?」
オールバックの酔っ払いがプーサンの歌を遮ってクレームを付けた。
気持ちは解るがその方の相手をするのは止めた方がいい。
「だぁ!?(イラッ)」
だが一番最初に反応したのは、歌を止められてイラついたアミー様。
あからさまに不機嫌な顔と声で酔っ払いを威嚇する……怖くはないけど。
(ぎゅっ!)「ふがぁっ!?」
「美人がそんな顔をしちゃダメだなぁ(笑)」
右手の親指と人差し指でオールバックの酔っ払い野郎の鼻を摘まみ上げると、左手では優しくアミー様の頬を撫でる。
「痛ででででっ……や、やめろ!!」
元々酒の所為で鼻の頭と頬が桜色してたけど、今は顔全体が桜色で満開だ。
ハゲ酔っ払いの方はオロオロするだけ……
「おやめ下さいプーサン! その方々は酒で理性が利かないだけです」
「でもその酒を飲んだのは自分自身だぜ? 素面の時から理性が働いてないのであれば問題だし、酔えば理性が利かなくなるのを承知で飲んだんだから、罰しても問題無いと思うよ」
「兎も角……もう反省してるでしょうから離してあげて下さい!」
「……ちぇっ」
アルル様の懇願に残念そうな顔で応じるプーサン。
摘まんだ鼻を離す際に、勢いよく放り投げたので、オールバックの酔っ払いは土手を転げて落ちていった。
ハゲ酔っ払いは慌てて転げる仲間を追って行く。
面倒な酔っぱらいがいなくなって清々した。
「やり過ぎですお義父様!」
「そうかい? アミーが居たから手加減はしたんだけど(笑)」
確かに陛下が手加減してなければ、この辺りは一面血の海になっていただろう。
「でも気に入らないなぁ……」
「なにがですか!? あの二人は反省してますよ、きっと……」
反省……してるだろうか?
「如何かな。きっと酒の所為にして以後も同じ様な事を繰り返すよ」
私もそう思います。
酔っ払いとはそういう生き物です。
「いっそ、ああいう輩を牽制する法律でも作るか」
「そこまでしますか、普通!?」
確かにそれはやり過ぎでは?
「いや、先刻の奴ら限定じゃなくてさ……今後酔っ払って問題行動を起こさせない様にする法律だよ」
「酔っ払いに法律を翳して効果がありますか?」
「先刻も言ったけどさぁ……飲む前は酔っ払ってないからね」
「そうですけど問題は酔っ払った後の事でしょう?」
「だからさ、酔う前に理解させる法だよ」
「……? ぐ、具体的には?」
「うん。飲酒状態……いや、酒気帯び状態で法に触れた場合は、最終的に下される罰則が2倍になる」
「はぁ?」
如何言う事だ?
陛下程に頭は良くないので、直ぐに理解が出来ない。
「例えばね……喧嘩をして傷害事件を起こしたとするじゃん。その場合に素面だったら傷害罪として10年の禁固刑が下されたとして、酒気を帯びていたら2倍の20年になる。罰金刑も同様ね」
確かにそれなら酒を飲んでも問題さえ起こさなければいい事ね。
「今の例えは喧嘩だったし、片方が酔ってて、もう片方は素面だったら罰則にも大きく差が出るよね。飲む前に意識をして、自分の酒量を超えない様に大人な飲み方をして欲しい」
「……まぁ、抑止力にはなる……かも……しれませんけど」
「法律ってのは抑止力だよ。よ~し、そうとなれば善は急げだ! 帰ってウルフに草案を纏めさせよう☆」
思い立った陛下は行動が早い。
アミー様の頭を優しく撫でると、颯爽とルーラで帰ってしまった。
その姿を残念そうに見送るアミー様……
逆に清々とした表情で見送るアルル様。
私は思う。
陛下を避ければ避ける程、アミー様は陛下を求めてしまうのでは?
だが近付ければ育児に悪影響が出る事は私にも想像出来るし、部外者の私には何も言えない。
私も結婚をして出産すれば、アルル様の考えをもっと深く理解出来るのかもしれないわね。
はぁ~……
彼氏も居ない私が、その遙か先の出産を考えるのは早すぎるわ。
あぁ……彼氏が欲しい。
まさかあのお局軍曹のクエンティーナ・マサイス殿に先を越されるとは思っても居なかった。
しかもお相手はラインハットの貴族だという……
世の中には色んな趣味の男が存在するわねぇ。
ルクレツィアSIDE END
後書き
ルクレツィアのモデル(モチーフ?)は
ガンダムWの人です。
そのままです。
名前もそのままです。
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