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ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル

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第123話 ガツガツカレーを完成させろ!祐斗VSウォータイガー!!前編

 
前書き
 リンの顔の傷がついた理由を原作から変更、後クミンとサフラの父親の死因をオリジナルで付け足しました。 

 
side;祐斗


 おはよう、皆。僕達は列車の中で一夜を過ごしてガツガツカレーのお店が開く日を迎えたよ。今から楽しみで仕方ないんだ。


「リンさん、ティナさん。朝ですよ、起きて下さい」
「う~ん……祐斗君、おはようだし……」


 僕は隣で寝ていたリンさんとティナさんに声をかける。すると先にリンさんが目を覚まして声をかけてきた。


「おはようリンさん、もう朝ですよ」
「ん~……祐斗くん~」
「おっと」


 するとリンさんが幸せそうな笑みを浮かべて僕に抱き着いてきた。僕はそれを優しく受け止めて彼女の背中に手を回す。


「朝から祐斗君に会えて幸せだし~」
「僕も朝からリンさんに会えて幸せです」


 嬉しそうに僕を抱きしめるリンさんにキュンとしながらも彼女の頭を撫でる僕、イッセー君や小猫ちゃん達を見ていたら自然にこうしちゃうようになっちゃったんだよね。


 最初は年上の女性に失礼かなと思って謝ったんだけど、二人からはとても好評だったので今は普通に撫でているんだ。


 因みに小猫ちゃんに教えてもらったんだけど女性は髪を触れられるのを嫌がるから触らせてくれるだけでもかなり信頼されていると聞いたんだ、僕は二人に信頼されているって分かって嬉しくなったよ。


「祐斗君、キスしよ」
「分かりました」


 僕はリンさんに顔を寄せると唇を優しく重ねた。それだけで胸の中に幸せな気持ちがいっぱいになって溢れそうになってしまう。


 今まで女性と関わることは多かったけどこんな事をするほど親しくなった子はいなかった、復讐を終わらせた僕は僕を好きだって言ってくれたリンさんとティナさんに出会って人生を新たに楽しんでいる。


「ん……ぷはぁ」


 数十秒は唇を重ねていたけど苦しくなったのでいったん離れた。


「祐斗君、やっぱりかっこいいし」
「リンさんだって綺麗で素敵な顔をしていますよ」
「そう?顔に傷のある女って嫌じゃない?なんか汚いみたいに思っちゃって……」


 リンさんはそう言って自身の顔にある傷を触った。


 この傷はミスをして猛獣に攻撃された時についてしまったみたいなんだ、リンさんはこの傷を少し気にしているみたいだ。


「リンさん」
「祐斗君?」


 僕はリンさんの顔の傷にキスをして彼女を強く抱きしめた。


「その傷はリンさんが努力してきて付いた傷ですよ、汚くなんかありません。むしろ愛おしくて仕方ないくらいです」
「祐斗君……」
「自信を持ってください、リンさん。貴方は凄く綺麗で僕の大切な女性なんですから」


 僕はそう言って再びリンさんの口にキスをした。


「祐斗君、ウチの事好きすぎだし」
「はい、大好きですから」
「ウチも大好き♡」


 僕達はお互いに好きだと言って笑い合った。こんな風に女性を愛おしく思える日が来るなんて思わなかったよ、でも今は凄く幸せな気持ちだ。


「ちょっと、私のこと忘れていない?」


 すると隣から誰かの声が聞こえてきた、振り返ると不機嫌そうにジト目をするティナさんがいた。


「ティナさん、おはようございます」
「おはよう、祐斗君。それはそれとしてなんでリンなんかとイチャついているの?正妻は私でしょ?」
「はぁ?何言ってるんだし。祐斗君の一番はウチに決まってるじゃん」


 ティナさんの言葉にリンさんも額に青筋を浮かばせて怒りを露わにする。こ、怖い……


「祐斗君、ウチが正妻だよね?ウチ祐斗君の為にフラグレンスを作ったりしてるしウチが一番祐斗君の為になってるし!」
「私だって食材の事を教えたりしてるもん!それに祐斗君とは私の方が先に出会ったんだから私が先よ!」
「出会った順番なんか関係ないし!ウチと祐斗君の愛はアンタより深いんだし!」
「そんなわけ無いでしょ!私の方が祐斗君と愛し合ってるのよ!」
「え、えっと……」
「クポー……」


 ヒートアップしていく二人に僕は何も言えなかった、僕の頭の上でクルッポーが怯えている。


「こうなったらどっちが祐斗君への愛で勝ってるか勝負だし!」
「望むところよ!私が一番だって証明してやるんだから!」


 二人はそう言うと何故か服を脱ぎだした。


「えっ二人とも何を……」
「ほら祐斗君も脱いで」
「どっちが満足させれるか勝負だし」


 勝負ってそういう事か!二人が何をしようとしてるのか理解した僕は逃げようとしたけど抑え込まれてしまった。本気を出せば振りほどけるけど二人に怪我をさせたくないのでそれは出来ない。


「ちょっ……流石に朝からは!皆も起きてこない僕達を気にして来るかもしれないですよ!」
「大丈夫よ、ドアの前にクルッポ―を置いて見張りしてもらうから」
「クポッ!?」


 ティナさんの言葉にクルッポーはまたかよ!?……という感じで驚いた。ゴメンね……


「さあ祐斗君、どっちが一番か選んでもらうわよ」
「お昼までフルスロットルだし」
「こ、こうなったらヤケだ!二人とも覚悟してもらいますよ!」


 下着姿になった二人を僕は押し倒した。そしてカレーを食べに行くお昼まで僕達は勝負を続けたのだった。


 因みに勝負は僕が二人をノックアウトさせてしまったのでドローになったよ。



―――――――――

――――――

―――


「ふわぁ……眠い」
「大丈夫か、祐斗?寝過ごしていたし疲れているんじゃないのか?」
「だいじょうぶだよ、イッセー君」


 激しい運動をした僕は疲れが出て欠伸をしてしまった。隣で歩くイッセー君が心配して声をかけてきたけど大丈夫だと答える。


 今僕達はガツガツカレーのお店があるグルメビーチに向かっている所なんだ、テリーとオブはビーチでお留守番してるよ。後で美味しい物を持って行ってあげないとね。


「わぁ……流石に人がたくさんいるわね」
「飲食店もいっぱいありますね」


 リアス部長が人だかりを見て驚いていた、今がシーズンとはいえ凄い人の数だね。それに負けないくらいの屋台を見て小猫ちゃんが嬉しそうに呟く。


「イッセー!早く食べに行こう!」
「えっ、今からカレーを食べに行くのにお腹を膨らませるつもり?」
「カレーは飲み物なんでしょう?問題ないわよ!」
「行くぞイッセー!」


 ゼノヴィアさんがテンションを上げてイッセー君の腕を引っ張っている。それを見た黒歌さんが今からカレーを食べに行くのに他の屋台に行こうとする事に突っ込むとイリナさんがカレーは飲み物だと答えた。


 そしてイッセー君の両方の腕をそれぞれ引っ張って行ってしまった。


「あっ待ってください!」
「わ、私も行きます!」
「お腹すきましたぁ」


 小猫ちゃんやアーシアさん、ギャスパー君もそれを追いかけていく。  


「この子達グルメ細胞持ってないんだよね?なんでそんなに食べれるにゃん?」
「もはやグルメ細胞が人間の形してるって言われても私は驚きませんよ」


 そんな二人を見て黒歌さんは本当にグルメ細胞を持っていないのかと尋ねてルフェイさんはあの二人がグルメ細胞でできているんじゃないかと冗談交じりに話す。


「ちょっとしつこいわよ」
「そんなこと言わないでさぁ、俺達と遊ぼうぜ」
「あらあら、デリカシーの無い人は嫌われますわよ」
「うっひょー、いいじゃん。マジテンション上がってきたんだけど」


 すると部長達の方から声が聞こえたので振り返ると数人の男たちが部長達をナンパしていた。


 リアス部長達はそこらのグラビアモデルよりも綺麗なので声をかけられるとは思っていた、捻の為にアザゼル先生に側にいてもらっていたが姿が見えない。


「ねぎま鳥の焼き鳥10本とビール10缶ください」
「毎度有り!」


 すると近くの屋台で買い物をしてるアザゼル先生を見つけた。何をやってるんですか……


 僕は直ぐに部長達の元に向かう、あんな男達なんて軽くひねれるだろうが騎士として何もしないわけにはいかない。


「すみません、その人たちは僕の仲間なんです。ナンパなら別の人にやってもらえますか?」
「あぁん?なんだテメぇ?」
「引っ込んでろよガキ、怖い思いはしたくないだろう?」


 僕を威圧する男達、体を鍛えているので多分格闘技でも嗜んでいるのだろうが危険な猛獣達が住む過酷な環境を冒険してきた僕には微笑ましさすら感じてしまう。


「もう一度だけ言います、ナンパなら別でやってください」
「もやしは失せろよ、お前みたいなナヨナヨした奴がこんな良い女連れてること自体がおかしいんだよ」
「俺達この辺りじゃ名の知れたワルだぜ?ボコボコにしてやろうか?」
「帰ってママのおっぱいでも飲んでろよ、こいつらは俺達が可愛がってやるからさ」


 男の一人がティナさんの胸を触ろうとしたので短剣型の魔剣を出して一瞬で男の懐に接近して首に剣を突き付けた。


「えっ……」
「失せろ。次は腕を切り落とすぞ」


 殺気を込めて威圧すると男たちは怯えたハムスターの様に縮こまって後ずさりする、そして全員逃げだしていった。


「流石祐斗ね、助けてくれてありがとう」
「いえ対処が遅くなってしまい申し訳ありません」
「気にしなくていいわ、アザゼルが悪いから」


 部長達に不快な思いをさせてしまったことを謝罪するが許してもらえた、でも僕もしっかりしないといけないな。


「祐斗君、ありがとう!」
「わわっ!?」


 するとティナさんが僕に抱き着いてきた。


「やっぱり祐斗君は私が一番なのね。あんなに怒っちゃって……ふふっ、意外とヤキモチ焼きなのね」
「あはは……」
「ふん、たまたまでしょ?すぐに勘違いする女は痛々しいし」
「あら、嫉妬かしら?」
「なによ!」
「アンタこそなによ!」


 ティナさんとリンさんが喧嘩を始めてしまった。僕としてはどちらも大切な存在なんだけど……はぁ、女性の心を理解するのは難しいな……


「おーい、買ってきたぞ」


 色々な食べ物を持ってイッセー君達が帰ってきた。でも隣に知らない男の人たちが数名いるけど誰だろう?


「イッセー、その人たちは?」
「ああ、ちょっとした縁で知り合ったんだ。この人たち俺達におごってくれたんだぜ、太っ腹だよな」
「あはは……ご迷惑をおかけした詫びです。それじゃ僕達はこれで……」
「おうっありがとうな!」


 男性たちはそう言ってそそくさと去っていった。


「小猫ちゃん、あの人たちは何だったの?」
「ああ、私達をナンパしようとしてきた人達ですよ。最初はイッセー先輩がやんわりと対処しようとしたんですけど男の一人が私の肩を抱こうとして先輩が怒っちゃって殺気を出しちゃったんです。そしたらおもらししながら先輩に謝ってお詫びにおごってもらった訳です」
「通りでなんだか変な匂いがすると思ったよ……」


 そっちでもナンパにあったようでよりにもよって小猫ちゃんに手を出そうとしたからイッセー君が怒っちゃったのか。ご愁傷さまだね。


「ほら、二人も喧嘩してないで『シャーベットンボ』でも食べなよ」
「ならウチはメロン味で」
「私はイチゴ味がいいわ」


 良かった、イッセー君のお蔭で二人が喧嘩を止めてくれたよ。


「このトンボ、背中にシャーベットを乗せてるのね」
「ああ、このトンボは毎年夏になると背中に美味なシャーベットを乗せてくるんだ」


 部長はシャーベットンボを腕に乗せてシャーベットを味わっていた。意外と人に慣れているんだね。


「イッセー君はラーメンを食べてるの?」
「コイツは『ラーメンダコ』だ。丼のような頭が特徴で良いダシが出てくるんだよ」
「へぇ、僕も食べたいな」
「ほらよ」


 イッセー君からラーメンダコを受け取った僕は早速食べてみる……んっ良い塩味が出ていてタコの足もプリプリで美味しいね。


「おや、イッセー達お主らも来たか」
「えっお婆ちゃんの声?」
「こっちじゃこっち」


 急に節乃さんの声が聞こえたので辺りを見回したけど姿が見えなかった、僕達が首を傾げていると地面から何かが出てきたんだ。


「節乃さん!?地面から出てくるなんて思いもしませんでしたよ!」
「おほほ、砂風呂を楽しんどったんじゃよ。よいしょ」


 小猫ちゃんが驚いていると節乃さんは着ように砂の中から出てきた。


「どうじゃ?セクシーな水着じゃろう?あたしゃも今日はデートじゃから気合入れてきたんじゃ」
「お、おう……似合ってるぜ。というかデートってことは……」


 イッセー君が苦笑いをしながら何かに気が付いたように節乃さんの隣を見る。するとまた砂の中から誰かが出てきたんだ。


「んぐんぐ……ぷはぁ、砂風呂の後の一杯は格別じゃな」
「次郎さん、お久しぶりです。やっぱり貴方も来ていたんですね」
「うい~、今日はセっちゃんとデートじゃからな」
「ははっ、お熱いことで」


 イッセー君は次郎さんに挨拶して二人がデートしていると聞いて冷やかしていた。


「イッセー達はガツガツカレーを食べに来たんじゃろう?毎年必ず行っていたからな」
「ああ、夏の楽しみなんだ」
「あたしゃらも後で向かうとするじょ」
「ねえねえ節乃さん」
「なんじゃ黒歌?」


 すると黒歌さんが節乃さんに声をかける。


「私ね、イッセーと付き合う事になったんだ」
「おおそうか、それはよかったのぉ。イッセー、黒歌をよろしく頼むじょ」
「ああ、まだ俺の方が弱いがいつか黒歌を守れるぐらいの男になって見せるよ」


 イッセー君はそう言って黒歌さんを抱き寄せた。黒歌さんも嬉しそうにイッセー君に身を寄せている。


「うふふ、アツアツでうらやましいじょ。あたしゃらもあんな時代があったんじゃよな」
「なぁに今だってあっしらは熱々じゃろう、この熱燗のようにな」
「ジロちゃん……♡」
「えっと……じゃあ俺達はもう行くな。二人も楽しんでな~」


 節乃さんと次郎さんがいちゃつき出したので僕達は二人と別れた。デート中らしいし邪魔はしたくないからね。


「イッセー、あやめさんって人の事聞きそびれたわね」
「まあ次に会った時に聞こうぜ」


 部長は前に一龍さんとギリムの会話に出てきたあやめという人物について聞けなかったと言うがイッセー君は次の機会に聞こうと話す。


 その後僕達は『メロディキュウリ』や『ボルトラフグ』などを味わいお腹を満たしていった。


「それじゃ本日のメインデッシュを食べに向かいますか」
「おおっガツガツカレーだな!」
「期待でお腹が空いてきちゃったわ!」
「もう何も言わないにゃん」


 あれだけ食べて涎を垂らすイッセー君、ゼノヴィアさん、イリナさんを見て黒歌さんが溜息を吐いた。ははっようやく慣れたみたいだね。


 そして僕達はお目当てのガツガツカレーのお店に向かったんだ。でも……


「あれ、閉まってるぞ」
「おかしいわね?」


 ガツガツカレーのお店のシャッターが下りていて人が誰もいないことにアザゼル先生と部長が首を傾げた。


「日付を間違えたのでしょうか?」
「いや俺は毎年来る、絶対に今日のはずだ。そうだよな、ルフェイ?」
「はい、私も今日だったと記憶しています」
「ならもしかして体調でも崩されたのでしょうか?」


 ギャスパー君が日付を間違えたのかと言うとイッセー君とルフェイさんは今日だと言う、朱乃先輩の言う通り体調を崩しちゃったのかな?


「心配だな、ちょっと様子を見に行ってみるか」
「えっ勝手に入っていいの?」
「俺はここの亭主である親父さんと知り合いだから大丈夫だ」


 イッセー君がお店に入ろうとして部長が驚くがどうやらここの亭主さんと知り合いみたいだ。


「すみませーん、親父さんいますか?イッセーですけど」


 イッセー君がそう言って店の出入り口をノックする、すると扉が開いて誰かが出てきた。


「イッセー?イッセーっすか?」
「クミンじゃないか!久しぶりだな!」


 小太りの男性が出てきてイッセー君が挨拶をする。するとクミンと呼ばれた男性は泣きながらイッセー君に縋りついた。


「イッセー!大変なんだ!サフラが海に行って帰ってこないんす!頼む、サフラを助けてくれっす!」
「お、おい!」


 かなり焦った様子で泣きながらイッセー君にそうお願いするクミンさん、僕達は彼を落ち着かせて話を聞くことにした。


「取り乱して申し訳ありませんでした……」
「クミン、紹介するよ。この人達は俺の仲間だ」
「初めまして」
「あっ、これはどうもっす。この店の亭主のクミンといいます」


 部長が代表してあいさつするとクミンさんもあいさつを返した……って亭主?


「亭主ってお前が?もしかして親父さんから店を受け継いだのか?」
「受け継いだというかそうせざるを得なかったんすよ。親父は先月に亡くなったから……」
「親父さんが!?」
「ああ、持病の悪化であっさりと……」
「そうか、昔から親父さん心臓が良くなかったからな」


 クミンさんのお父さんが無くなったと聞いたイッセー君はかなり驚いていた。どうやら心臓が元々よくなかったみたいだね。


「済まない、俺何も知らなくて……」
「イッセーは悪くないっすよ、俺達もドタバタしてたから連絡が遅れちまったんだ。気にしないでほしいっす」
「ありがとう……」


 イッセー君は何も知らなかったことを謝罪するとクミンさんは気にしないでと返した。


「それで店は俺とサフラで受け継ぐことになったんだ。料理人は俺でサフラが美食屋をやってるっす」
「なるほど、兄妹でコンビを組んだのか」
「ああ、それでサフラがガツガツカレーの材料を取りに行ったんだけどもう二日も帰ってこないんだ?」
「それは心配だな……連絡もないのか?」
「ああ、連絡もないんだ」


 どうやらクミンさんの妹であるサフラって子が帰ってこないみたいだね、それでカレーが作れないのか。


「サフラの奴、親父のカレーを復活させるって躍起になってから無茶してないか心配で……」
「カレーを復活?どういうことなの」
「このままだとガツガツカレーを作れないって事なんすよ」


 部長がカレーを復活させると言う言葉に反応するとクミンさんはこのままではカレーを作れないと話した。


「まさかカレーのルーが無くなったのか!?」
「いやルーはあるっす」


 イッセー君がそう言うとクミンさんはお店の中にあった壺の蓋を外す。するとカレーのいい匂いがしてきた。


「それがルーですか?」
「ああ、コイツは『カレー彗星』のルーっす。その彗星は99年に一度地球に向かってくる伝説の彗星で宇宙の真空状態で長い年月をかけて熟成されたその味は天文学的な美味さだと言われています」


 小猫ちゃんの質問にクミンさんがカレー彗星の説明をしてくれた。そんな長い間熟成されたルー……一体どんな味なのかと説明を聞いただけで唾液がこみあげてきた。


「親父は偶然地上に落ちたカレー彗星を捕獲してその彗星の殻で壺を作ったっす。そして何年も継ぎ足して店をやってきました」
「えっならそのルーを使えばいいんじゃないの?」
「それじゃ駄目なんすよ、このカレーは特殊調理食材で並の食材ではパンチのあるカレーの味に負けてしまって本当の美味さを引き出せないんです」
「なるほど、メルクの星屑みたいなタイプか……」
「そうですね、味を支配してしまうから凄い食材じゃないと駄目なんでしょうね」


 クミンさんが見せたルーを指差してティナさんがそう言うが、クミンさんは並みの食材ではカレーの真の味を引き出せないと話す。


 イッセー君と小猫ちゃんはガツガツカレーはメルクの星屑のようなタイプだと言う。


「つまりサフラはカレーの食材を取りに向かったっきり帰ってこないわけか。どこに向かったんだ、俺達が迎えに行くよ」
「それが何処に行ったのか分からないんす」
「はぁ?どうしてだよ」
「俺とサフラはカレーに使う食材を何も知らないからっす」


 イッセー君はサフラさんの居場所をクミンさんに聞くけど彼は分からないと答えた。どういうことなんだろう?


「でもクミン、お前は親父さんと一緒に厨房に立っていただろう?何も知らないのか?」
「修行中も親父はレシピを教えてくれませんでした、料理人がレシピを守るために秘蔵にするのは聞いていましたけどきっと親父もそうなんです。実の息子の俺にさえ……酷い親父っす!」


 クミンさんはそう言うと泣き出してしまった。


「……クミンさん、私は貴方のお父さんに会ったことはないですけどそんな意地悪な人じゃないと思いますよ」
「えっ?」


 すると小猫ちゃんがクミンさんにそう話す。


「そちらにある調理道具はお父さんが使っていたものですか?」
「ああ、そうだけど……」
「見ただけで分かるくらい年季が入った包丁やお玉ですね、でもしっかりと手入れをされている……そんな丁寧に道具に接してあげられる人が酷い人だとは思えません」
「あんな頑固だった親父が?俺は一度も褒めてもらった事なんかないのに……信じられないっす」


 クミンさんはあまりお父さんに良い感情がないみたいでそう呟く。


「きっと貴方のお父さんはクミンさんが自力で自身が作ったカレーのレシピを再現できると信じていたんだと思います。だからお父さんの事を信じてあげてください」
「……」


 クミンさんは小猫ちゃんの言葉に何かを思ったのかカレーのルーをジッと見ていた。


「なあクミン、サフラが何処に向かったか一つくらいは心当たりは無いか?」


 イッセー君はサフラさんの向かった場所に心当たりがないか確認する。


「……一つだけあるっす。親父は毎年この時期になると船で何処かに向かっていました、そして食材を持って帰ってきていたっす」
「つまりこの辺りの海域にある島に食材があるかもしれないのか、とにかくまずはサフラを見つけてからだな」
「お願いします……!」
「任せておけって。ついでにカレーの食事もとってくるから美味いカレーを作ってくれよな」
「はい!」


 僕達はカレーの情報を得る為にサフラさんを探す事になったんだ。彼女が無事だと良いんだけど……


―――――――――

――――――

―――


 僕達はテリーを呼んでサフラさんの予備のダイバースーツに染み込んでいた匂いを覚えてもらった。


 そしてルフェイさんの魔法で水の上を歩けるようにしてテリーに探してもらうことにしたんだ。今僕達は偶然であった十夢さんに船を出してもらいサフラさんを追いかけている所だよ。


「いやぁ、まさかこんな良いタイミングで十夢に会えるとはな」
「ははっ、ガツガツカレーは俺も楽しみにしていたからな。お前も来てるとは思っていたけどまさかこんな事態になっていたとは思っていなかったぜ。力になれてよかった」


 久しぶりに友人に出会えたイッセー君は十夢さんと楽しそうに話していた。僕達には見せない大人の友人との顔か……僕もイッセー君にあんな顔をしてもらえる友人になれたらいいなって思ったよ。


「しかしまたメンバーが増えてると思ったら小猫やアーシア、更に他の別嬪さんも入れて6人も恋人が出来たって聞いた時はさすがに驚いたぜ。マジでハーレム作ってたとはな」
「その通りだから何も言い返せないな……」
「今度一緒に飯を食いに行こうぜ、馴れ初めを聞かせろよな」
「分かった、分かったよ……」


 十夢さんがイッセー君をからかいながら笑う。ははっ、イッセー君苦い顔してるね。


「そう言えばイッセー君、そのガツガツカレーはどんなカレーなの?具材が分かれば何かヒントになると思うけど」
「そうだな……俺は小猫ちゃんじゃないから全部は分からないな、とにかくたくさんの食材が奇跡のように完璧に調和したあの味……やべっ、思い出したら涎が……」
「ちょっと、しっかりしてよね」
「ゼノヴィアさんとイリナさんも滝のような涎を出していますわ……わたくしも油断したら危なかったです……」


 僕はイッセー君にカレーの具材について聞くと、イッセー君はカレーの味を思い出して涎を垂らした。それを部長がツッコミを入れる。


 隣で話を聞いていたゼノヴィアさんとイリナさんも涎を垂らしていて朱乃先輩が苦笑していた。


「あっでも一番特徴的だったのはカツの肉だな」
「カツ?カツカレーだったんだ」
「ああ、あのとろけるような肉の柔らかさに水のようにサラッとしていてアッサリしていながらも濃厚な肉汁……じゅる」
「そ、そんなに美味しいんだ……」


 イッセー君の話を聞いていたら僕まで涎が出てきちゃったよ。


「あの肉は間違いなく『ウォータイガー』の肉だ」
「ウォータイガー……魚介のエキスがたっぷり詰まってると言われている幻の猛獣ですね」
「ああ、その虎は海を渡ると言われていてな、俺も出会った事は無いんだ」


 イッセー君と小猫ちゃんの会話を聞いて僕達はウォ―タイガーの事を理解する。


「じゃあそのウォータイガーがこの海域にいるって事なのね?」
「どうだろうな……少なくともこの辺りでウォ―タイガーを見たという報告はない。親父さんは何処でウォ―タイガーを捕獲したんだろうな」


 リアス部長はこの海域にウォ―タイガーが生息しているのかと尋ねたけどイッセー君は首を横に振った。普通では発見できない場所に生息してるのかな?


 そんな会話を聞きながらテリーの後を追いかけていると不意にテリーが足を止めた。


「十夢、止まってくれ」


 イッセー君は船を止めてもらい前方の海を見る。するとそこに泡が出てきて次に何かの影が複数飛び出した。


「あれは『ハリセンカ』か!?深海に住むポテトスナックのようなカリッとした美味いハリセンボンだ」
「やったー!いっぱい捕まえちゃおうよ!」
「網をくれ!」


 イッセー君はハリセンカという生物を見て驚き美味しいと聞いたイリナさんとゼノヴィアさんは網を持ってきてハリセンカを捕まえていく。


「でも珍しいですね、ハリセンカって普段は深海にいて中々上がってこないのに……」
「ああ、警戒心の強いハリセンカが海上に来たって事は何かに追われたからだ。つまり……」


 ルフェイさんはハリセンカを見て珍しいと話す、イッセー君はハリセンカ達は何かに追われて海上に上がってきたと話す。


「むっ、何か大きなものに引っかかったぞ!」
「きっと大物よ!逃がしちゃ駄目よ!」
「任せろ……はああぁぁぁぁぁっ!!」


 ゼノヴィアさんの網に何かが引っ掛かったようで彼女は気合を入れて網を振りぬいた。すると……


「きゃああっ!?」


 水中から巨大なザリガニに獣の手足が生えたかのような生物が現れた、その背にはなんと女の子が乗っていたんだ!


「サフラ!?」


 その女の子を見たイッセー君は驚いた顔でサフラと呼んだ、あの女の子がサフラさんなの!?


「いったた……一体何が起きたのよ……バブ―大丈夫?」

 
 サフラさんは猛獣にバブーと呼んで安否を尋ねる、パートナーアニマルなのかな?


「サフラ、大丈夫か!?」
「えっ、もしかしてイッセー!?久しぶりじゃん!またなんかでっかくなってるじゃない」
「ははっ良いもん食ってるからな」


 イッセー君が声をかけるとサフラさんは嬉しそうに反応をした。


「でもどうしてここに?」
「クミンに頼まれてお前を探しに来たんだ」
「兄貴に……?」


 その時だった、水面に大きな水柱が浮かぶと真っ黒な煙を吐きながら何かが現れたんだ。


「アイツは『シュモークサーモン』!?捕獲レベル20の魚獣類だ!」
「さっきからしつこいのよ!」


 イッセー君はあの生き物をシュモークサーモンだと言う、どうやらサフラさんはアレに追われていたみたいだね。


「イッセー君!アレも美味しいの?」
「ああ、煙にいぶされたその身は燻製肉のような味の深みがあると言われているが……」
「なら捕獲だな!」

 
 目を輝かせたイリナさんとゼノヴィアさんが黒い靴とデュランダルを出してシュモークサーモンに向かっていった。


「ご愁傷様……」
「獲物に群がるピラニアみたいです」


 リアス部長はシュモークサーモンに手を合わせて合掌してギャスパー君は二人をピラニアみたいだと言った。


 とにかくサフラさんと出会えてよかったよ、カレーの具材について話しを聞かないとね。


 だが僕はまだ分かっていなかった、この後凄まじい強敵と僕が一騎打ちをすることになるなんて……
 
 

 
後書き
 ギャスパーです。サフラさんを見つけることが出来て良かったです、次はガツガツカレーの具材を探しに行かないといけませんね。


 それにしてもクミンさんはお父さんとうまくいってなかったみたいですね、まあ僕の父親と比べればどんな父も良い人だと思いますが……


 とにかくクミンさんには頑張ってほしいですね、弱虫だった僕も少しは成長できたのできっと彼も美味しいカレーを作れますよ!


 次回第124話『ガツガツカレーを完成させろ!祐斗VSウォータイガー!!中編』で会いましょう。


 次回も美味しくいただきます……です♪ 
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