神々の塔
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第四十六話 女帝達その十
「私には」
「そうですか」
「まあそれはこれからですね」
「経験も」
「いいものとだけ告げておきます」
女帝は一行にこの言葉を贈った。
「その様に」
「そうなんですか」
「だから私も好きなのです」
「そうですか」
「そうした私をよく思わない方もいますが」
「私ですね」
マリア=テレジアが不機嫌そうに応えてきた。
「そうですね」
「おわかりですか」
「貴女のそうしたところはです」
「お嫌だと」
「そうです、全く以てです」
エカテリーナに忌々し気に告げた。
「貴女はふしだらといいますか」
「かく言う貴女は十六人も」
「私は主人一筋です」
きっぱりとした反論だった。
「あくまで」
「だからいいのですね」
「生涯は一人にだけ捧げるものです」
この女帝は強い声で言い切った。
「ですから」
「私はですね」
「間違っています」
こう言うのだった。
「まことに」
「あくまでそう言いますか」
「はい、それでは誰にも示しがつきません」
「神霊として正しきことをすればいいのですよ」
「その行い自体が間違っています」
「この二人起きた世界の歴史でも仲悪かったな」
リーは言い合う二人の偉大な女帝を見て仲間達に話した、見れば十人共その言い合いをどうにもという顔で見ている。
「そやったわ」
「これ見たらわかるわ」
「同盟結んでたけどな」
「それでどちらの方も出来物やけど」
「それでもやな」
「そや、こうした考えの違いとな」
羅と施、メルヴィルとトウェインに話した。
「家柄もあってな」
「ああ、エカテリーナさんは侯爵家出身」
「神聖ローマ帝国の方の」
「対するマリア=テレジアさんはハプスブルク家」
「その神聖ローマ帝国の女帝さんやな」
「そうしたこともあってな」
当時では極めて重要だった家柄の違いもあってというのだ。
「それでな」
「尚更やな」
「仲悪いんやな」
「この通り」
「一緒やと言い合う位に」
「そや、ただ両方共フリードリヒ大王は嫌いやったみたいや」
プロイセン王であった彼はというのだ。
「マリア=テレジアさんは宿敵エカテリーナさんは先々代の女帝さんの頃からな」
「顔も見たくないですが何か」
「女性を嫌う方を好きでいられる筈がありません」
女帝達はそれぞれ答えた。
「全く忌々しい」
「あの方だけは好きになれません」
「はい、そこまでです」
ここで壮麗な十二単の女性が言ってきた。
「そろそろはじめましょう」
「お話はそれ位にして」
「そのうえで」
「そうです、皆さん私が紫式部です」
女性は自ら名乗った。
「女帝の方々のお世話をこの世界でさせて頂いています」
「貴女がですか」
「日本文学の女帝の様とのことで」
それでというのだ。
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