狂乱の宴
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第二章
「だからな」
「それ故にですね」
「人間達には偏見だと言えますね」
「我々の宴に対して」
「左様ですね」
「メフィストフェレスの宴なぞだ」
魔界の名士の中の名士である彼が開くそれはというと。
「畏まったものだな」
「参加者はテーブルに座り」
「コースを一品一品召し上がり」
「席に座したまま歌劇や舞踏を楽しむ」
「そういったものですね」
「そうだ、魔界には魔界の秩序とマナーがあるのだ」
人間達がどう思っていてもというのだ。
「それがわかっていない人間もいるな」
「全ての人間がそうではないですが」
「昔ながらの事実誤認を続けている輩もいますね」
「残念なことに」
「そんな混沌とした乱痴気騒ぎばかりならだ」
宴がそんなものばかりならというのだ。
「私も今ここまで悩まない」
「左様ですね」
「全く以て」
「どういった宴にされるか」
「悩まれることはないですね」
「そうだ、それでどういった宴にするか」
グラシャラボラスは腕を組み述べた、自身の部屋で席に座し共に席に着いている家臣達に言うのだった。
「それが問題だが」
「公の格式ある宴ですし」
「品のあるものにせねばならないですね」
「この度は」
「そういえば前は満漢全席を出してだ」
そしてとだ、グラシャラボラスは述べた。
「中国の皇帝が観た舞踏を催したな」
「京劇を開き」
「そうされましたね」
「確かに」
「その前は日本風でな」
この国の様式でというのだ。
「刺身や天麩羅を出したな」
「そうでしたね」
「そして日舞に能でした」
「そうしたものを開き」
「日本酒を出しました」
「そうしてきた、あちらの神々からも話を聞いてな」
そうしてというのだ。
「そうしたが」
「今回はどうするか」
「どういった宴にするか」
「それが問題ですね」
「その通りだ、何かと意見を聞かせてくれ」
魔王は自分の家臣達にこう言った、そしてだった。
家臣達もそれぞれ自分の意見を言っていった、会議はああでもないこうでもないといったものになったが。
家臣の一人の案にだ、魔王は顔を向けて言った。
「それがいいか」
「この度は」
「古典的な宴だが」
それでもというのだ。
「私はずっとだ」
「開かれていなかったですね」
「その宴はな」
考える顔で応えた。
「そうだった」
「それでは」
「それでいくか」
ロココ様式の宮殿の中で述べた。
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