八条学園騒動記
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第七百二十五話 ライオンの昼寝その十一
「そのうえでな」
「築かれたものですね」
「そうしたものを築くこともだ」
「日本の皇室はないですね」
「今の皇居もな」
日本のそれもというのだ。
「実にだな」
「質素ですね」
「あれでは平民の資産家の別荘にすらだ」
エウロパではというのだ。
「及ばない」
「その程度のものですね」
「そうだな」
「はい、確かに」
上等兵もそれはと応えた。
「私も思います」
「そうだな、衣食住全てな」
まさにというのだ。
「質素なのだ」
「それも極めて」
「それがだ」
「日本の皇室ですね」
「それが伝統だ、ただな」
ここで大尉は眉を顰めさせこんなことを言った。
「かつて朝鮮民主主義人民共和国という国があった」
「北朝鮮ですね」
上等兵はこの呼び名で応えた。
「あの人類の恥とさえ呼ばれている」
「究極の独裁国家だったな」
「国民は餓えて軍隊にばかり力を入れ」
「そして独裁者だけが贅沢をしていた」
「しかもでしたね」
上等兵も眉を顰めさせて応えた。
「共産主義でしたが世襲で」
「そうだ、本来なら有り得ないがな」
「共産主義で世襲なぞ」
「その世襲は是でだ」
そしてというのだ。
「日本の皇室は非という輩もいた」
「まともな愚か者ですね」
上等兵は即座に答えた。
「それはまた」
「私もそう思う、その様な輩が日本にいたのだ」
「この国にですか」
「共和主義だの共産主義だのという思想が日本に入ってな」
戦前から見られたが第二次世界大戦後特にそれが強くなった。そして知識人の多くがそうした主張を唱えだしたのだ。
「その結果だ」
「共和主義、共産主義ならです」
その思想ならばとだ、上等兵はどうかという顔で述べた。
「尚更です」
「北朝鮮は否定すべきだな」
「誰が見てもです」
それこそというのだ。
「共和制でも共産主義でもです」
「ないな」
「階級もありましたね、あの国は」
「その生まれでな」
これを出成身分といった。
「それで職業も決まっていた」
「そうでしたね、それではです」
「何処がだな」
「共産主義なのか」
「普通の知能の者ならそう考えるが」
「愚か者であるので」
「それもこれ以上なくな」
大尉は言い切った。
「その為だ」
「北朝鮮はよくてですか」
「日本は駄目だった」
「恐るべき愚か者ですね」
「質素で民の安寧を祈り続ける皇室は反対でだ」
日本のというのだ。
「贅沢三昧で弾圧と虐殺をこの上ない悪政を敷く世襲の独裁者はよかったのだ」
「まさに愚の極みですね」
「しかもだ」
大尉は強い嫌悪の言葉を込めて言った。
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