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神々の塔

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第四十四話 狐狸その九

「心中とかお薬とか芥川賞とか」
「あの人は色々あったな」
「だらしないとこもあって」
 人間としてだ。
「調べてたら」
「どうしてもな」
「どうかってなるね」
「そやな」
「あの人については」
「色々あり過ぎてな」
「批判もされてるけど」
 その人生即ち生き方がだ。
「何かそれでいて」
「どうも見てまうな」
「そんな人やね」
「太宰治って人はな」
「けど作品読んだら」
「そうしたことも考えさせられるな」
「ほんまやね」
 こうした話をしながらだった。
 一行は塔の中の獣やモンスター達を倒しつつ薄の原や木々の階を通っていった、そうして遂にだった。
 神霊達のところに行くとまずはごんぎつねが言っていた。
「お手柔らかにね」
「いや、それはこっちの言葉です」
 リーが思わず吹き出して応えた。
「むしろ」
「おいら達が神霊だから」
「はい、やっぱりその力は」
「かなりだっていうんだね」
「そうですさかい」
「いやいやおいら達神霊だけれどね」
 ごんぎつねもこのことはその通りだと答えた。
「けれど戦はね」
「好きじゃないんだ」
「だからね」
 それでというのだ。
「全力で戦うけれど」
「得意やないですか」
「その自覚があるから」
 だからだというのだ。
「こう言うんだよ」
「そうですか」
「遊んだり飲んだり食べたり」
 今度は分福茶釜の狸が言ってきた。
「そうしたことの方が」
「お好きですか」
「戦よりずっとね」
 そうだというのだ。
「わし等は」
「まあこれも試練だし」 
 ごんぎつねは仕方ないといった顔で述べた。
「戦うけどね」
「ほなそういうことで」
「けれど終わったらね」
 その戦がというのだ。
「君達が勝ったら」
「それならですか」
「もう二度とね」
 それこそというのだ。
「戦わないよ」
「そうですか」
「終わったらきつねうどんとか揚げを食べて」
 そうしてというのだ。
「栗もね」
「食べるんですね」
「そうするよ」
「わしはたぬきそばにしようか」
 茶釜の狸はこう言った。
「ぎんぎつねさんがきつねうどんなら」
「狸さんはだね」
「お蕎麦に薄揚げを入れた」
「そのお蕎麦を食うんだね」
「そうするよ」
「あれはきつねそばじゃないかな」
 ごんぎつねは茶釜の狸の話を聞いて首を傾げさせた。 
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