おぢばにおかえり
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第七十七話 おみちの本その三十
「勉強しながらです」
「読んだのね」
「はい、そうしたら」
私にさらに言ってきました。
「わかりました、文章はわかりやすいです」
「読めるだけの教養があったらなのね」
「はい、その辺り吉本隆明と違いますね」
「新一君の嫌いな人ね」
「あんなのの本は誰に言われても読まないですが」
その持ち前の嫌悪感を出してきました。
「小林秀雄は読みます」
「そうなのね」
「とはいっても小説の方をよく読みますね」
「どんな人の読むの?」
「ラノベが多いですが」
「そうなの」
「あと純文学もです」
こちらもというのです。
「読みます」
「そういえば芥川とか太宰とか読んでたわね」
「はい、その中で小林秀雄も読みました」
「色々読んでるのね」
「特に織田作之助が好きです」
この人がというのです。
「純文学になりますと」
「あの大阪の人ね」
「大阪生まれですから」
だからだとです、新一君は言いました。
「余計にです」
「その作家さんが好きなのね」
「織田作って言われてますけれど」
「新一君もそう呼んでるのね」
「それで時々ですが」
私を見て言ってきました。
「作品に出ているお店にも行きます」
「カレーの自由軒とか」
「法善寺横丁にある夫婦善哉にも連れて行ってもらいました」
「誰になの?」
「両親にです」
「ご両親になのね」
そう言われると納得できました。
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