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イベリス

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第百二十三話 甘いものその五

「またね」
「立って前に進むことね」
「泣いたら思いきり泣いたらいいし」
「その時は」
「それでよ」
 そのうえでというのだ。
「終わったことだって忘れて」
「前に進めばいい」
「そうよ。あと周りに失恋嗤う奴がいても」
「私の学校の神戸の本校であったみたいな」
「そう、私もそのお話知ってるけれどね」
「そんな奴にはどうするか」
「無視すればいいのよ、人の不幸や辛かったこと嗤う奴なんてね」
 そうした輩はというと。
「下らない奴よ」
「だから無視していいのね」
「確かな人はそんなこと嗤わないわよ」
 人の失恋なぞというのだ。
「不幸なんてね」
「じゃあ確かな人はどうする?」
「決まってるでしょ、お友達ならそっと傍に来て寄り添うのよ」
「そうしてくれるの」
「そうよ」
 まさにというのだ。
「お友達じゃなかったら何も言わないし」
「そっとしておいてくれるのね」
「それであれこれ言う奴はね」
「下らない人ね」
「人の過去をほじくり返すこと自体が駄目だけれど」
「失恋は特になのね」
「失恋は凄く痛いことだから」 
 それを経験した人の心にというのだ。
「それを言うのは特によ」
「駄目なことで」
「そんなこと言う奴はそんなことをして楽しんでいるね」
「碌でもない奴で」
「下らない奴よ、人の不幸を嗤うより」
 それよりもというのだ。
「自分が努力してよ」
「幸せになることね」
「それが正しい在り方よ」
 人間としてのそれだとだ、愛は咲に話した。話すその顔は何時しかかなり真剣なものになっている。
「本当にね」
「そうなのね」
「だからね」
 それでというのだ。
「そんな人は相手にしないで自分もね」
「ならないことね」
「そうよ」 
 絶対にというのだ。
「それでよ」
「そんなことする人は」
「その時点で相手にしない様にしてもよ」
「いいのね」
「完全にね」 
 一切、というのだ。
「それで本当に自分はね」
「しないことね」
「人の失恋は嗤わない」
「絶対に」
「どんな形でもね、まして言った方は軽い気持ちでも」
 からかう程度で言ってもというのだ。
「相手は自分の心の傷に触れられてね」
「さらに痛い思いしたから」
「ずっと怨んでくるわよ」
「怨まれるのね」
「それも人によっては強くね」
 そうだというのだ。 
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