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ハッピークローバー

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第百一話 怪我をしないことその十二

「一体何がね」
「いいのかよね」
「そうした人もいるみたいだけれど」
 世の中にはというのだ。
「無駄なことしてるよ、何かして」
「それで自分を引き上げることね」
「そうしないとね、僻んでもね」
 そうした感情を持ってもというのだ。
「意味ないよ」
「まず努力ね」
「そうだよ、まあ手塚治虫さんは」
 戦後の昭和を代表する漫画家である、漫画を一大ジャンルそして文化にまでした偉人の一人でもある。
「あれだけ描いても嫉妬してたらしいけれど」
「あの人滅茶苦茶描いていたのよね」
「もう不眠不休でね」
 六十年程の一生の中でだ。
「二日三日の徹夜ざらで」
「無茶苦茶な生活ね」
「ずっと漫画描いていて資料調べたりアニメの仕事したり」
 その人生は兎角多忙を極めていたのだ。
「漫画も凄く売れて」
「代表作幾つもあってね」
「アニメ化された作品も多くて」
 まさに戦後の日本を象徴する漫画家の代表であった。
「収入だってね」
「凄かったわね」
「地位もあったし」
 第一の漫画家と言ってよかった、その地位も築いていたのだ。
「もう羨むものなんてね」
「なかったわよね」
「その筈だけれど」
 それがというのだ。
「あの人はね」
「嫉妬してたの」
「凄く人気がある漫画家さんが出たり実力のある人が出たら」 
 水木しげるゲゲゲの鬼太郎で知られるこの漫画家に気が狂ったのかと思われるまでに嫉妬していたという、そして野球漫画の水島新司に嫌味を言ったり巨人の星がどうして人気があるのか本気で人に聞いていたという。
「凄かったらしいよ」
「そうだったの」
「あれだけ描いてお金も地位もあって」
「努力なんてね」
「不眠不休だよ」
 そうだったというのだ。
「それでどうしてね」
「嫉妬していたのか」
「わからないよ」 
 こう一華に言った。
「何か自分はこれで最高ともね」
「思わなかったの」
「それで作風を変えたりもしてたから」
 自分のこれまでの作風では時代に合わないと思ってかだ。
「天狗になることはね」
「なかったの」
「そうだったけれど」
 それでもというのだ。
「それは凄くても嫉妬するね」
「そのことがなのね」
「わからないよ、不眠不休で描いていたんだよ」
 漫画をというのだ。 
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