おじさん妖精
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第一章
おじさん妖精
妖精は可愛い。
大阪に住んでいるサラリーマン羽柴久義小柄で猿の様な顔をして黒髪を短くしている彼はそう思っていた、それでだった。
イギリスに短期の海外研修が決まった時にだ。車内で冗談めかして言った。
「イギリスいうたら妖精やしな」
「ああ、可愛い妖精に会いたいか」
「海外研修の間」
「そうしたいんやな」
「ああ、そしてな」
そのうえでとだ、同僚達に笑って話した。
「記念撮影したいわ」
「妖精さんとツーショットか」
「それ出来たらおもろいな」
「ほなそれも期待して」
「イギリス行って来るか」
「食べもんには期待せんでな」
冗談を入れてだった。
羽柴はイギリスのロンドンに海外研修に行った、そしてそこで研修を受けつつイギリスのことも学んでいったが。
その中でだ、彼はロンドンの社内でこんなことを言った。
「妖精さんに会いたいな」
「妖精?いるぞ」
支社の営業部長のポール=プランタジネット丸眼鏡をかけ小さな青い目と茶色のセンターに分けた髪と面長の顔と痩せた顔を持つ一七六位の背の彼が言ってきた。
「ロンドンにも」
「そうなんでっか」
「何を隠そう僕の家にね」
「妖精がいるんですか」
「そうだよ」
「いや、あっさりと言いますけれど」
「イギリスは幽霊の国で」
兎角この話が多い国である。
「妖精の国であるからね」
「それで、ですか」
「信じる人は多いし」
「見ている人もですか」
「多いよ」
こう羽柴に話すのだった。
「それでうちにもね」
「妖精がいて」
「会ってお話もだよ」
「出来ますか」
「そうだよ、じゃあ会ってみるかい?」
「是非」
これが羽柴の返事だった、目をきらきらとさせて返事をした。
「お願いします」
「それじゃあね」
「いや、しかしです」
「それでもだね」
「まさか妖精に本当に会えるなんて」
「思わなかったかい」
「ええ、それじゃあ今度の日曜に」
その日にというのだった。
「部長の家にお邪魔させてもらいます」
「毎週日曜日は午前中は家族で教会にいるから」
プランタジネットは笑って話した。
「僕はね」
「ミサですか」
「これはね」
どうしてもというのだ。
「我が家では絶対のことだから」
「信仰は忘れない、ですね」
「うん、国教会のね」
こちらのというのだ。
「そちらにね」
「そうですか」
「そしてね」
そのうえでというのだ。
ページ上へ戻る