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リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
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暗躍.5「一人勝ち」

 
前書き
大好きなパパの一言を聞き逃さなかったポピーさんのお話。 

 
(ラインハット城:王太子夫妻私室)
ポピーSIDE

「ふぅ……何とか大事(国際問題)にならないで良かったよ。やっぱりリュカさんには感謝だね」
ラインハット・ネル家・グランバニアの三者会合から数日が経過し、ネル家の馬鹿(ドン)の見合いの日程が整った……無事に結婚させることが出来ればあの馬鹿(ドン)も晴れてグランバニア国籍になり、面倒事(者)から解放される。

それがほぼ確定してるからお義父様は勿論、目の前の夫も機嫌が良い。
実際問題ほぼ全ての面倒事がお父さんの手によって解決したのだから、感謝をするのが当然で夫等の態度は真面である。
私の様に今回の事情の裏を多少なりとも気付いてしまって無ければね!

「君は納得いってないのかい? あの日リュカさんが帰ってからも、どことなく怒ってる様な感じがするけども?」
「良いわね何も気付いて無い人は……無邪気に現状を喜べるんだから」
本当はこんな感情を抱く必要は無いのだろう……

大好きな実の父親が一人だけ利益を独占したのだから、『やったねパパ』って感じで喜べば良いのだ。
それが出来ないのは、私がラインハット王家の人間になった証拠だろうか?
それこそ喜ぶべきだろうか?

「今回……あの人の一人勝ちよ。全部あの人が大事(おおごと)にして、全部あの人が操って、全部の利益を独り占めしてるのよ」
「そ、それは……」
流石に独り占めって言葉に反応する。

「納得してないの? それとも……もうこれ以上今回の件に関わりたく無いの?」
「両方だけど……ダメかい?」
裏の事情を正確に知りたくないのかしら? 私は知っておきたいのに!

「良いわ……私も自分の考えが合ってるのか答え合わせをしたいし、ウルフに聞いてみましょう」
「待ってくれマイハニー……俺は先刻(さっき)『両方』と言ったんだよ。もう終わりにしたいな!」
「ダメよマイダーリン。私が納得してないから」
「俺を巻き込むなよ」

夫の言葉を無視して私はMH(マジックフォン)を準備する。
コリンズはそれを見て諦め顔でMH(マジックフォン)の死角へ退避。
逆らうだけ無駄だと理解してるわね。

ウルフのMH(マジックフォン)に連絡を入れると直ぐにアイツは出た。
如何(どう)やら執務室の様で、周囲からは騒がしく人々の声が聞こえる。
そして『どうしました?』と……

「ちょっとアンタに聞きたいんだけど……」
『……? 国家機密は言えませんよ』
当たり前だ!
そんなもん真っ向から聞かないわよ。

「違うのよ……私さぁ、お父さんの愛人関係は全員把握しているつもりだったんだけど、先日私の知らない女の名前を口走ったのよ。アンタ知ってるかしら? マーニャって女の事を……真冬でも下着同然の格好をしてる美女らしいわ。知らないんなアンタも私と同等って事で今回は納得するけど」

『マーニャさん? あぁ……姐さんが知らないのも無理ないですよ。彼女は過去の世界に行った時の愛人ですからね! まぁ俺はリュカさんのナンバー2として知っていますけどね!』
ムカつくわね……それくらいでドヤらないでよ!

「過去の……? なるほどね、道理で私が知らないワケよね。アンタさぁ、お父さんと一緒に過去に行ってるんだから、その女の絵を描けるの?」
『勿論描けますよ。過去の世界では俺が一番最初にマーニャさんに出会ったんですからね!』
何なのコイツ……リュカフリークとして自分が一番だと自慢したいのね。

「じゃぁ描いてよ、今すぐ!」
『はぁ? 俺は忙しいんだよ!』
知った事か!

「アンタ……それで良いの? 写真って物を見たわよ。あれだけ手軽にリアルな絵が描ける(写す)のなら、アンタの存在意義が薄々になるわよ」
『なんねーよ! 俺はそれ以外にも才能豊かなんだよ!』

如何(どう)だか……私が出戻ったらアンタを差し置いて宰相に就任出来るのよ。実娘(むすめ)の私なら王様に黙って凶悪な兵器なんて作らせないからね!」
『何だぁ? 旦那に離婚を言い渡されそうなのか?』
されないわよ!

「かもね。如何すんの?」
『マジかよ(笑) まぁいいや。描いてやるよ。後で連絡する……』
「待てない。今すぐ描け。私も直ぐにそっちへ行くから」
『はぁ? 今来んのかよ!』

「あと何かご飯を奢って」
『何でだよ! 絵を描いてやるんだから、寧ろ依頼料として飯を奢れよ!』
「え~……私お金持って無いしぃ」
『旦那から貰えよ』

「じゃぁ旦那も一緒に連れて行く」
『そうやって身勝手だから離婚されそうなんだろ!』
「ば~か。ラブラブなのを見せてやんよ!」
『直ぐにボロを出すなよ(笑)』

通信を終わらせると私は夫に視線を送ってから、大きなお腹を抱えて起ち上がる。
夫も慌てて近付き私が立つのを手伝ってくれる。
「ありがと」
「ほ、本当にウルフ君の下に行くのかい?」

「そりゃぁ行くわよ。約束したし、マーニャとやらの絵も欲しいし」
「でももう答え合わせは終わっただろ。如何(どう)やらリュカさんが裏で暗躍してて全てを手に入れたって……解っただろ?」

「馬鹿ねぇ。まだお父さん達に逃げ道がある以上は、私の考えが正しかったと証明したことにはならないのよ」
「逃げ道って……そんなのあるのかい?」

「あるわよ」
「そうかなぁ?」
鈍いわね!

「この世に“ポピー”って名前の女が何人居るのか分かる?」
「さ、さぁ……流石に。なんせ一人にしか出会ってないから」
「じゃぁ“マーニャ”って女も多くはなくても、一人ではないでしょ!」
「た、確かに……」

「でもウルフが会ったことあってネル家の馬鹿(ドン)に接触してきたサラボナの諜報員が同一人物であったら、今回話題に上がっている(マーニャ)が同一人物だって言い切れるでしょ。なのにウルフは『(マーニャ)は過去の人物だ』って言い切った。逃げ道は無いわよね」

「だから……わざわざグランバニアへ行って、彼に昼食を奢って、(マーニャ)の絵を手に入れようって言うのかい?」
「当然でしょ。手に入れて……(つい)でに食事を終わらせたら、そのままルーラでネル子爵邸へ直行よ! ネル家の馬鹿(ドン)に面通ししてもらうわ」

「そんなに上手くいくかい? だってネル家の馬鹿(ドン)は忘れてるかもしれないよ……サラボナの諜報員(マーニャ)の顔なんて」
「それは無いわね。あの馬鹿(ドン)は本当に馬鹿だけど、女には目が無いわ。お父さんの愛人になれるくらいの美女を忘れるとは思えないわ」

「それもだよ……誰が化けたのかは分からないけど、ウルフ君の知ってる(マーニャ)とソックリに変相出来てるとは思えないんだ」
「あらあらマイダーリン。貴方は何も知らないのね……グランバニアには“変化の杖”ってマジックアイテムがあることを」

ポピーSIDE END



 
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