イベリス
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第百二十話 大きく深くなっていく想いその十二
「あるからな」
「世の中は」
「そうだ、本当にな」
まさにというのだ。
「何時何がな」
「あるかわからないわね」
「そうなんだ」
こう娘に言うのだった。
「本当に毎日いつも通りでな」
「同じことが出来るとはなのね」
「限らないんだ、巨人だってたまには勝つだろ」
万年最下位のこのチームもというのだ。
「大体六回に一回位はな」
「勝ってるわね」
「そうだからな」
「巨人だっていつも負けないし」
「他のことだってそうだ」
「毎日同じじゃない」
「絶対に何かな」
それこそというのだ。
「違うんだ、だから昨日通りにいけなくてもな」
「仕方ないのね」
「何でもな、昨日は昨日でだ」
それでというのだ。
「今日は今日だ」
「その日それぞれね」
「そういうものなんだ」
「成程ね」
「そしてな」
父はさらに話した。
「本人の調子も都合もあるしな」
「私でも?」
「咲だって風邪をひくだろ」
「たまにね」
年に一回位はとだ、咲はこう答えた。
「それで辛い思いするわ」
「お前風邪出たら弱まるしな」
「凄くね」
「子供の頃から熱が出るとな」
そうなると、というのだ。
「起き上がれないだろ」
「中々ね」
「そうだな、そうなる時だってあるしな」
「自分自身もなのね」
「いつも通りなんてな」
毎日常にというのだ。
「ないんだ」
「そうなのね」
「だからいつも通りいかなくてもな」
「嫌だとか思うことないのね」
「ないんだ」
そうだというのだ。
「そこもな」
「覚えておくことね」
「ああ、あとな」
「あと?」
「お前最近どうなんだ」
父はここで咲に聞いて来た。
「学校とアルバイトは」
「別にね」
咲は少し考えてから答えた。
「問題ないわ」
「そうか」
「平和よ」
実際にそうだからこう答えた。
「本当にね」
「これといってか」
「おかしなことはね」
そうしたことはというのだ。
「ないわ」
「それは何よりだな、平和だとな」
「それでなのね」
「いいんだ、平和だとな」
「それに越したことはないわね」
「戦争になるとな」
そうなればというのだ。
「物騒だし学校や職場もな」
「アルバイト先ね」
「揉めてるとな」
そうした状況ならというのだ。
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