イベリス
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第百二十話 大きく深くなっていく想いその九
「それであの人もね」
「生き方出たわね」
「七十近いっていうけれど」
「いい生き方してなかったわね」
「ずっとね」
「そうした生き方がね」
まさにというのだ。
「出て来てね」
「それでよね」
「お笑い芸人とは思えない人相になって」
「それでね」
「ああなったのよね」
「別にヤクザ屋さんとかじゃないけれど」
そのお笑い芸人はとだ、咲は言った。
「碌でもない生き方ってあるしね」
「何か尼さんでもいなかった?そんな人」
ここでクラスメイトの一人が言って来た。
「何かね」
「尼さん?」
「そう、百歳近くまで生きてたけれど」
「また長生きね」
咲は百歳近くと聞いてまずはこう思った。
「それは」
「そう、それでね」
「その尼さんはなの」
「出家前不倫とかしてて」
「不倫って」
咲だけでなく誰もがそこに絶句した。
「いや、ちょっとね」
「駄目よね」
「不倫って」
「そんなことしたら」
「それで不倫して色々あって出家して」
そしてというのだ。
「それでも色々地位とか権力を求めて」
「出家しても?」
「いや、ないでしょ」
「それはね」
「お坊さんって欲を捨てることが目的なのに」
「それがね」
クラスメイトはさらに話した。
「その人は大っぴらにお肉食べたり」
「ああ、今はお肉食べていいけれど」
咲は今は僧籍にある人が肉食してもいいことを知っていた、もっと言えば浄土真宗でなくとも妻帯も出来る様になっている。
「流石に大っぴらはね」
「よくないでしょ」
「そうよね」
「けれどその人は」
その尼さんはというのだ。
「そうでね」
「そんな人なの」
「それで人相見たら」
そうすると、というのだ。
「あまりいいものじゃなかったわ」
「そうなの」
「いや、出家して長い人生歩んでも」
「不倫、地位、権力で」
「そんなものばかりでね」
「お肉大っぴらに食べる様だと」
肉を食べても貰ったものならいいのだ。
「かなりね」
「駄目でしょ」
「ええ」
咲もそれはと答えた。
「本当にね」
「そうでしょ」
「どんな人か知らないけれど」
咲はやや首を傾げさせつつクラスメイトに答えた。
「それでもね」
「いい人じゃないわね」
「犯罪してなくても」
「そうした人生もね」
「卑しいっていう?」
「そうよね」
クラスメイトも否定しなかった。
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