魔法少女リリカルなのは〜転生者の誓い〜
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第五話・介入する転生者
後悔。
それが目覚めて初めに感じた事だ。
勝手にジュエルシードに関わって
妹に迷惑をかけた。
とてもではないが許される事ではない。
―――なのはの性格を変えたくない。
それが俺の中のルール、
いや、独り善がりな願いだった。
今ならその事が分かる。
「…なのはを、泣かせちまったな」
誰に対してでもなく、呟く
思えば、この世界に転生してからというもの
一人で呟く事が癖になっている。
それはやはり、なんと言うべきか・・・、
結局はこの世界を、なのはの事を、
アニメや漫画の世界の人物だという思いが抜けきれていなかったのだ。
この世界で生きてきた、10年間。
正直な話、たるんでいたのかもしれない。
学校
何年も前にやった簡単な授業。
友人
自分より幼い、扱いにくい連中。
それは何かとても面白くなかった。
一応、父のサッカーチームで練習や試合をしているときはそれなりに楽しい。
でも、それでも、俺の心を埋めるには至らなかった。
つまるところ、飽きていたのだ。
そして欲していたのだ。
この世界の変化、
つまり、なのはが魔法少女になる事を。
止める機会なら何度もあったはずだ、
ユーノが飼う事が決まった時、
なのはが夜に外出した時、
そう、止められたはずなのだ。
それに俺の、
なのはの性格を変えたくないという俺のわがままは、
この物語の始まりを望んだ勝手な願望に過ぎなかった。
どうすれば良い?
この罪を償うにはどうすれば良い?
全く、全く分からない。
ただ廊下から足音が聞こえてくる。
「お兄ちゃん!!」
ドアが開かれる。
そこでなのはが泣いている。
俺の勝手なわがままのせいで。
「良かった…目が覚めなかったらどうしようかと…」
おそらく、俺が倒れてからずっと看病してくれていたのだろう。
その涙に歪んだ顔からは疲れがみてとれる。
それに対して俺が言えるのは
「ごめんな…」
そう答えるしか無かった。
「違うよ、私がしっかりしてなかったから…」
なのはが目を伏せる。
違う、そうじゃない。
俺が悪いのだ。
俺は転生者で全て知っていて
自分でまいた種なんだ、
なのはは全く悪くない。
そう、叫びたかった。
でも、
「いや、俺の…俺の所為だ」
こう答えるのが精一杯だった。
今、ものすごく怖かった。
怖い、転生者だとばれるのが怖い。
そしてなにより、
なのはに嫌われるのが怖い。
「………」
「………」
嫌な沈黙が流れる。
なら
「…なのは」
「なにかな?お兄ちゃん…」
この沈黙を破るのは俺であるべきだ
「俺、どれくらい寝てた?」
「えっと、…丸一日かな」
「そうか…」
別に本当に寝ていた時間を知りたかった訳ではない。
ただ、きっかけさえあれば、
「看病、ありがとな」
妹の頭を撫でて感謝する事ぐらいは出来る。
それが俺の、せめてもの罪滅ぼしだ。
「…う、うん」
なのはが照れて、頬を紅潮させながらも
嬉しそうに笑顔になる。
決まりだ。
この笑顔を見て俺はそう思った。
「なのは」
「うん!なに、お兄ちゃん?」
先程質問したときより元気を取り戻した声が返事をする。
「何か、何か手伝える事は無いか?」
「ふぇ!?」
なのはが驚いた声をあげる。
「て、手伝うって、な、何を?」
ああ、そうか、なのはの中では俺はただの一般人だ
魔法を隠そうとしているのだろう。
でも、
ここは、ここは俺のわがままを通させてもらう。
「何…って、なのははあの青い宝石集めてるんだろ?」
「えっ、あ、その……!?」
実のところジュエルシードに取り込まれていたときの記憶は無い。
でも
「それに、なんと言うか魔法…か?よくわからんもの使ってたよな?なのは?」
「で、でも、その危ないし…」
「なら、なおさらだ。危険な事を妹だけにやらせる訳にはいかない。」
転生者である事を利用させてもらう。
「ええっと、こういう時はどうすれば良いの!ユーノ君!?」
おそらく念話で話そうとしたのだろうが声に出ている。
そこを見逃す手は無い
「ユーノ?そういえば、ユーノが喋ってた気が…?」
「!?」
明らかになのはが動揺している。
「え、ええと!?」
後、もう一押しだ。
「うーん?つまりユーノが何か知っているのか?聞いてみるか、喋れるみたいだし」
「え、え、ええ!?」
「じゃ、聞いてくるわ」
そう言って立ち上がり、
混乱しているなのはの横を通って、
部屋を出る。
「ふぇ?ふぇぇ!?ちょっと待って!お兄ちゃん!?」
正気に戻ったなのはが追いかけてくるが
既に俺はなのはの部屋にいる。
そして
「さあ、お話しようぜ?ユーノ」
「キュ、キュウ!?」
未だに動物の振りをするユーノを捕まえる。
「観念しろって、俺はお前が喋るのを聞いた」
「…!?」
ユーノが驚愕の表情を浮かべる。
「それに…」
「?」
「なぜ、俺のかわいい妹が危険な目に遭ってるか教えてもらおうか?」
ギクリ、という擬音が本当に聞こえそうなくらいの勢いでユーノが固まる。
「それと、巻き込まれた当人としては色々聞きたい事もあるしな」
少々嫌な言い方ではあるが、この際は無視する。
そして
「………分かりました、ごめんなさい」
ユーノが無理だと判断したのか謝罪を始めた。
「まあまあ、…それよりさ」
「…なんでしょうか?」
「今まで何があったか教えてよ?」
本当は何があったか知っているが話を聞く。
「ああ、それと」
「…まだ他に何か?」
「いや、ユーノじゃなくて」
「?」
「なのは?お前も後で話し聞かせてもらうからな?」
「わ、私も!?」
いや実は何も知らないのかも知れない。
なぜなら、ここはアニメや漫画の話の世界であっても
アニメや漫画そのものではない。
俺の為に泣いてくれる妹が居る。
優しい家族が居る。
それが現実だ。
元の世界と違っていてもおかしくないのだ。
知る必要がある
この世界の事を、俺の現実を受け止めて。
進み続けよう、どこまでも
たとえ原作と違っても、大きな困難が立ちはだかっても、
俺は、俺の、妹の為に歩み続ける。
それが俺の償いであり、この世界を生きる意味だ。
俺の名前は高町みずな
なのはの兄としてこの世界に転生した者である。
後書き
みずなの原作介入開始です。
久しぶりに一から書いたので不安です。
なにかおかしな点がありましたらご指摘ください(><)
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