ハッピークローバー
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第九十八話 何でも読めることその三
「暴力とか残酷とかな」
「ああ、そうした場面あるわね」
「そうだろ」
「だから下手したら」
「その表現がアウトになることもな」
「国によってはあるの」
「あれだぞ、エロ漫画なんかな」
日本の漫画の中で重要な位置を占めているこのジャンルの作品はというのだ。
「持ってるだけでアウトって国もな」
「あるのね」
「そうなんだよ」
「じゃあお兄ちゃんは」
「俺かよ」
「そうした漫画持ってるわね」
「そんなこと言うことじゃないだろ」
兄は妹にむっとした顔で反論した。
「流石に」
「まあそれはね」
「だからな」
「そこは言わないのね」
「お前も察してるだろ」
「それはね」
かな恵が自分の弟のことを話すそれも思い出しつつ答えた。
「やっぱりね」
「じゃあお互いな」
「聞かないし言わない」
「そうだよ、けれどそうしてな」
「色々規制がある国もなのね」
「あってな」
そうしてというのだ。
「こうして何でもなく読めることもな」
「ないのね」
「戦前の日本なんかのらくろでもな」
田河水泡のこの作品もというのだ、連載当時は誰もが知っている様な非常にヒットした作品だった。
「あれこれ言われてな」
「発禁になったの」
「そうした時代もあったんだよ」
「あの漫画でもなの」
「そうだったんだよ」
「そうなのね」
「だから何でも読めるってな」
このことはというのだ。
「それだけでな」
「有り難いことなのね」
「幸せだよ、若しもだよ」
兄は妹でここで真顔で話した。
「俺週刊少年エイトが読めないとな」
「あの雑誌ね」
「ああ、あれが読めないとな」
二人が通っている八条学園を経営している八条グループの中の出版社が出している週刊漫画雑誌だ、この出版社は他にも週刊漫画雑誌を幾つか月刊漫画雑誌も数多く出版して漫画サイトも運営している。
「困るよ」
「あの雑誌面白いしね」
「伝統的にな」
「それでよね」
「俺もな」
妹にあらためて言った。
「本当にな」
「あの雑誌が自由に読めないと」
「困るよ」
「あの雑誌も自由に読めないかも知れないのね」
「国によってはな」
「検閲があったら」
それならというのだ。
「民主主義の国でも」
「表現の自主規制とか言葉狩りもあるしな」
「日本でも?」
「あるんだよ」
これがという返事だった。
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