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イベリス

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第百十九話 秋という季節その五

「悪いけれど」
「それでもですね」
「幾ら何でもね」
「信用出来ない人はですね」
「平気で裏切ったり嘘吐く人はね」
「駄目ですね」
「うん、だからその人達はね」
 本校の彼等はというのだ。
「嫌われてるんだよ」
「そうですよね」
「自業自得だよ」
 こうもだ、部長は言った。
「その人達が嫌われてね」
「お友達いないですね」
「お互いもね」
 彼等の間もというのだ。
「どうせいつも一緒にいても」
「お友達じゃないですね」
「互いに利用し合う様な」
 そうしたというのだ。
「関係だよ」
「それじゃあお友達じゃないですね」
「友達って何か」
 部長は少し遠い目になって咲に話した。
「自分がそう思っていても相手は違ったり」
「ああ、ありますね」
 咲も言われて頷いた。
「そうしたことって」
「そうだよね」
「自分がお友達と思ってるだけで」
 ただそれだけでというのだ。
「相手の人は」
「そう思っていないことってね」
「ありますよね」
「そうだよね」
「それって本当に」
 まさにというのだ。
「あることで」
「それでね」
「そうした風だと」
「本当のお友達とはね」
「言えないですね」
「そうだよね、けれどね」
 それでもとだ、部長は言うのだった。咲に対して語るその顔は真剣なものでありそれで咲もじっと見ている。
「若し片方が死んで」
「死んで、ですか」
「残った方が残念と思ったらね」
 その死んだことをというのだ。
「その時はね」
「お友達ですか」
「最近そう思うよ」
 咲に言うのだった。
「だってお友達でも何でもないと思っていたら」
「それならですか」
「もうね」
 それこそというのだ。
「何とも思わないよね」
「死んでもですね」
「そうだよね」
「そうですね」
 咲もそれはと頷いた。
「言われてみますと」
「お友達だと思うから」
「死んだらですね」
「残念と思ってね」
 それでというのだ。
「死んだ方もわかるんだよ」
「その人もですか」
「その時は魂だけになっていても」
 死んで肉体がなくなっていてというのだ。
「それでも魂は見るよね」
「世の中を」
「そう、それでね」
 そのうえでというのだ。 
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