八条学園騒動記
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第七百十八話 多くの鳥達その十一
「それはな」
「狐もそうですし」
「あれは元々中国から」
「尻尾が多い狐は」
「九尾の狐だな」
「はい」
上等兵もその通りだと答えた。
「それは」
「あの狐は元々中国のある山にいてな」
山海経という書に出て来る、山にいて人を喰らうとされている。尚九本の尻尾に加えて頭が九つあるリョウシツという狐の妖怪も存在している。
「それがだ」
「日本にもですか」
「伝わったのだ」
「あくまで元は中国の妖怪ですね」
「物語でもそれがわかる」
大尉は話した。
「日本の昔の天皇であり上皇、法皇だが」
「法皇は出家した上皇でしたね」
「そうだ、皇室は神道の総本山だがな」
そうした存在だがというのだ。
「同時に仏教もだ」
「信仰していて」
「それでだ」
「仏門に入ることも可能であり」
「それで法皇になっただ」
そうしたというのだ。
「鳥羽法皇に憑いたのだが」
「鳥羽法皇ですか」
「知っているか」
「いえ」
上等兵は首を横に振って答えた。
「どういった者でしょうか」
「平安時代末期の日本の人物だ」
「今から二千年以上前ですね」
「その頃からあの国の皇室は普通にあってな」
その長い歴史にだ、大尉はエウロパのどの王室よりも長いものそして伝統があるので忌々しさを感じつつ話した。
「その頃の天皇でな」
「法皇になった人物ですか」
「その鳥羽法皇に玉藻前という宮女となって憑いたが」
「中国から来たのですか」
「中国では最初妲己だった」
この女だったというのだ。
「あの殷の紂王を惑わしたな」
「封神演義に出て来る」
「まさにその妲己だ」
「そういえばあの作品でも妲己は狐でしたね」
「九尾のな」
「つながっていたのですね」
「またインド、マウリアでも王子を惑わしてな」
妲己であった次はというのだ。
「また中国に戻りだ」
「悪事を働いたのですね」
「今度は周の幽王を惑わした」
褒似という女になってであった。
「そうした、そしてだ」
「日本に来たのですね」
「そうなのだ、だからな」
「あの狐は元々ですね」
「中国の妖怪だ」
そうだというのだ。
「そのことをだ」
「覚えておくことですね」
「そして九本の尻尾はな」
これはというのだ。
「強大な魔力の証だ」
「猫又と同じですね」
「日本の首相殿も同じだな」
大尉はこうも言った。
「伊東首相だが」
「九尾の狐と呼ばれていますね」
「非常に頭の回転が速くな」
「謀略も得意であるので」
「その為だ」
伊東のそうしたことの為にというのだ。
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