神々の塔
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第三十七話 氷の海の神々その十一
「食べられてるわ」
「そやね」
「お肉にな」
それにというのだ。
「脂にミルクもな」
「採られてるね」
「骨や皮も利用されてるし」
「有り難い存在やね」
「ステラーカイギュウもな」
「そやねんね」
「ただ、あのカイギュウはな」
芥川はここで微妙な顔になってこんなことも言った。
「捕まえたり獲ったりするのは抵抗あるな」
「家畜でもやね」
「起きた世界では絶滅したって言われること抜いてもな」
それでもというのだ。
「抵抗あるわ、どうしてもっていうと時以外はな」
「芥川君としてはやね」
「抵抗あるわ」
「それはどうしてなん?」
「ステラーカイギュウは大人しいんや」
そうした生きものであることを話すのだった。
「無抵抗で逃げることも隠れることもな」
「ああ、せんね」
綾乃もそれはと応えた。
「ステラーカイギュウは」
「それで仲間のピンチにはな」
その時にはというのだ。
「特に雌やと助けようとして」
「集まって実行に移すね」
「絡まってる縄とか刺さってる銛とか取ろうとしてな」
「仲間思ひやねんね」
「そんな生きものやからな」
「捕まえたり獲ったりするには」
「ほんまにな」
「抵抗あるね」
「無抵抗な相手をそうするとかな」
どうにもというのだった。
「戦うモンとしてはな」
「抵抗あって当然やね」
「弱い相手何も出来ん相手をいたぶる」
眉を顰めさせてだ、芥川は言った。
「それは最低の行いや」
「人として」
「そやからな」
だからだというのだ。
「したくないわ」
「そやね、家畜化してるけど」
「野生やとな」
「出来る限りやね」
「捕まえたくないな」
「そやね」
綾乃もそれはと頷いた。
「無抵抗な相手には何もしたらあかんわ」
「獲ってもな」
「どうしてもって時で」
「その命をな」
「大事にいただくことやね」
「そや、ほんまにな」
「そやね、気をつけんとあかんね」
肝に銘じなければならないとだ、綾乃も言った。
「うち等も」
「卑怯で醜悪なことや」
「若しそうした相手をいたぶるなら」
「人としてな」
「ほんま最低やね」
「そんな行いや」
「人としてしたらあかんわ」
このことも話してだ、一行はイヌイットの神々に勝ったことを祝った。そのうえでさらに上にと進むのだった。
第三十七話 完
2023・8・8
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