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神々の塔

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第三十七話 氷の海の神々その十

 仲間達と共に宿屋に戻って鯨の肉を焼いたものを食べつつウォッカなど強い酒を飲んだ、そうしつつ言うのだった。
「いやあ、鯨塩が利いてるし」
「それでやな」
「お酒によお合うわ」
 笑顔でだ、芥川にも応えた。
「ほんまに」
「そやな、しかかしな」
「しかし?」
「綾乃ちゃんステラーカイギュウのお肉は」
「注文出来たけどね」
「せんかったな、僕等もやけどな」
「やっぱりあれやで」
 綾乃はどうかという顔で応えた。
「ステラーカイギュウってうち等の起きた世界やと」
「まだおるって話あるけどな」
「絶滅してるさかい」
「ちょっとな」
「注文して」
 そしてというのだ。
「食べられんわ」
「そやな」
「それでや」
 こう言うのだった。
「うちもやねん」
「注文せんかったな」
「美味しいらしいけど」
 それでもというのだ。
「そやけどな」
「食べるに忍びないな」
「この世のことやないけど」
「そやけどな」
「皆もそうやろ」
「ああ、絶滅してるってな」
「大きいで」
「そやな」
「ドードーもモアもリョコウバトもおるけど」
 こちらの世界にはというのだ。
「ニホンオオカミもで」
「皆おるけどな」
「そやけど」
 綾乃は暗い顔で話した。
「起きた世界では絶滅してると」
「どうしてもな」
「少なくとも今は」
「食べるのに忍びないな」
「どうにも」
「そやな、鯨を食べて」
 芥川も鯨肉を塩で味付けして焼いたものを食べている、そうしながら綾乃に対して真剣な顔で言うのだった。
「お酒飲んで」
「それでええね」
「ああ、しかしな」
「しかし?」
「ステラーカイギュウって美味しいらしいな」
「それこっちの世界でも言われてるね」
「子牛みたいな味がして」 
 それでというのだ。
「脂はアーモンド油みたいな」
「そんな味らしいね」
「それで養殖までされてるわ」
「そやね」
「完全な草食性で昆布食べてるから」
 だからだというのだ。
「それださえあれば」
「養殖出来るし」
「大人しいしな」
「そやねんね」
「逃げることも隠れることもせえへん」
 そうした習性であるのだ。
「養殖しようと思ったらな」
「楽やねんね」
「それでな」
「こっちの世界ではやね」
「養殖までされて」
 そのうえでというのだ。 
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