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イベリス

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第百十七話 お巡りさんの名前その八

「そうなったけれどな」
「人はそこからも成長しますね」
「ああ、汚れちまった悲しみからもな」
 まさにそれからもというのだ。
「学ぶんだよ」
「そうしたものですね」
「痛い目も見るんだよ」
「生きていると」
「間違ったこと、悪いこともしてな」
 生きているうちにというのだ。
「そうもしてな」
「怒られたり報いを受けて」
「そこから反省してな」
「成長するんですね」
「そうしたこともあるんだよ」
 人減はというのだ。
「そしてそれがな」
「人生ですね」
「そうさ」
 咲にその人生を見つつ話した。
「それが出来てないと本当に爺婆になってもだよ」
「子供のままですね」
「番長って言われてな」
 具体的な例をだ、マスターはここで話した。
「マスコミに変に持て囃されてな」
「あの元プロ野球選手ですね」
 咲は番長と聞いた時点でわかって応えた。
「何かと酷いですよね」
「ああ、それで変に調子に乗ってな」
「碌なことしてこなくて」
「あんなのになる場合もな」
「あるんですね」
「あいつは巨人に入ってからまともな経験してこなかったからな」
 その人生においてだ。
「ああなったんだ、汚れちまった悲しみとかな」
「あの人にはわからないですね」
「そうしたことがわかりにもある程度の知能と教養が必要なんだ」
 そうしたものがというのだ。
「そのどちらもな」
「あの人にはないですね」
「ある様に思えないだろ」
「絶対に」
 咲も言い切った。
「ないですね」
「悪太郎って呼ばれてな」
 今度はこの輩のことを話した。
「やっぱりマスコミに持て囃されてな」
「そのままですか」
「歳だけ取ってな」
 そうなってというのだ。
「ただ現役時代の実績だけ凄くてだよ」
「エースだったから」
「それでも人生の勉強も野球理論とかもな」
「全く学んでこなくて」
「本当に悪太郎のままな」
 十代の頃のままというのだ。
「爺になったのがあいつだよ」
「ファンの人達からもかなり嫌われてますね」
「ああなったら終わりだよ」
 人減としてとだ、マスターも言い切った。巨人史上最低最悪の称号は伊達ではないということであるのだ。
「本当にな」
「間違ったこと、悪いことをしてもですね」
「そこからちゃんと経験を積んでな」
「それを身に着けないとですね」
「ああなるんだよ」
「番長さんや悪太郎さんみたいに」
「どっちも生き方が顔に出てるな」
 マスターはこうも言った。
「人相にな」
「そうですね、そのまま出ていますね」
 咲もそれはと答えた。
「悪いことをすることがあっても」
「そこからだよ」
「確かにですね」
「痛い目を見てな」
「経験を積むことですね」
「今言った連中は間違ったこと悪いことばかりしてな」
 その醜い人生の中でだ。 
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