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仮面ライダーAP

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夜戦編 蒼き女豹と仮面の狙撃手 第3話

 ――しばらく時を遡り。G-verⅥがホークアイザーに狙撃され、山林の斜面を舞台にした戦闘が始まる直前の頃。要塞内部の奥深くへと潜入していた真凛は、騒然となっている兵士達の視線をかわしながら施設内を探索し、島内の状況を調べ始めていた。

「ぐ、がッ……!?」

 闇に紛れ、要塞内部に残っていた警備兵の背後に忍び寄る真凛。彼女は素早い動作で、白くか細い腕を兵士の身体に絡ませると――むっちりとした太腿に装備されていたナイフを引き抜き、瞬く間に首を掻き切る。何が起きたのかも分からぬまま事切れた兵士は、糸が切れた人形のように崩れ落ちていた。

「……お休みなさい。永遠にね」

 背後からピッタリと兵士の背中に密着し、その最期を見届けた真凛は、冷たく別れを告げている。兵士の背中にむにゅりと押し当てられ、淫らに形を変えていた張りのある豊満な爆乳。その釣鐘型の巨峰は、膝から崩れ落ちて行く兵士の背中に先端(・・)を軽く擦られ、甘美な刺激を受けていた。ぷっくりとした真凛の妖艶な唇から、扇情的で艶やかな吐息が漏れる。

「……あっ、はっ……ぁんっ……!」

 青いチャイナドレスの中で淫らに汗ばみ、熱を帯びる極上の白い乳房。その熟れた果実は兵士の背中から離れると、ぶるんっと弾んで本来の釣鐘型に戻って行く。ほんの一瞬とはいえ、先端(・・)が擦れた際の淫らな感覚に思わず上擦った声を漏らしてしまった真凛は、気を取り直すように毅然とした表情でキッと振り返り、周囲を見渡していた。その動作で、乳房と桃尻がばるんっと揺れ動いている。

(ヘレンのところにはオルバスが向かっているはず。彼が間に合っていれば良いのだけれど……私も急がないとね)

 どうやらアイアンザックはミサイルスパルタンの基本形態(コアフォーム)に当たる外骨格を装着し、要塞の外に出向いてヘレンのマス・ライダー軽装型と対決しているらしい。入り組んだ要塞内部の情報を収集しながら、独り薄暗い通路を進む真凛は、やがて異臭が漂う奇妙な一室に辿り着いていた。

(ここは……倉庫? でも、この嫌な臭いは……)

 一見すると物資を積載しておく倉庫のようにも見えるフロアだが、生物的な異臭が漂うこの部屋に辿り着いた真凛は不穏な気配を感じ、眉を顰めている。そんな彼女を見下ろすように設置されていたモニターが発光したのは、その直後だった。

「……!」
『ふふっ……シャドーフォートレス島へようこそ。真凛・S・スチュワート君』

 白衣に袖を通した中年の男性が、モニター越しに不敵な笑みを浮かべて真凛を見下ろしている。モニターの光に気付き顔を上げた真凛は即座に彼の「正体」に気付き、鋭く眼を細めていた。モニターに映し出された白衣の男は、悪名高いノバシェードの研究員だったのである。

『やはり君も、この島の裏側を嗅ぎ付けていたようだね。対策室を除名されてもなお、我々を付け狙うとは見上げた正義感だ。かつては、対策室最強の女傑……と恐れられていただけのことはある』
「……なるほど。この島の兵士達がノバシェードの思想に汚染されていたのは、あなたの仕業だったのね。ノバシェードの現幹部にして、組織における怪人研究の第一人者……斉藤空幻(さいとうくうげん)

 剣呑な面持ちでモニターを睨み上げる真凛に対し、斉藤空幻と呼ばれた男は冷たい微笑を浮かべている。1年前にアイアンザックと接触し、資金援助とスパルタン計画の復活を持ち掛けていたのは、この男だったのだ。

 明智天峯(あけちてんほう)上杉蛮児(うえすぎばんじ)武田禍継(たけだまがつぐ)。ノバシェードの首領格だった彼らを失った後、斉藤は約11年前に旧シェードの怪人軍団と「相討ち」になっていたという、スパルタンシリーズのポテンシャルに目を付けていた。
 そこで彼は、スパルタンシリーズの開発責任者だったアイアンザックや、この島に「左遷」された兵士達を取り込むことで、天峯達の敗北により減衰していた組織の軍事力を補おうと目論んでいたのである。そして彼の狙い通り、このシャドーフォートレス島に配属されていた全ての陸軍兵士達が、ノバシェードの尖兵と化していたのだ。

『汚染? ふっ、人聞きの悪いことを言う。私は人間社会から追放され、島流しにされていた哀れな彼らに「生き甲斐」を与えたのだよ。その上、この島に多額の資金を提供し……11年前に凍結・抹消されていた旧時代の骨董品(スパルタンシリーズ)を現代に蘇らせてあげたのだ。いくら感謝しても足りないぐらいではないか?』
「そうやって差別を受けている改造被験者達の弱みに付け込み、闘争心を煽り、テロリストに仕立て上げる。……実に下劣な発想ね。あなたを『怪人』たらしめているのは改造された身体ではなく、その腐った心根よ」
『ふふっ……はははっ、対策室から除名された雌豚がどの口でほざくか。……そんな君の相手に相応しいゴミ共がそこに居る。存分に楽しんでくれたまえ』

 斉藤の魂胆をすぐに見抜いた真凛は、冷淡に彼の思想を否定する。そんな彼女の言葉を冷たく笑い飛ばしながら、斉藤は真凛が居る倉庫を指差していた。

「……っ!?」
『そのフロアに上手く忍び込めたつもりでいたのだろうが……君はすでに、囚われの身となっていたのだよ』

 すると――フロア内の物資の陰から、無数の「虫」がゾロゾロと這い出て来る。だが、そのサイズは明らかに普通の虫のそれではない。人間、それも成人男性ほどの体格を持った、異様に巨大な虫であった。どの個体も、全長180cmはある。

『私はフィロキセラ怪人の量産化を視野に入れた研究も進めていてね。その実験の「失敗作」は凶暴な奴らばかりで、私も処分に困っていたのだよ。そこで……アイアンザック中将には、そいつらの「世話」を頼んでいたのさ。多額の資金援助や、スパルタン計画の復活と引き換えに……ね』
「……いくら貰っても割に合わないわよ、こんな連中の『世話』なんて」

 真凛がその異様な怪物の群れに瞠目する一方、斉藤はニヤニヤと薄ら笑いを浮かべている。彼が「失敗作」と呼ぶ謎の虫達は、フィロキセラ怪人の類だとは到底思えない容貌だ。フィロキセラ怪人というよりは、その遺伝子の源流とされるブドウネアブラムシがそのまま巨大化したような姿に見える。

「……良い趣味だわ。反吐が出る」

 青緑の体色に知性が感じられない双眸、針状の口、そして人間の男性のような形状である6本の手足。どれを取っても生理的嫌悪感しか湧かない、グロテスクな外観だ。
 しかも真凛の肉体に「欲情」しているのか、彼らは真凛の肢体をねぶるように観察し、下卑た悪漢のような挙動まで見せている。そんな虫の仕草に嫌悪感を露わにする真凛は、露骨に怪訝な表情を浮かべていた。

『本来、産業廃棄物に与える名など無いのだが……敢えて呼ぶなら、「フェイリアγ(ガンマ)」とでも言おうか。そいつらは君のような肉付きの良い雌豚が特に好物でね。どうやら彼らも、大いに湧き立っているようだ。罪な女だねぇ、君も』
「……自分で出した生ゴミくらい、たまには自分で処理しなさい。ズボラな男はモテないわよ」
『ふっ、言えている。では君が死んだ後、ゆっくりと部屋の掃除でもしよう。さよならだ、美しく哀れな()捜査官殿』

 その冷淡なやり取りを最後に、モニターの映像がプツンと切れた瞬間。通信の終了を合図に動き出した大量の虫――フェイリアγが、一斉に真凛目掛けて襲い掛かって来る。彼女は即座に華麗なバック宙で初撃の針をかわし、先頭の虫にナイフを投げ付けていた。

「……ふッ!」

 チャイナドレスのスリットから覗く白い太腿。その美脚に装備されていたナイフが、瞬く間に虫の頭部に突き刺さる。改造人間とも呼べない文字通りの「失敗作」は、そんな攻撃にも耐えられなかったのか、ひっくり返るとモゾモゾともがき苦しみ、そのまま絶命してしまう。

「……ちっ、数が多過ぎるわ!」

 だが、フェイリアγの脅威は個々の戦闘力ではなく、その圧倒的な数にある。一斉に羽ばたきながら真凛を付け狙う虫の大群。そのうちの1匹が、真凛を組み伏せようと前脚を広げて飛び掛かって来た。

「はぁッ!」

 その殺気に反応し、地を蹴って空中で身体を捻る真凛。彼女はその回転による遠心力を乗せた後ろ回し蹴りで、襲い掛かって来たフェイリアγを華麗に蹴り飛ばしてしまう。蹴りが炸裂した瞬間、釣鐘型の爆乳と安産型の爆尻が反動でどたぷんっと弾み、ウェーブが掛かった黒髪のロングヘアが艶やかに靡いていた。ピンと伸び切った白く長い扇情的な美脚が、瑞々しい汗を飛び散らせている。

 後ろ回し蹴りを終えて颯爽と着地した瞬間、チャイナドレスの裾がふわりと浮き上がり、Tバックのパンティが深く食い込んだ極上の桃尻が露わになる。その膨らみをはじめとする柔肌からは、淫らな雌の匂いが滲み出ていた。そんな真凛のフェロモンに引き寄せられるように、虫の大群はますます彼女に集まって来る。

「……ッ!」

 迫り来るフェイリアγの大群。その無数の針と前脚をかわしながら、爆乳と爆尻をばるんばるんと弾ませ、ひたすら倉庫内を駆け回る真凛。彼女はやがて、倉庫の隅で折り重なっている無数の腐乱死体を発見する。どうやら、この虫達の餌食となった女性兵士達の「成れの果て」であるようだ。

(惨過ぎる……! アイアンザックはミサイルスパルタンのために……斉藤に言われるがまま、こんなことまでッ……!)

 女性兵士達の遺体は身体中の体液を吸い尽くされたのか、まるでミイラのように痩せ細っている。フェイリアγの生態について何も知らされないまま、アイアンザックの命令によってこの部屋に送り込まれていた彼女達は、用意していた食事もろとも虫の大群に貪り尽くされて(・・・・・・・)しまったのだ。

「……万死に値するわ」

 ミサイルスパルタンの開発に執着していたアイアンザックは、ホークアイザーの預かり知らぬところで、これほどの所業を繰り返していたのである。激しくもがき苦しみながら命を落として行った彼女達の壮絶な死に顔は、その苦痛の凄まじさを如実に物語っている。その凄惨な現場を目の当たりにした真凛は、険しい表情を露わにしていた。

「ごめんなさい、ちょっと借りるわよッ!」

 犠牲者達の骸が握っていた自動拳銃(ハンドガン)――「スプリングフィールドXD」を拾い上げた真凛は、振り向きざまに連続で発砲する。乾いた銃声が倉庫内に響き渡り、何匹もの虫が墜落して行った。だが、同胞達が何匹殺されてもフェイリアγの群れは怯むことなく、真凛に向かって殺到して来る。

「くっ……!」

 いかに1匹が雑魚であっても、これでは多勢に無勢。これまで余裕綽々といった佇まいで虫達を翻弄して来た真凛の表情にも、焦燥の色が滲み始めていた。自身の姿を捕捉している真正面の数匹を拳銃で撃ち落とした彼女は、発砲と同時に物陰に飛び込み、残りの大群の視界から一時的に逃れる。

「はぁっ、んはぁっ……! 斉藤も厄介な置き土産を残してくれたわねっ……!」

 数に物を言わせて襲い掛かって来る、フェイリアγの大群。斉藤の刺客である彼らの羽音に眉を顰めながら、真凛は淫らに息を荒げながらも物陰から虫達の挙動を観察していた。真凛を見失った彼らは不規則に飛び回り、「極上の獲物」を探し回っている――。
 
 

 
後書き
 斉藤空幻は番外編「タイプγと始祖の怪人」にも死体として登場しておりました。本章はその番外編から約1年前の出来事なので、まだ彼が生きているのですな(´ω`) 
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