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仮面ライダーAP

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夜戦編 蒼き女豹と仮面の狙撃手 第2話

 
前書き
◆今話の登場ライダー

本田正信(ほんだまさのぶ)/仮面ライダーターボ
 元白バイ隊員であり、亡き先輩の仇を討つために「2代目」として装甲服を受け継いだ熱血巡査。当時の年齢は32歳。
 ※原案はヒロアキ141先生。

森里駿(もりさとはやお)/仮面ライダータキオン
 元ノバシェード構成員であり、「ライダーマンG」こと番場遥花(ばんばはるか)に敗れた後は芦屋隷(あしやれい)の保護観察を受けつつ、実験に協力していた改造人間。ぶっきらぼうに振る舞うが、情には厚い。当時の年齢は26歳。
 ※原案はエイゼ先生。

上福沢幸路(かみふくざわゆきじ)/仮面ライダーGNドライブ
 大富豪の御曹司でありながら、警視庁の刑事でもある優雅な好青年。気障な言動を見せることが多いが、その内側には熱い正義感を秘めている。当時の年齢は27歳。
 ※原案は黒崎 好太郎先生。

水見鳥清音(みずみどりきよね)/仮面ライダーG-verⅥ(ガーベラゼクス)
 良家出身の「お嬢様」ながら、G-4スーツの装着実験で死亡した自衛官の友人の想いを背負い、装着者に志願した物静かな美女。当時の年齢は24歳。
 ※原案は魚介(改)先生。
 

 
 シャドーフォートレス島の「外周」に当たる、闇夜の海。島から噴き上がる爆炎に照らされたその海上を、4台の水上バイクが水飛沫を上げて走り抜けていた。

 新世代ライダーのために開発された、赤と白を基調とする新型特殊船舶「マシンGクルーザー」。その小さな船体に見合わぬパワーを発揮している4台の水上バイクは、この島に「呼び寄せられた」仮面の戦士達を運び、シャドーフォートレス島を目指して爆進している。
 だが、彼らの行手を阻む無数の機雷は不規則に海面を漂っており、易々と島には近付けないようになっていた。水上バイクを駆る4人の新世代ライダー達は巧みにハンドルを切り、その機雷を左右にかわしながら島に向かっている。

「ちくしょうッ……! 何なんだ、この機雷の数はッ……! これじゃあ島に辿り着くまでに夜が明けちまうぜ! もうあの島は火の海だっていうのにッ!」
「……ふふっ、分かりやすくて良いじゃないか。ここまでして隠し通したかった何かがある……ということだよ。知的好奇心を擽る素晴らしいアトラクションじゃないか」
「この機雷……やはりノバシェード製か。妙に具体的な内容だった、あのタレコミ通りだ。あの島に何かがある……それだけは間違いなかったようだな」

 情熱的な熱血漢。優雅な好青年。冷静沈着で寡黙な無頼漢。そんな3人の美男子達は、それぞれのGクルーザーを乗りこなして華麗に機雷をかわして行く。
 筋骨逞しい二の腕を強調している、ノースリーブの黒い特殊戦闘服。その装備を纏っている彼らは、鋭い双眸で遠方のシャドーフォートレス島を射抜いていた。

 熱血漢と好青年の腰部にはすでに変身ベルトが巻かれており、無頼漢の手首にも変身用のライダーブレスが装着されている。戦闘準備は万全のようだ。彼らの先頭を走っている4台目のGクルーザーも、すでに最高速度に達していた。

「……本田(ほんだ)巡査の言う通りですわ。現場があれほど切迫している状況だというのに、このままでは島への到着が遅れる一方です。……やむを得ません。こうなればGクルーザーを犠牲にしてでも、上陸を強行するしかありませんわ。皆様、直ちに『変身』してくださいまし」

 4台目のGクルーザーに跨っている、このチームの紅一点。すでに無骨な重鎧で全身を固めている彼女は、鉄仮面の下から「強行突破」を提言していた。言葉遣いこそ丁寧だが、その振る舞いに反してかなり豪快な性格の持ち主であるようだ。

「やっぱり……それしかないよなッ!」
「ふふっ、それじゃあ帰りの船はあの島から失敬するとしよう!」
「……相変わらず、危険な女だ」

 彼女の後方を走っている男達に、反対する気配は無い。彼らは「やはりそう来たか」と言わんばかりに不敵な微笑を溢すと――それぞれの変身ベルトを起動させていた。

 熱血漢の腰に装備された「ターボドライバー」にライダーイグニッションキーが装着され、好青年の腰部に巻かれた「量産型マッハドライバー」に、HS(ハイスピード)デッドヒートシフトカーが装填される。

GET(ゲット) READY(レディ)?』

 さらに、無頼漢の手首に巻かれたライダーブレスに、携帯電話を模したデバイスが装填された瞬間。ブレス本体から、「準備完了」を告げる機械音声が響き渡って来た。

 ――変身ッ!

 男達の眼に躊躇いの色は無い。紅一点を乗せた先頭のGクルーザーが、弾丸の如く機雷の海に飛び込んで行った瞬間――男達は同時に叫び、「変身」を開始する。

 眩い輝きに包まれた彼らの全身が、人類の自由と平和を守護する「新世代」の鎧で固められて行く。その鎧が完全に構築され、最後に彼らの頭部が強固な鉄仮面で覆われた瞬間――男達を乗せたGクルーザーが、機雷の海に突入する。

 猛烈な爆音と共に、天を衝くほどの水飛沫が噴き上がり。水上バイクだった残骸が四方八方に飛び散ったのは、その直後だった。

 ◆

 海岸線からシャドーフォートレス島に上陸し、この島の調査に訪れた4人の新世代ライダー。彼らは海上の移動に使用していた水上バイク「マシンGクルーザー」を機雷で爆破されながらも、泳いでこの島に辿り着いていた。

「くそっ……まさか島の外周全部に、機雷があれほどバラ撒かれていたなんて。しかもあの機雷全てに、ノバシェードのマークが刻まれていた……。どうやら森里(もりさと)の言う通り、あのタレコミが正しかったみたいだな」

 その1人である熱血漢――「仮面ライダーターボ」こと本田正信(ほんだまさのぶ)。彼は愛用のエネルギー拳銃「シャフトブレイカー」を両手持ち(ツーハンドホールド)で構えながら、腰を落とした姿勢で慎重に山林の中を歩いている。赤を基調とする仮面の戦士は、白いマフラーを靡かせていた。

「僕達に情報を流したのが誰かは分からないが……それは後でゆっくり調べるとしよう。今は、この島のノバシェード構成員を逮捕するのが先決だ」
「すでに島中が賑やか(・・・)になっているようだな……。俺達よりも先に、この島に来ている『先客』が居たらしい。それも恐らく、同じ目的のな」

 ターボの後に続き、山林の中をゆっくりと移動している好青年――「仮面ライダーGNドライブ」こと上福沢幸路(かみふくざわゆきじ)。無頼漢――「仮面ライダータキオン」こと森里駿(もりさとはやお)
 彼ら2人も鋭い眼光で辺りを見渡しながら、低い姿勢で山の斜面を登っている。黒と灰色のボディという無骨な外観を持つタキオンに対して、煌びやかな銀色の装甲を輝かせているGNドライブ。そんな彼の手には、専用のエネルギー拳銃「ダイヤガンナー」が握られていた。

「であれば……私達も急ぐ必要がありますわね。『先客達』と合流出来れば、協力関係を構築出来る可能性もあるでしょう」

 そして、先頭を進んでいるこのチームの紅一点――「仮面ライダーG-verⅥ(ガーベラゼクス)」こと水見鳥清音(みずみどりきよね)は、顔を上げて遠方の爆炎を見遣っていた。自分達の同僚であるオルバスが大暴れしていることも知らないまま、この島に来ていた彼女の両腕には、2丁のGX-05「ケルベロスランチャー」が装備されている。

 赤と白を基調とする重厚な装甲を纏った彼女の勇姿は、「荘厳」の一言に尽きる。「G-6」と刻まれた右肩をはじめ、その全身は頑強な鎧で固められていた。そんな重鎧の下に、スタイル抜群な絶世の美女の肉体が隠されているなど、並の人間ならば想像もつかないことだろう。
 推定Gカップの豊満な巨乳に、細く引き締まった腰つき。そのくびれに対して、むっちりと大きく実った安産型の桃尻。透き通るような白い肌に、艶やかな銀髪。そして、氷のような青い瞳と怜悧な美貌。そんな彼女の扇情的な肢体が、この無骨な重鎧に隠されているのだ。

「……ん、ふぅっ……」

 鎧の内側でじっとりと汗ばんだ彼女の白い柔肌からは、芳醇な女の香りが濃厚に熟成されている。重鎧の中に閉じ込められている彼女の身体から滲み出る甘い匂いは、時間が経つごとにますます淫らに煮詰まり、成熟して行く。過去に生身の状態でノバシェードの戦闘員達に組み敷かれた際は、文字通り身体中にむしゃぶり付かれそうになったこともある彼女の熟れた肢体は、スーツの中でしとどに汗ばみ、さらにその香りを淫らに育てていた。
 頭から首筋、鎖骨に乳房、二の腕や腋下、くびれた腰から大きく膨らんだ巨尻に肉感的な太腿、膝裏に脹脛、さらには足指や足裏、爪先に至るまで。その白く瑞々しい肉体の隅々からは水見鳥清音という極上の女の匂いが分泌され、スーツの内側で特濃のフェロモンとして醸成されている。

 冷静沈着で知的な佇まいとは裏腹に、スーツ内に隠された豊満な肉体から滲み出ている淫らなフェロモンは、淫魔(サキュバス)すら裸足で逃げ出すほどの域に到達している。密閉された外骨格の中で熟成された汗の香りはあまりに扇情的であり、特に汗が溜まりやすい乳房の谷間や腋、鼠蹊部のラインには濃い匂いが染み付いている。

「……それはそうなんだけどさ。何でよりによって、元ノバシェードの森里(コイツ)が来たんだよ。言っておくが、俺はお前のことなんて助ける気は無いからな」
「あぁ、好きにしろ。お前のような単細胞の助けなど、ハナから期待していない」
「な、なんだとっ……!」

 一方、ターボ達の間にはどこか不穏な空気が漂っていた。敬愛していた先輩を旧シェードに殺された過去を持つターボは、元ノバシェードであるタキオンの存在を完全には認めていなかったらしい。今は同じ新世代ライダーであるとはいえ、かつては敵同士だったのだ。その過去に纏わる不信感というものは、簡単に拭えるものではないのだろう。
 そんな彼に対しても不遜な態度を隠さないタキオンとの関係は、決して良好とは言えないものであった。犬猿の仲……のようにも見える2人のやり取りに、GNドライブとG-verⅥはため息を吐いている。感情的になりやすいターボの一面には、2人共普段から手を焼いているのだ。

「やれやれ……君達は相変わらずだねぇ」
「……作戦行動中に私情を挟む言動は謹んでください、本田巡査。そのようなことでは……!? 巡査、危ないッ!」

 だが、次の瞬間。斜面を登った先から襲い掛かって来た「殺気」にハッと顔を上げたG-verⅥが、咄嗟に後ろに手を伸ばしてターボ達を突き飛ばす。斜面の遥か先から飛んで来た1発の銃弾が、彼女の胸を貫いたのはその直後だった。

「……うぁあっ!」
「水見鳥ッ!? ……うおッ!?」

 G-verⅥの短い悲鳴と予期せぬ事態に、思わずターボが声を上げる。それから間髪入れず、即座に状況を把握したGNドライブとタキオンが、ターボの首や肩を掴んで近くの茂みに引き摺り込んで行った。彼らはしばらく前から、遙か遠方の狙撃兵(スナイパースパルタン)に狙われていたのである。

「ノバシェードの狙撃か……! しかも、G-verⅥの装甲を一撃で貫通するほどの威力! どうやら彼ら、かなり強力な弾丸を使っているようだね……!」
「う、うぅっ……! あっ、はぁうっ……!」
「水見鳥! すぐ助けにっ……おい、離せ森里ッ!」
「……阿呆(あほう)、それが奴の狙いだと分からんのか。敢えて急所を外して救助の見込みがあると思わせ、お前のような単細胞を釣り出して始末する。ノバシェードの狙撃兵がよく使う手だ」
「しかも……僕達が今まで見て来た奴らとは比べ物にならない精度だね。恐らく、ノバシェードの戦闘員達にこの戦術を教えた張本人だよ。……はっきり言って、かなり手強い」
「な、なんだと……!? じゃあ、水見鳥をこのまま放ったらかしにするっていうのかよッ! 森里、幸路さんッ……!」

 茂みの中に身を潜めたGNドライブが冷静に前方を観察する中、呻き声を上げているG-verⅥの救助に向かおうとしているターボの肩を、タキオンがしっかりと捕まえていた。しかしターボは彼らの話を聞かされてもなお、苦悶の声を漏らすG-verⅥから目を離せずにいる。

「……本田。俺達はここに何をしに来た。全員でノバシェードに勝利し、生きて帰るために来たのではないのか?」
「……っ! だったら……!」
「正信、落ち着くんだ。……僕達は一度も、水見鳥君を見殺しにする……なんてことは言っていないよ」
「幸路さん……!?」

 慎重に前方を見渡しながら、GNドライブとタキオンは静かにターボを諭している。そんな彼の様子を、倒れたまま見つめていたG-verⅥは、か細い声を絞り出していた。

「……本田、巡査っ……! 私のことなら心配無用ですっ……! この程度の傷、自力で止血出来ますからっ……!」
「……! 水見鳥ッ!」
「あなたも……警察官なら、仮面ライダーならっ……決して、見失ってはなりませんっ……! ご自身の、為すべきことをっ……!」
「為すべき、こと……俺の……」

 茂みの陰からG-verⅥの姿に声を震わせるターボは、彼女の言葉を反芻しながら拳をギュッと握り締める。激情に任せていては、この戦いを制することは出来ない。そんなG-verⅥの訴えに心を動かされたのか、ターボはそれ以上声を荒げることなく、斜面の前方へと視線を移すのだった。

 ◆

(よし……仮面ライダーG-verⅥを最初に仕留められたのは大きいぞ。奴の火力でこの山林を焼き払われるようなことがあれば、俺の位置も簡単に炙り出されていたからな。最も恐るべき強者こそ、真っ先に始末せねばならない。後は……超加速能力(クロックアップ)を持っている仮面ライダータキオンだな。後は奴さえ倒してしまえば、残りの2人など容易く料理出来る)

 一方。初撃でG-verⅥの胸を撃ち抜いた後、じっくりと時間を掛けてターボ達の動向を観察していたホークアイザーは、コッキングレバーを引いて排莢と装填を済ませながら、次の標的であるタキオンへと狙いを定めようとしていた。ノバシェードを介して新世代ライダー達の能力情報を得ていたホークアイザーは、タキオンの脅威度も熟知していたのである。

(……特にあの仮面ライダーターボは、G-verⅥが狙撃された直後にかなり狼狽えていた。古今東西、ああいう直情的な馬鹿が1番狩りやすい。次の動きが簡単に読めるからな)

 それに対して、脅威となる能力や飛び道具を持っていないGNドライブやターボに対しては、歯牙にも掛けていない。ダイヤガンナーもシャフトブレイカーも、今の位置からでは全くの射程圏外。特に、感情任せな言動を見せたターボはホークアイザーにとって、最も恐るるに足りない「雑魚」なのだ。

(お前達の次の行動は分かっている。まずはGNドライブのエネルギー拳銃で牽制の弾幕を展開し、その間にタキオンが超加速能力でこちらに接近。加速能力にモノを言わせて奴が俺の位置を探っている隙に、ターボがG-verⅥを救助……といったところだろう。最も厄介なタキオンさえ仕留めてしまえば、後の連中など虱潰しに消して行けばいい。……いつまでもお前達に付き合ってはおれんのだ、さっさと終わらせてもらうぞ)

 最初の狙撃から、すでにかなりの時間が経過している。島の奥に潜入した真凛や、兵士達を蹴散らしていたオルバスも、この後すぐに追撃して仕留めなければならない。そんなホークアイザーとしては、いつまでもターボ達に手こずっているわけには行かない。
 その僅かな「焦り」が彼の胸中に滲んだ瞬間――彼の読み通り、茂みから飛び出したGNドライブがダイヤガンナーを連射し始めていた。長い膠着状態を打破するように現れた彼は、素早く地を転がりながら豪快にエネルギー弾を撃ち放つ。自分を狙ってみろ、と言わんばかりに。

「森里君、今だッ!」
「任せておけ、上福沢ッ!」
CLOCK(クロック) UP(アップ)!』

 ホークアイザーの狙いを撹乱するように乱れ飛ぶ、エネルギー弾の嵐。その混沌に乗じてベルトのスイッチに触れたタキオンが静寂を破り、閃光の如き疾さで山林の斜面を駆け上がって行く。
 だが、タキオンの加速はいつまでも続くものではない。制限時間内に狙撃手を見付けられなければ、撃たれに行くも同然の「博打」なのだ。

(どこだ、どこに居るッ……!)

 刻一刻とタイムリミットが迫る中、G-verⅥが撃たれた位置から遥か先の地点に辿り着いたタキオンは、懸命に周囲を見渡し狙撃手の位置を探る。相手は現役の狙撃兵であり、戦闘のプロ。如何にこちら側の能力が優れているとしても、簡単に勝てる相手ではない。

「……ッ!?」

 やがて、タイムリミットが残り2秒を切った瞬間。突如島の岸壁が崩壊し、激しい爆炎が噴き出して来る。今現在、要塞内部で繰り広げられているオルバスとミサイルスパルタンの激闘。その「余波」によって、島の岩壁が内側から吹き飛ばされていたのだ。

(……見付けたぞ。前方約450m、2本の木に挟まれた茂みの奥ッ!)

 島の外壁に開いた大穴から噴き出す、猛烈な炎。その獰猛な煌めきが、山林に潜む狙撃銃のスコープを照らし――ついにその反射光が、タキオンの目に留まる。咄嗟に全力で地を蹴ったタキオンは、弾丸の如き速さでホークアイザー目掛けて突進した。

(俺を見付けたか。だが……勝負を急ぐあまり、こちらに直進(・・)して来たのが不味かったな……!)
(……!? まさかこの狙撃手、超加速(クロックアップ)状態の俺が視えてッ……!)
(捉えたぞタキオン、お前の速さも見切ったァッ!)

 だが、ホークアイザーの左眼に秘められた超人的な動体視力は、人智を超えた速さに達したタキオンの動きすら把握していたのである。タキオンがホークアイザーを見付けた頃にはすでに、狙撃銃の引き金に指が掛かっていたのだ。
 しかもこの瞬間、タキオンはホークアイザーに殴り掛かろうと地を蹴って跳び上がっており、僅かに滞空している。これでは狙われていることに気付いても、左右に避け切ることが出来ない。

CLOCK(クロック) OVER(オーバー)!』
「うぐわぁあッ!」

 それでもタキオンは急所への被弾だけはかわそうと、強引に身体を捻るのだが――その瞬間、ついに「タイムリミット」が訪れてしまう。超加速(クロックアップ)状態の解除を報せる電子音声が響く瞬間、タキオンの脇腹が対怪人用強化弾に貫かれていた。
 
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