星河の覇皇
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第八十五部第一章 国防省への忠告その十七
「描かれている」
「それが普通ですね」
「敵国の政治家は醜く描くものだ」
「それが風刺画ですね」
「そうして留飲を下げる」
「我々もそうしていますね」
「エウロパの政治家や軍人、官僚でよく描かれる者はいない」
それこそというのだ。
「特に貴族ならだ」
「尚更ですね」
「そう描かれる、しかしだ」
「私は、ですか」
「少なくとも顔はありのまま描かれている」
「そうなのですか」
「カリカチュアされることなくな」
醜悪なそれを施されることなくだ、キロモトは言葉の中に八条の整った顔をという言葉をそのまま入れた。
「そうしてだ」
「描かれていてですか」
「そのうえでだ」
「エウロパにとって最強の敵とですか」
「言われている」
「そうなのですね」
「そしてだ」
そのうえでというのだ。
「君にな」
「エウロパは対していますね」
「そうだ」
まさにというのだ。
「そうしている」
「ありのまま描かれる強敵ですか」
「こうしたことは稀だ、二次大戦でもだ」
このお互いに醜悪に漫画化したこの戦争でもというのだ。
「そうした扱いを受けた者は稀だった」
「むしろそうした人物がいる」
「そのことが驚きだ」
「ではその人物は」
「マンシュタインだ」
キロモトはこの名前を出した。
「ドイツ軍のな」
「あの将軍ですか」
「元帥にもなったな」
「アルデンヌの森を機甲化部隊で突破し」
出来ないと言われたそれを果たしフランス軍のマジノ線を後ろから攻めてそれでフランスとの戦いを勝利に導いたのだ。
「東部戦線でも活躍した」
「セバストポリ要塞を陥落させたな」
「難攻不落と言われたあの要塞を」
「その名将位だった」
最強の敵と言われかつ醜悪に描かれなかった人物はというのだ。
「あの戦争ではな」
「お互いに醜悪に描いた戦争でしたが」
「それでもだ」
「マンシュタインは確かにです」
「名将だったな」
「ドイツ軍きっての知将と言われただけあって」
八条も彼のことを言う。
「確かにです」
「名将でありな」
「連合軍にとっては強敵でした」
「実にな」
「当時のドイツ軍は名将が揃っていました」
このことには定評がありこの時代でも言われていることだ。
「実に、そして」
「その中でもマンシュタインはな」
「特筆すべき人物でした」
「だから連合各国も醜悪に描かず」
「私もですか」
「同じ様にだ」
まさにというのだ。
「その様にだ」
「描かれていてですか」
「対されている」
「そうなのですね」
「人はあまりにも強い敵は認める、いや」
キロモトはこうも言った。
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