イベリス
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第百十七話 お巡りさんの名前その三
「どうもな」
「それでも他の国のお料理はですね」
「一杯あるよ、タウナギだってな」
この魚もというのだ。
「食えたしな」
「タウナギですか」
「あれも食えてな」
「確か中国では食べるんですよね」
「台湾でもな」
「そうなんですね」
「それで歌舞伎町でもな」
こちらでもというのだ。
「食えるんだよ」
「そうしたお店があるんですね」
「本当に色々な国のものが食えるんだよ」
歌舞伎町ではというのだ。
「遊ぶ場所も一杯あってな」
「だから楽しいんですね」
「そうだよ」
「そうですか」
「行くこと自体はいいけれどな」
「注意することですね」
「そうだ、あそこはな」
歌舞伎町はというのだ。
「そうした場所だってな」
「知っておくことですね」
「そうだよ、行く前にな」
「今からでもですね」
「そうだよ、いいな」
「そうします」
咲も約束した。
「私も」
「ああ、大人になるまでも色々知ってな」
マスターはさらに言った。
「なってからもな」
「色々と知ることですね」
「人間大人になって終わりじゃないからな」
「大人になってからもですね」
「色々勉強してな」
「知らないと駄目ですね」
「ああ、何か解脱もそうらしいしな」
咲にこうも話した。
「解脱してもまだ先があるそうなんだよ」
「それで終わりじゃないんですか」
「仏教の目的は解脱だからな」
悟りを開いてだ、釈迦もまたそれに至った。
「それに達したら終わりだって思うだろ」
「そうですね」
咲はマスターに考える顔になって答えた、内心解脱に至ることは何よりも難しいことではと考えていた。
「それで」
「それがな」
「違うんですか」
「解脱してもな」
仏教の目的を果たしてもというのだ。
「まだま」
「先があって」
「そこから修行を重ねてな」
解脱してからもというのだ。
「もっとだよ」
「凄くなるんですね」
「そう言われてな」
マスターはさらに話した。
「俺も最初は嘘だろうと思ったさ」
「そうですよね」
「けれどな」
それでもというのだ。
「弥勒菩薩なんかそうだろ」
「あの仏さんですか」
「五十六億七千万年後に全ての命を救う」
「その仏さんだってな」
「解脱して」
「その為にな」
この世の全ての命を救う為にというのだ。
「ずっと修行してるんだよ」
「解脱して終わりなら」
「もうすぐにな」
五十六億七千万年後でなくというのだ。
「救えるだろ」
「そうですね」
咲もそれはと頷いた。
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