| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ハッピークローバー

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第九十五話 蚊に刺されないことその十四

「それでね」
「遂にでしたね」
「義経さんも義仲さんも殺して」
「まさに皆殺しで」
「遂にはね」
 それこそというのだ。
「誰もいなくなったでしょ」
「そうでしたね」
「そうなったからね」
「無駄に命を奪って」
「そうなったから」
 だからだというのだ。
「そういうの見てもね」
「無駄にですね」
「命は奪うものじゃないわ」
「蚊でもですね」
「頼朝さん自身評判悪いしね」
「好きな人少ないですね」
「そうでしょ」
 こうかな恵に言った。
「あの人は」
「日本の歴史でも相当人気ない人ですね」
「義経さん殺したし」
「他にも色々な人殺して」
「冷酷ってイメージあるから」
 それが完全に定着しているのだ。
「それで実際にね」
「冷酷ですよね」
「どう見てもね」
「だから人気がなくて」
「それでね」
 そのうえでというのだ。
「源氏自体もね」
「誰もいなくなりましたね」
「そうよ、だからね」
「無駄に命を奪わないことですね」
「若しかしたら」
 先生はかな恵にこうも言った。
「生まれ変わってね」
「蚊になるかも知れないですね」
「生まれ変わるとその時の行いでね」
「生まれ変わる先が変わりますね」
 かな恵も仏教の考えから答えた。
「そうですね」
「そうでしょ」
「はい、人に生まれ変わる場合もあれば」
 生前の行い即ち徳によってだ。
「天国に行ったり」
「地獄に落ちたりね」
「しますね」
「それで人間以外の生きものにもね」
「生まれ変わりますね」
「だから前世は人間でも」
 そうであってもというのだ。
「蚊に生まれ変わることもね」
「ありますね」
「そう思ったらわかるでしょ」
「はい、蚊でもです」
 例え厄介な害虫であってもというのだ。
「無闇には」
「命は奪っていいか」
「そうはならないですね」
「だからね」
 それでというのだ。
「蚊でもね」
「殺しても」
「それは最低限でね」
 自分の身を守る位でというのだ。
「好き好んでね」
「殺すものじゃないですね」
「そうよ、蚊に刺さられないに越したことはないけれど」
「無駄にですね」
「殺生はしないことよ」
「そのことも大事ですね」
「命を大事にしたら」
 そうすればとだ、先生はさらに話した。
「その分幸せになれるわよ」
「幸せにですか」
「そうするだけで心が優しくなれるから」
「だからですか」
「そう、命を大事にしてね」
「そうしてですね」
「幸せになるのよ」
 こう言うのだった。
「いいわね」
「わかりました」
 かな恵はその言葉をありのまま聞いてありのまま頷いた、そうすることが実際にいいと内心確信したからだ。
 それでだ、こう言うのだった。
「そうしていきます」
「蚊に限らずね」
「他の生きものの命もですね」
「大事にすることよ」
「そうすればですね」
「そのことからも幸せになれるわよ」
 笑顔で言う先生だった、かな恵はその言葉にも頷いた。そうして命を大事にすることからも幸せになろうと誓ったのだった。


第九十五話   完


                   2023・7・23 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧