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イベリス

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第百十六話 交番に寄ってその十一

「酷過ぎて」
「じゃあ餓鬼ですか」
 咲はついこの存在の名前を出した。
「それなら」
「ああ、仏教の」
「餓鬼道にいる」
「そうね、それにね」
「なりますね」
「もう死んでもね」
「餓鬼になりますね」
 咲はさらに言った。
「死んだら身体も」
「それで住んでる世界もね」
「餓鬼道に堕ちて」
「そしてね」
 そのうえでというのだ。
「ずっと苦しむわ」
「そうなりますね」
「浅ましい人は餓鬼になって」
「ずっと苦しむんですね」
「物凄く性格と行いが悪いと」
 そうした輩も世の中にはいる、世の中色々な人がいるという言葉はこうした輩にも当てはまることであるのだ。
「餓鬼になるのね」
「何かそう考えたら」 
 それならとだ、咲は言った。
「布施餓鬼とかしたくないですね」
「別にしなくてないでしょ」
 あっさりとだ、先輩は咲に答えた。
「そんなのね」
「しなくていいですか」
「そんな人身近にいたら嫌うでしょ」
「絶対にそうなりますね」
「誰でもね、そんな嫌な奴が死んで餓鬼になって」
 身体それに住んでいる世界までそうなってというのだ。
「助けたいか」
「そうはならないですね」
「かなり心が広い人でも」
 それでもというのだ。
「まずね」
「それはないですね」
「そうでしょ」 
 まさにというのだ。
「だからね」
「しなくていいんですね」
「どうせそんな奴は感謝もしないし」
 そうであるからだというのだ。
「もうね」
「布施餓鬼はですね」
「しないで」
 それでというのだ。
「苦しむままによ」
「させることですね」
「どうせ人間の世界にいた時も」
 その頃もというのだ。
「そうした奴は人助けなんてよ」
「しなかったですね」
「たかったりせびったりするだけで」
「助けることなんかしないで」
「こすいことばかりしてね」 
 そのうえでというのだ。
「生きていたから」
「布施餓鬼で助けることは」
「しなくていいわ、勿論今だってね」
「人間の身体でいる間も」
「助けることはね」
「しなくていいですね」
「どうせ助けてもね」 
 そうしてもというのだ。
「感謝しないで不平不満をね」
「言うだけですか」
「それも他の人が聞いたらどうでもいい様な」
「そうしたことをですか」
「言ってね」
 先輩はさらに話した。 
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