インフィニット・ストラトス~黒き守護者~
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篠ノ之束の特徴
「混乱させるために言うわけではないが、束はどこかおかしいところがある。それ故に周りを見下していることもあり、まともに話す人間でわかっているのは私と一夏、そして自分の妹の箒だけだ」
「それって、つまりはお気に入りってことでいいんですよね?」
「そうだ」
「でも、篠ノ之箒はあまり好いていないように見えましたけど?」
何気なく質問をぶつけると、千冬さんは少し顔を歪ませた。
「……これはおそらくだが、箒にとって大事な何かを壊されたんだろうな」
「それ、もしかして一夏関係ですかね?」
「おそらくな。私の記憶が正しければあの二人が離れる前には既に惚れていただろうしな」
そんなに前から惚れているのか………。
「でも、その時何があったんですか?」
「当時は束が失踪したんだ………」
「唯一コアを作れる人間が逃走したら、そりゃ政府が保護するでしょうね」
実際は監視だろうな……。
「要人保護プログラム―――はあまり―――」
「それを盾に政府が監視―――そして妹である篠ノ之箒に無理やり情報を聞き出そうとしていたんでしょうね。まぁ、コアを作れる人間が重要だからってやることは相変わらず酷いな。……ん? “相変わらず”?」
何だ? 俺は何で相変わらずだって知っていたんだ?
「………後は、話さなくてもわかるな?」
「ええ。だとしたら篠ノ之束と直接話したいって気もしますね……」
「何故だ?」
千冬さんの眼光が鋭くなった。
「……まぁ、これは俺の予想なんですけど、おそらく博士は愛しの妹のために構成能なISを作ってくるでしょうね。しかも、各国の火種となるような物を」
「何故そうと言い切れる?」
「大切な妹のためだと思いますよ。それに、周りを見下す人間だと周りを考えてなさそうですし……」
「でもこれはあくまで俺の予想ですけど」と付け足しておく。
「―――で、だ。そこまで予想しているから篠ノ之も強くするのか?」
「まぁ、それもありますけど。篠ノ之箒は―――武道を嗜んでいる割には精神が危ういんですよ」
■■■
翌日。午前5時。俺は一夏と篠ノ之の部屋に忍び込んでいた。
「………何をしている」
俺に気づいたのか、篠ノ之が声をかけてくる。
「ん? 雑魚二人を鍛えに来ました」
「ざ、雑魚だと!? 自慢する気はないが、これでも私は剣道の全国大会で優勝はしているぞ!!」
「それでも織斑先生に比べたら……雑魚でしょ?」
「そ、それはそうだが……」
「まぁ、何であれ、お前は立場があるからな」
「……それはやはり、姉さんの妹ということか?」
「俺個人としてはだからといって利用する気はないが、各国はそうは思ってないからな。少しでも鍛えて実戦で力を発揮できればいいと思っている。―――ということで、起きろ」
俺は肘で一夏を起こした。
二人の準備ができ、俺たち三人はIS学園の敷地内を走っている。
「……って、何で俺たちは朝から走っているんだ……?」
「実験動物になりたいというのなら別に構わないが?」
「すみません。頑張ります」
そしてランニングを終え、昨日の復習と称して一夏に木刀を持たせて俺に一撃入れさせるように特訓させている。
「……何で祐人はそんなに強いんだよ……」
「まぁ、実戦を数多くこなしたからな」
あえてどんなのかは言わないが。
ちなみに篠ノ之は二、三振りさせた後、心を落ち着かせている。最初は反抗したが、焦るのは禁物だからだ。
「太刀は己を映す鏡。俺は剣を扱うが全て我流だからゲテモノとか言うかもしれないが、お前が焦っていることぐらいわかるぞ」
そう言ってさせているが、少しばかり平常心を保てていないな。
「さて、もう6時だな。授業には遅れるなよ~」
床に倒れ伏す二人を見ながらそう言って俺は寮に戻る。
あの後二人まとめて相手にし、返り討ちに合わせたのだ。
■■■
一夏に専用機が用意されるらしい。
それが知らされた後、オルコットが早速突っかかってきた、が―――
「一夏、篠ノ之、行くぞ!」
「ああ」
「待ちなさい! まだわたくしの話は―――」
それでも一夏は無視して俺たちと合流した。
「だが、どうして風宮は私と一夏を鍛えるんだ?」
「え? 暇だからだけど?」
「って、おい! 俺たちは暇潰しの道具かよ!」
「そう思われたくないのなら、さっさと上達しな。まぁ、当分無理だろうけど」
俺はそう言って挑発し、
「……お前ってさ、学習能力ないだろ」
放課後、俺は一夏を倒していた。篠ノ之は剣道部だ。
さっきまで一夏に今朝と同じことをさせていたのだが、まったくと言っていいほど俺に攻撃できてなかった。
「だから、祐人が強すぎるんだよ………」
「織斑先生を相手にするよりマシだろ……」
これでもまだ、本気を出してないんだけどな。
そう思いながら俺は木刀を拾った。
今日はもう遅い。夕食に間に合うことができないだろうから。明日からは午後は篠ノ之から訓練を受けることになっている。その理由は簡単。俺の実力にまったくと言っていいほど追いついていないからだ。
「まぁ、朝のランニングだけは自分でしろよ。俺は起こしに行かないからな」
「お、おう……」
それだけ伝えて、俺は第二アリーナに向かった。
そこは今日は珍しく誰も借りていないからだ。
(さてと………)
悪魔が羽ばたくイメージでディアンルグを展開し、改めてステータスを確認した。
(それにしても、すごいな………)
武装の数は少ない方だが、武器がなくても装甲に武装が付いている。
(まぁ、いいか。今は―――潰すか)
200近くいる標的を前に、俺は心が踊った。
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