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イベリス

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第百十五話 知りたいことその九

「蜘蛛の巣も張ってるさ」
「そこまでなりますか」
「ああ、だからな」
「そうならない為にも」
「書けるうちにな」
 その間にというのだ。
「書かないとな」
「駄目ですね」
「人間何があるかわからないしな」
 このこともまた言うのだった。
「本当にな」
「書けるうちにですね」
「漫画だってな」
 こちらもというのだ。
「本当にだよ」
「描けるうちにですか」
「相手だよ」
 そうしてというのだ。
「終わらせないとだよ」
「駄目ですか」
「中には遅い人もいるさ」
 その執筆がというのだ。
「そこは人それぞれだよ、けれどな」
「ずっとさぼってですね」
「書かないのはな」
 これはというのだ。
「本当にな」
「駄目ですね」
「ああ」
 実際にというのだ。
「作家さんとしてな」
「作品は書けるうちに書いて」
「そしてだよ」
「終わらせることですね」
「それが一番だよ」
「二十年も放置は」
「何やってるんだってな」
 その様にというのだ。
「俺としてはな」
「なりますか」
「ああ」
 こう言うのだった。
「本当にな」
「そうですか」
「読む方だって嫌だろ」
「そうですね」
 咲も否定しなかった。
「本当に」
「だからな」
「作品はですね」
「もうな」
「書けるうちに書いて」
「そしてな」
「終わらせることですね」
 咲も言った。
「それで読んでもらう」
「それで未完はな」
 放置した結果というのだ。
「もうな」
「最悪ですか」
「そうだろ」
「ですね」
 また否定しなかった。
「それは」
「読む方もな」
「もう書くなら」
「最後までな」
「書いてもらって」
「それで読みたいな」
「最後まで」
 まさにというのだ。
「そう思います」
「それが読者でな、そしてな」
「そして?」
「完結までさせてな」
 そしてというのだ。
「本物だろ」
「本物ですか」
「作品だけじゃなくな」
 咲に対して話した。
「作家さんもな」
「本物なんですね」
「そうだろ」
「完結させることですか」
「ああ、絵だってな」
 こちらもというのだ。
「完成させないと見ても何かって思うだろ」
「絵だとわかりやすいですね」 
 咲は実際にこう感じた。
「言われてみますと」
「そうだろ」
「はい、それこそ」
 こうマスターに言うのだった。
「何でもないですね」
「そういうことだよ、料理それこそコーヒーだってな」
 マスターは自分が作って売っているものの話もした。 
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