ハッピークローバー
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第九十三話 最悪の日その十三
「行きなさいね」
「そうするわね」
「それに今あんたの機嫌がよくなるニュースが入ったわ」
姉はジブンノスマートフォンを観つつ妹に言った。
「聞きたい?」
「何かあったの?」
「巨人負けたわ」
これが機嫌がよくなるニュースだというのだ。
「そうなったわ」
「いつも通りそうなったのね」
「横浜相手に二十七点取られてね」
そうしてというのだ。
「三振二十取られてノーヒットノーランでね」
「ああ、それはいい負け方ね」
「これで完封負け四十でね」
そのシーズンでというのだ。
「ノーヒットノーラン二度目よ」
「大記録ね」
「機嫌よくなったでしょ」
「なったわ」
富美子は姉に笑顔で答えた。
「よかったわ」
「いや、本当に弱いわね巨人」
姉も笑顔で言った。
「ちなみに八月勝ったの一度だけだし」
「後は全敗ね」
「そうだしね」
「いや、巨人が弱いと」
富美子は満面の笑みで言った。
「それだけで嬉しいわね」
「そうでしょ」
「巨人はね」
邪悪に満ちたこのチームはというのだ。
「やっぱりね」
「負けてこそいいでしょ」
「勝ったら駄目で」
それだけで不愉快になるというのだ。
「負けてこそね」
「気分がよくなるわね」
「あれだけ負けてざまみろって思えるチームはないわ」
富美子は笑って言った。
「本当にね」
「私もそう思うわ」
姉も同感だった。
「あんな昔の栄光ばかり言ってね」
「悪いことしかしないチームはね」
「負けてこそよ」
「いいわよね」
「巨人には無様な負けがよく似合うってね」
妹にこうも言った。
「言うしね」
「その通りね」
「だからよ」
「巨人はもっと負けるべきよね」
「負けて負けて」
そうしてというのだ。
「今年も百二十敗して欲しいわね」
「それで阪神優勝よね」
「今年も絶好調だしね」
対する阪神の方はというのだ。
「それじゃあね」
「また優勝ね」
「そうなるわ、巨人が最下位でね」
「それがあるべき姿よね」
「全くよ、巨人はこれからも負けて欲しいわ」
「本当にね、じゃあ機嫌もよくなったし」
富美子は姉に笑って述べた。
「今日はもう寝て明日はね」
「じっくり休んで」
「明後日からね」
「学校に行くわ」
こう言うのだった、そして富美子も他の四人も夏休み最後の日はじっくりと休んだ。そうして二学期を迎えるのだった。
第九十三話 完
2023・7・7
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