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イベリス

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第百十三話 本格的な秋その十四

「そう言うけれど」
「そんな人はね」
「もう生きているだけでね」
「迷惑よね」
「社会にとってね」
「そんな人に生活保護のお金がいくだけで」 
 まさにそれだけでだ。
「迷惑よね」
「社会にとってね」
「いや、この作品読んだ時に何も思わなかったのよ」
 咲は同級生に話した。
「けれどね」
「今はそう思うのね」
「生きているだけでいいのは」
 それはというと。
「少なくとも人間としてね」
「最低限の人よね」
「まあ太宰も大概だったけれどね」
 その人生はだ。
「けれどその作品が多くの人の糧になってるし」
「貢献はしてるわね」
「私も太宰嫌いじゃないしね」 
 咲自身もというのだ。
「そうだしね」
「太宰は太宰で人の役に立ってるわね」
「心中とかもしたけれど」
 三回程していて死ぬまでに二人犠牲にしている。
「けれどね」
「人の役にはね」
「作品で貢献しているから」
 だからだというのだ。
「まだね」
「ましよね」
「今お話している人と比べたら」
「そうね、というかそんな人は生きているだけでいいんじゃなくて」
「生きているだけで害になる」
「害にしかならない」
「そんな人ね」
 こう同級生に話した。
「もう」
「何かどうでもいい高校出てそれから殆どニートで」
「失業保険貰うだけで」
「奥さんに食べさせてもらって」
「そんなのでふんぞり返って思いやりもなくて文句ばかりで恩知らずで」
「図々しくて反省もしない誰も助けたことがないって」
「いいとことないわね」
「私こうはなりたくないわ」 
 咲は今心から思った。
「何の為に生きてきたか」
「そう言っていいわね」
「寄生虫にしか思えないから」
「私もそうした人にはね」
「なりたくないでしょ」
「絶対にね」
 それこそというのだ。
「何があっても」
「そうね、しかし」
「しかし?」
「この人は生きていてずっと何の努力もしてこなかったから」
「そうなったのね」
「だったら」
 咲は強い声で言った。
「努力していったらね」
「そうした人にはならないのね」
「そういうことでじゃないかしら」
「努力ね」
「それをしていって」
 そうしてというのだ。 
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