神々の塔
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第三十二話 荒野の蛇その三
「カンガルーはオーストラリアを象徴する生きものでな」
「マスコットや」
「随分攻撃的やな」
「蛇よりもな」
「すぐ殴って蹴って来るな」
「そや」
シェリルも否定しなかった。
「あれでや」
「バトる生きものやな」
「そやから下手に近寄るとな」
「殴って蹴られるな」
「外見は可愛いけどな」
それでもというのだ。
「実はや」
「そうした生きものでやな」
「迂闊に近寄ったらあかん」
「そやな」
「奈良の鹿みたいなもんや」
シェリルはこうも言った。
「言うならな」
「あれやな」
「ああ、奈良の鹿言うたらな」
「この世界でもな」
「平城京のマスコットであって」
そしてというのだ。
「ならず者達やろ」
「好き放題やるな」
芥川はその通りだと答えた。
「とんでもない連中や」
「そやな」
「いや、あの鹿はこっちの世界でも酷いわね」
アレンカールもやれやれといった顔で語った、肩を竦めてもいる。
「春日大社の神様の使いってことで」
「ほんま傍若無人やな」
「公園で我がもの顔でくつろいでいてね」
人なぞ全く恐れずにだ。
「人のお弁当も雑誌も襲って食べて」
「煎餅で我慢せんとな」
「もう何でも食べて」
「お弁当のお肉までな」
「ちょっとからかったら隙を見て仕返しするし」
「頭突きや前足で蹴って」
「そうした困った子達なのよね」
やれやれといった顔のままで言うのだった、尚この世界でも平城京の民達からは露骨に厄介者扱いされている。
「あの子達は」
「それでや」
「カンガルーもなのね」
「オーストラリアではな」
「厄介者なのね」
「変に頭もええしな」
純粋に頭がいいのではないというのだ。
「悪食で狂暴で」
「まさに平城京の鹿ね」
「そや、しかも大陸全体におる」
平城京の鹿達は奈良の街にしかいないがだ。
「ほんまにな」
「厄介な連中ってことやな」
「そや」
中里にも答えた。
「マスコットであると共にな」
「そんな連中やな」
「そや、しかし変なゆるキャラにはなってへん」
オーストラリアのカンガルー達はというのだ。
「起きた世界の奈良に取り憑いてるな」
「あの四人がめっちゃ嫌ってるか」
瑠璃子、紗枝、雅美、由香の四人がというのだ。十星連合の星の者達きっての不真面目でいい加減な四人として知られている。
「あのマスコットやな」
「それも奈良県公認のな」
「県庁で正式に就職してるな」
「あんなマスコットはおらんわ」
オーストラリアにはというのだ。
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