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神々の塔

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第三十一話 天平の宴の後でその十

「そうだった」
「そうでしたね」
「私も好きだ、とはいってもな」
「といいますと」
「いや、万葉集の頃は蒲焼きはなくてな」
「今とはですね」
「また違う食べ方をしていた」
 そうした料理だったというのだ。
「そうだった、尚神界では私もだ」
「あっ、蒲焼き食べてますね」
「そうしている」
 綾乃にこう話した。
「そして蒲焼きを食べながらな」
「お酒ですね」
「それを楽しんでいる、濁れる酒を飲むのもな」
 濁酒をというのだ。
「またよい、清酒もいいが馴染みがあるからな」
「濁酒飲まれてますか」
「そうしている、そしてだ」
 さらに言うのだった。
「今からな」
「はい、戦ですね」
「それを行おう、私は歌人であるが」
 それでもというのだ。
「この度はな」
「戦われますね」
「そうする、ここにいる者達も同じだ」
 見れば他の神霊達もいる、皆奈良時代の日本の歴史上の人物だ。飛鳥時代後期の面々もそこにはいる。
「そなた達と戦いだ」
「試練をですね」
「与えてな」
 そうしてというのだ。
「そのうえでだ」
「うち等はそれを乗り越えることですね」
「そうするのだ、いいな」
「はい、それではです」
「今から戦うぞ」
「そうするぞ」
 こう話してだった。
 一行は奈良時代の日本の歴史上の人物との戦に入った、今回の神霊は和歌を詠う者が多かったが行基はというと。 
 僧侶の術をよく使った、それで中里は言った。
「流石やな」
「行基菩薩さんだったわね」
 隣にいるアレンカールが応えた。
「この方は」
「ああ、そう呼ばれてたわ」
 中里は構えを取りつつアレンカールに答えた。見れば二刀流の構えである。
「あまりにも徳があってな」
「人を教え導いたから」
「それでや」
「そこまで呼ばれていたわね」
「そやった」
「勿体ないことです」
 行基は二人の話に謙遜して述べた。
「拙僧等を菩薩というのは」
「いや、ほんまです」
 中里はその行基にも話した。
「貴方はそこまでの徳がおありなので」
「そう言って頂けるのですね」
「そうです」
「有り難いことです」 
 行基は中里の言葉を受けて目を閉じ手を合わせて述べた。
「それはまた」
「そしてその貴方と」
「この度はですね」
「戦っていますか」
「これも試練です。どうかこの世界を救う為に」
「貴方もですね」
「乗り越えて下さい」
 優しい声であった、戦っている相手にも。行基は一向に穏やかな目を向けてその上で微笑んでさらに言った。
「どうかお願いします」
「はい、そうさせてもらいます」
「是非共」
 中里の言葉を受けてだった。 
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