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神々の塔

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第三十一話 天平の宴の後でその八

「そやけどな」
「後は継がれてるか」
「そうなってるわ」
「それはよかったな」
「それでこの鰻丼をやな」 
 中里は実際に食べつつ言った。
「織田作さんも食べてたんやな」
「ああ、自由軒のカレーとかな」
「夫婦善哉とかやな」
「そのまま小説のタイトルになったやろ」
 夫婦善哉はとだ、中里に話した。
「そやな」
「そやったな、あのお店は」
「あそこに行ってな」
 そうしてというのだ。
「織田作さんはな」
「食べてたんやな」
「あの辺り巡ってな」 
 その足でというのだ。
「そうしてたんや」
「そやったんやな」
「あの辺りを食べ歩いて」
 千日前や船場の辺りをというのだ。
「楽しんではったんや」
「そやったな」
「昭和の頃にな」
「二次大戦前やな」
「ああ、あと二次大戦が終わってすぐの頃もな」
 その頃の大阪のことも書いている、世相という作品であるが闇市の状況等も細かく描写されて語られている。
「書いてるわ」
「亡くなる前までやな」
「昭和二十二年一月十日やったな」
 中里は寂しそうに語った。
「あの人が亡くなったんわ」
「まさに戦争が終わってちょっとしたらやな」
「そや、結核でな」 
 三十四歳の若さで亡くなった。
「残念やけどな」
「そやったか」
「そやけど兎角大阪が好きでな」 
 生まれ育ったこの街を心から愛していたのだ。
「それでな」
「この鰻丼もやな」
「食べててな」
「大好きやってんな」
「そやった、それで僕等もな」
「その鰻丼を食べてやな」
「ゆっくり休んでな」
 寝て気力と体力を回復させてというのだ。
「戦おうな」
「今度の神霊さん達とも」
「そうしよな」
「ああ、鰻は身体にええ」
 リーは確かな声で答えた。
「まさに戦の前に食べるにはな」
「最適やな」
「その通りや、ほなな」
「僕等はな」
「今は鰻丼をな」
「腹一杯食おうな」
「おかわりや」
 施は笑って言った。
「特盛をな」
「我もや」
 羅も言ってきた。
「おかわりするで」
「いや、鰻はやっぱり鰻丼やな」
 トウェインも思うことだった。
「一番は」
「色々世界中に鰻料理あるけどな」
 メルヴィルも言った。
「鰻丼はほんま美味いわ」
「それを食べような、お吸いものもあるし」 
 シェリルは肝吸いも見つつ話した、見れば十人それぞれに鰻丼だけでなくその肝吸いまで用意されている。 
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