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イベリス

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第百十二話 九月が進みその六

「アンチ巨人が巨人ばかり観て楽しいか」
「自分のチームの試合観たいわね」
「それが出来るからな」
「皆ネットに流れるのね」
「そうだ、もうテレビはな」
「どうでもいいものね」
「昔テレビを観ると頭が悪くなるって言われたがな」
 父は苦い顔でこの言葉も出した。
「本当にな」
「その通りね」
「そうだな」
 まさにというのだ。
「本当にな」
「碌な番組やっていないから」
「そんなのばかり観ているとな」
「頭が悪くなるのね」
「そういうことだな」
「じゃあネットね」 
 やはりとだ、咲は述べた。
「観るのは」
「お父さんもそうだしな」
「お母さんもよね」
「母さんもな」 
 実際にというのだ。
「最近じゃ主に観るのはな」
「ネットなのね」
「もうな」
「うちは皆なのね」
「だからそれだけな」
「今のテレビが駄目ってことね」
「昔マスコミは嘘を吐かないって言われてたんだ」
 そんな『神話』が存在していたのだ。
「そんなの誰が信じるんだ」
「今はね」
「むしろ平気でな」
「嘘吐くわね」
「嘘吐いても責任取らなくていいしな」
 マスコミはというのだ。
「最悪わざとでも間違えていましたでな」
「終わりね」
「嘘吐きは信用するな」
 父はこうも言った。
「常識だろ」
「そうよね」
 咲も否定しなかった。
「本当に」
「だからな」 
 このこともあってというのだ。
「余計にな」
「皆テレビ観ないのね」
「新聞や雑誌も嘘を吐くけれどな」
「テレビは特になのね」
「酷いんだ」
 こう娘に話した。
「それだとな」
「観ない方がよくて」
「ネットをな」
「そうなるのね」
「ああ、今はな」
「それじゃあ私もね」
「そうしていくといい、面白くてな」
「ためにもなるし」
「あくまでその登録者さんによるけれどな」
 その投稿の質を見極める必要があるがというのだ。
「けれどテレビみたいに一方的じゃなくてな」
「選ぶことも出来るから」
「いいんだ、巨人の試合しかないんじゃないんだ」
 テレビがそうである様にというのだ。
「インターネットでヤクルトの試合を観られるんだ」
「じゃあそっち視聴すればいいわね」
「そうだ、まあ巨人は弱いからな」
 今はとだ、父は笑って話した。
「負ける姿観たいならな」
「それでもいいわね」
「巨人の試合を観てもな」
 テレビでとだ、父は最後は冗談で閉めた。父とこうした話をした翌日咲はまた学校帰りはアルバイトであったが。
 ふとだ、店で速水に言われた。
「いいお顔ですね」
「そうですか?」
「ええ、とても」
 こう言うのだった。
「素敵な笑顔です」
「そうですか」
「いいことがあったのですね」
 速水はこうも言った。 
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