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Fate/magic girl-錬鉄の弓兵と魔法少女-

作者:セリカ
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無印編
  第十二話 それぞれの思いと平和な日常

 家に戻り、工房でもある鍛冶場に子供が持つには大きいアタッシュケースを開けて中身を取り出し確認する。

「ちゃんと揃っているな」

 次に聖骸布に包まれたジュエルシードを取り出す。
 武器ではないモノの解析でどこまで理解できるかわからないが、やってみなければ始まらない。
 意気込んでジュエルシードの解析を試みるものの

「……ほとんどわからないか」

 わかったことといえば力が多少不安定だが凄まじい魔力を秘めているという程度だ。
 やはり剣や剣の類ではないので俺では解析をしきれない。
 だがこれは直感、いや本能的といっていいだろう。

「聖杯に似ている感じがするな」

 どこが似ているかといわれれば、自分でも首を傾げるだろう。
 だがジェルシードを見ていると聖杯を思い出すのだ。

 無論聖杯に比べれば秘めた魔力は少ない。
 しかしジュエルシードは複数存在するのだ。
 いくつあるかは知らないが、複数集まれば聖杯以上の魔力が解き放たれることだってあり得る。
 そうなればどれだけの被害が出るかわかったものではない。
 今の俺ではこれぐらいしかわからない。

 わからないことだらけだが、危険なのは確かな事だ。

 忍さんに早急に銃を用意してもらったのは正解だったな。

 最初は銃の依頼に不審そうな顔をしたが
 「海鳴の地で魔力を感知した。何者かが動いている可能性がある」
 と伝えたらすぐに手をまわしてくれた。

「明日休んでも準備をしておくべきか」

 先ほどアタッシュケースから取り出したモノに手を伸ばす。
 そこにあるのは銀の銃。
 それを手に握る。
 『タウルス レイジングブル』
 忍さんに依頼して用意してもらった拳銃の一つ。
 それと使用する454カスール弾が50発。

 グリップが大きいという事で一回り小さい木製の物に変えてもらっているが、それでも大きい。
 だが俺なら十分扱えるだろう。
 銀の銃を置き、もう一つ。

 小さな子供の手にも手頃なサイズの黒の銃を握り構える。
 『Glock 26』
 その弾の9mmパラベラム弾が100発
 普段から隠し持つ事も十分に可能なサイズに満足する。

 他に念入りに密封された火薬に弾頭の型。
 そして、弾頭を薬莢に装着するための手動の小型プレス機などなどがずらりと並ぶ。
 
「さて、始めるか」

 弾頭を外し、火薬を取り出す。
 その後、弾頭は炉で宝石と共に加熱して溶かし液体にする。
 そして、弾頭の型に流し込み弾頭を精製する。
 火薬は粉末にした宝石と追加で火薬を加えよく混ぜ合わせる。
 完成した火薬を薬莢に戻し、小型プレス機で弾頭を装着していく。
 これで魔弾の完成。
 普通に引き金を引いても魔力が込めれた弾丸であるが、引き金を引く前に魔力を銃に流せばさらに魔力量が上がるモノだ。
 元の世界でも魔術の秘匿目的でこの魔弾を使用した銃を使ったことがあるので威力は保証できる。

 ちなみにこの魔弾を撃つ際はかなり強度を増した銃でないと銃の方が持たないのだ。
 なにせ火薬量を増やした強装弾に魔力でさらに威力を上げているだから仕方がない。
 もっとも今回の二丁は忍さんに頼んで強度強化などの特注品なのでそれの心配もない。

 俺はもくもくと魔弾を作り続ける。

 自分が目指す先はまだ見えない。

 それでも後悔はしたくないから。

 俺は武器を取るのを躊躇わない。




side なのは

 部屋に戻ってベットに腰かける。
 思い出されるのは今日の事。

「ユーノ君、なんであの子はジュエルシードをほしがったのかな?」
「あの子って、アーチャーの事? それともフェイトって呼ばれてたあの子?」
「う~ん、両方かな」

 私の言葉にユーノ君は少し瞳を閉じて唸っている。
 たぶん私にわかりやすいように説明を考えているんだと思う。

「う~ん、現状じゃわかってることも少ないからなんでほしがったのかは分からない。
 でもあの女の子は使い魔も連れていたし、かなりの魔導師のはずだよ。
 さすがに理由までは……」
「そっか」

 ユーノ君ならって思ったんだけど、さすがにわかんないか。

「だけどアーチャーに関しては……僕の予想だと現状の可能性は二つかな。
 一つは単純に自分の領域に入った邪魔なモノを排除するため。
 もう一つは自分の欲望や目的のためにジュエルシードを使うため」

 ユーノ君の二つ目の意見はないんじゃないかと思う。
 初めてビルの屋上で会った時もそんな仕草は見せなかった。
 それに明確な理由は出せないけど、アーチャーさんが自分のためにジュエルシードを使うという事が想像できなかった。

 アーチャーさんの目的が海鳴市にあるジュエルシードの回収がなら協力できたりは出来ないのかな?

「ユーノ君、アーチャーさんに手伝ってもらう事って出来ないかな?」

 私としてはかなりいい案だと思ったんだけどユーノ君はなんか不安そうな顔をしてる。

「正直難しい気がする。
 なのははともかく僕はアーチャーにとっては異物を持ち込んだ侵入者と同じだし」
「……そっか」

 アーチャーさんの事も、フェイトちゃんの事も何も知らないんだよね。
 二人とも不思議と怖いとかは感じなくて
 でも……なんだか寂しそうで、悲しそうで

 ぶつかっちゃうのは嫌だけど

 また会って、少しでも話をしてみたい

 ただそんな気持ちだった。




side フェイト

 今日はジュエルシードを手に入れることが出来なかった。
 立ちはだかったのは二人。
 白い子と赤い外套に髑髏の仮面をつけた子。
 白い子はまだ戦えば勝てると思う。
 だけどあの赤い子に勝つのは難しい。

「……そんなレベルじゃない」

 首を振って自分の分析を否定する。
 戦いなれた動き。
 アルフを完全に拘束してみせた光る紐。
 それにアークセイバーを掻き消した赤い槍。
 ジュエルシードを簡単に取り出した歪な短剣。
 ありえないとしか言えない武器。
 まさかロストロギア?
 残念ながらそれを否定できない。

「でも負けられない」

 今日の戦いではあの人に殺意がなかった。
 だけどもしはじめからあの赤い槍を構えられて殺す気でいたら殺されている。
 それでも

「……フェイト」
「大丈夫。だけどあの人、アーチャーには気をつけないと」

 大丈夫。
 止まるわけにはいかない。
 ちゃんとジュエルシードを集めて帰るんだ。

 だから待ってて母さん。

 すぐに帰るから。




 それぞれの思いを胸に夜は更けていく。




side 士郎

 黙々と魔弾を作り続けた。
 そして、魔弾はなんとか完成した。
 だが

「さすがに寝る暇はないか」

 太陽はすでに昇っており、いつも起きている時間より遅い。
 まあ、少し雲が多いので洗濯物が乾きにくそうではある。
 朝食をとって準備したら出ないとまずいな。
 まずは眠気覚ましにシャワーを浴びるとしよう。

 さすがに徹夜明けなので眠たかったが、いつも通り学校に行く。
 一応、吸血鬼なので夜の活動は得意というか本分なのだが、夜寝ていないとただでさえ苦手な昼間の行動がさらにきつくなる。
 夜に寝て、昼間に出歩く吸血鬼というのも変な話だ。

 そんな中、なのは達と食事をしていたら突然

「士郎君、今日空いてる?」

 と聞かれた。
 とりあえず今日の予定を思い出してみる。
 月村家のバイトも今日はないし、魔弾も完成しているので特に思い当たることもない。

「ああ、特に予定は入ってないけど、どうかしたのか?」
「えっとね。士郎君のことお母さんが紹介してほしいって」

 なのはの言葉に全てが停止した。
 はあ、なんで今日に限って空が曇っているという理由で教室で昼食にしたのだろう。
 空を睨むがこの状況が変わるはずもない。
 とりあえずは食べ終わった弁当をしまい、足音も立てずにドアに向かう。
 そして、ドアを握った瞬間

「「「「「「「「「「「え~み~や~!!!!!!」」」」」」」」」」」

 時は動き出す。
 ドアを一気に開け、駆ける。
 ふむ、過去最大の怨念の叫びだ。
 さすがに捕まったら本当に殺されそうだ。
 それにしてもなのはのお母さんに紹介されるだけでここまで過剰に反応したのだろうか?

 まあ、本能的に嫌な予感がしたからとりあえず逃げたけど。
 それにどんどん人数が増えている。
 そんなとき男子達の叫び声が聞こえた。

「お母さんに紹介ってそんな関係なのか!!」
「転校してきたこのわずかな期間に高町さんとそんな関係になっているなんて!!」

 なんか話がおかしな方に進んでないか?
 そんな関係って……どういうことだ?

 ……少し大人の視線で考えてみよう。
 一組の男女がいてその女性の母親に男の方を紹介する。
 つまりは…………交際の挨拶?

「なるほどそういうことか」

 って呑気に納得してる場合じゃない。
 いや、それ以前になんで紹介されるだけで、なのはと俺が付き合っているという事まで話が飛躍してるんだ?
 正直、誤解を解きたいがこの状況ではそれも不可能。
 それに学校内を走り回っているせいで情報が歪んでだんだんと酷くなってきている。

「衛宮と高町さんが結婚を前提に付き合っているだと!!」
「今日高町さんのご両親に挨拶にいくらしいぞ。何としても阻止しろ!!」
「この歳で婚約など許すまじ!!」

 一体何がどうなれば小学生が結婚や婚約といった話まで飛躍するのだ?
 今の小学生の思考とは摩訶不思議なものだ。
 それにどう考えても他クラス、他学年の男子まで混じってるぞ。
 とりあえずは昼休み中は逃げ切ることに専念するとしよう。

 ちなみにこの鬼ごっこ、本当に昼休みの終わりまで続いた。

 昼休みを無事に逃げ切り、放課後はなのは、アリサ、すずかがかばってくれたので無事に学校を後にできた。
 で、四人でなのはの両親が経営している喫茶・翠屋に来ていた。

「ただいま」
「おかえりさい。この子が衛宮士郎君?」
「うん、そうだよ」

 なのはが店の中に声をかけると奥から一人の女性が現れた。
 かなり若い。
 髪の色といいなのはとよく似ている。
 なのはのもう一人のお姉さんか?
 それにしてもお姉さんがものすごく俺を見てるのだがどうかしただろうか?
 とりあえず軽く会釈しておく。

「士郎君、紹介するね。翠屋のお菓子職人さんで私のお母さんの」
「高町桃子といいます。よろしくね」
「はじめまして、衛宮士郎です」

 正直、驚いた。
 お母さんってかなり若く見えるぞ。
 おそらく美由希さんと並んでも姉妹にしか見えないだろう。
 と奥から男性が出てくる。
 恭也さんと似た顔立ち、恐らくなのはのお父さん。

「はじめまして、なのはの父の高町士郎だ」
「お邪魔してます。衛宮士郎といいます」

 なのはのお父さんの士郎さんとも軽く挨拶を交わす。
 それにしても同じ名前なのか。
 あとで字を聞いてみよう。
 案外同じかもしれないけど。

「さあさあ、着替えて厨房にいらっしゃい」
「え? あの」

 士郎さんとも挨拶が終わるや否や桃子さんに厨房に引きずられていく。
 えっと……これってどういう事ですか?
 理解が追いつかず、士郎さんに視線を向けると苦笑いしながら

「士郎君のケーキがおいしかったから、腕前に興味津々なんだ。
 まあ、付きあってやってくれ」
「そうそう。あのケーキを作ったのがなのはと同い年の子だなんて信じられなかったんだから。
 だから早くいきましょ、シロ君」

 なるほど、そういうことか。
 それは納得したのだが

「あの、シロ君って」
「士郎さんと同じ名前だと間違えるといけないでしょ。だからシロ君」

 左様ですか。
 しかし油断していた。
 高町家と月村家に繋がりがあるんだから、忍さんと桃子さんにも繋がりがあっても何ら不思議ではないことを 
 

 
後書き
第十二話更新です。
使用拳銃は大口径銃として『タウルス レイジングブル』、そして隠し持ちやすい『グロック26』にしました。

銃案では沢山のご意見ありがとうございました。
改めてお礼申し上げます。

ではでは 
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