ツキノワグマも怖い
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第四章
「ツキノワグマはです」
「ずっと大人しくて危険じゃないってだね」
「思ってました」
「それは事実だけれどね」
「それでもですね」
「やっぱり熊は熊だよ」
この生きものだというのだ。
「紛れもなくね」
「そういうことですね」
「怖いんだよ」
「そのことは忘れたらいけないですね」
「食い殺されたって話は聞かなくても」
ツキノワグマからだ。
「怖いよ、あとね」
「あと?」
「北海道では羆は荒ぶる神だね」
「アイヌの人達の話ではですね」
「自然のね」
「そうですね、そうした話があります」
ユーカリにというのだ、アイヌの人達の伝承の。
「僕はそうしたお話も聞いてます」
「そうだね、それはこっちでもだよ」
「本州、本土の方でもですね」
「妖怪でいるんだよ」
「妖怪ですか」
「鬼熊っていってね」
この妖怪の名前を出した。
「年老いた熊がなる妖怪だけれど」
「怖いんですね」
「農家の牛や馬をさらって」
そうしてというのだ。
「食べるね」
「怖い妖怪ですか」
「人を襲わない様でも」
それでもというのだ。
「牛や馬をそうするんだから」
「相当怖いですね」
「そうだよ、こうした妖怪の話もあるし」
それでというのだ。
「熊はね」
「怖いですね」
「こっちでもね」
「そうした生きものですね」
「そのことはわかっておかないとね」
「そうですね」
「さもないと」
そうでなければというのだ。
「大変なことにもね」
「なりますね」
「そうだよ、ツキノワグマも」
「猛獣ですね」
「だからね」
それ故にというのだ。
「山に行っても」
「油断しないことですね」
「きみもね」
「心掛けておきます、そういえば」
ここで大林はこんなことを言った。
「長野も雪多いですね」
「ここ山が多いからね」
築地もそれはと返した。
「寒いしね」
「雪多いですね」
「だから冬で車の時は」
「要注意ですね」
「そこは同じだよ」
「北海道と」
「そうだよ、もうね」
冬になると、というのだ。
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