ツキノワグマも怖い
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第三章
「それで人を殺すなんてね」
「まずないですか」
「喰らうとかは」
「そうですよね」
「けれど熊は熊なんだよ」
このことは紛れもない事実だというのだ。
「それでだよ」
「怖いんですね」
「畑だって荒らすし」
「獣害ですね」
「深刻な問題だけれどね」
日本の農業ではだ。
「熊だけじゃないし」
「狐に狸に鹿にハクビシンと」
「あれだよ、狼がいなくなって」
ニホンオオカミである。
「そのせいでね」
「そうした生きものが増えて」
「山で増え過ぎて食べるものが足りなくなったんだよ」
「それで、ですね」
「畑まで出て来てな」
そうしてというのだ。
「荒らしてるんだよ」
「そうですね」
「それでな」
そしてというのだ。
「そこでその人も襲われたんだよ」
「それでそこまでの大怪我ですね」
「ああ、死ななかったけれどな」
それでもというのだ。
「そうなったんだよ」
「そうですか」
「それでツキノワグマもな」
「怖いんですね」
「熊だからな」
この生きものであることは変わらないというのだ。
「気を付けないと駄目なんだ」
「間違っても素手じゃ戦えないですね」
「そうだよ」
まさにというのだ。
「それは無謀だよ」
「僕も熊は」
「わかってるね」
「はい、羆からです」
まさにこの生きものからというのだ。
「それは絶対にです」
「無理だね」
「銃を持っていないと」
さもないと、というのだ。
「退治なんてです」
「出来ないね」
「実際三毛別でもです」
ここでもこの事件のことを話した。
「軍隊が動員されて」
「銃で狙撃してだね」
「やっと退治した位ですから」
「あの熊もね」
「そしてツキノワグマもですね」
「そうだよ」
まさにというのだ。
「襲い掛かられたら怖いんだよ」
「命に関わりますね」
「そしてだよ」
さらに話すのだった。
「素手だと」
「大怪我間違いなしですね」
「その人みたいにね」
「そうですか、いや本当にです」
真顔のままだ、彼は言った。
「今回の事件は驚きました」
「そうだね」
「羆と比べますと」
それこそというのだ。
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