仮面ライダーAP
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孤島編 悪魔の鉄人と気高き処女姫 最終話
前書き
たなか えーじ先生に有償依頼で描いて頂いた、ヘレンと真凛のツーショットをここぞというところで再掲……! 2人ともえちえちのむちむちで大変素晴らしい……! たなか先生、誠にありがとうございました!(*≧∀≦*)
(あの青いチャイナドレスはまさか……!? ……いいえ、今は奴を仕留めるのが先決。そういうことよね、真凛!)
突如ヘレンの目の前に現れた、チャイナドレスの美女。あれは自分の心の弱さが見せている幻なのか。それとも本当に、自分が知っている真凛・S・スチュワートなのか。
今は、それを確かめていられる状況ではない。もし本当に真凛本人だったのだとしても、今はミサイルスパルタンの打倒を優先しろと言うだろう。
(幻影でもなんでもいい……! 真凛! 今だけでも、私に力を貸してッ!)
僅かな逡巡の果てに、その結論に辿り着いたヘレンは――意を決したように凛々しく気高い貌を露わにする。眼前のカスタムパーツを手に取った彼女は、即座にスコーピオンの銃身下部にそれを装着し、サラマンダーを完成させていた。
――そうよ、ヘレン。あなたはそれで良い。
謎の女が、人知れずそう呟くと同時に。グレネードランチャーとして生まれ変わった愛銃を構えたヘレンは、その砲口をミサイルスパルタンの胴体部に向ける。狙いはもちろん、諸悪の根源たるアイアンザックだ。
「……このミサイルスパルタンは我が計画の成果物の中で、最も仮面ライダーGの戦力に近付いた最高傑作なのだッ! 私の研究こそがッ……絶対なのだァアァーッ!」
かつてシェードを圧倒し、「正義」と「力」の象徴となった仮面ライダーの再現。スパルタン計画にも、新世代ライダー開発計画にも共通しているその目的に、最も近付いたのは自身の最高傑作なのだとアイアンザックは叫ぶ。
そんな彼と真っ向から対峙するヘレンは――憔悴しながらも、挑発的な笑みを浮かべて引き金に指を掛けていた。まるで、真凛が乗り移ったかのように。
「……生憎だけど。『仮面ライダー』からは、あなたが1番遠いのよッ!」
そんな彼を永遠に黙らせる、必殺のグレネード弾。サラマンダーの砲口から飛び出したその1発が、容赦なくミサイルスパルタンの胴体に――アイアンザックに炸裂する。
発射の反動により、ヘレンの爆乳と巨尻がどたぷんっと揺れ動き。ブロンドのショートヘアが靡く瞬間、スーツの内側で汗ばんだ彼女の肉体が、その隅々から芳醇な雌の匂いを滲ませる。操縦者を「爆破」された鉄人が力無く斃れたのは、その直後だった。
「ぐぅおぉおあぁあぁああッ……! か、めん、ライダァァアッ……! その名は私のぉおぉッ……!」
地に倒れ伏したミサイルスパルタンの巨大な腕は軋みながらも動き続け、ヘレンとオルバスを捕まえようとする。だが、その手指が彼らに届くことはなかった。
うつ伏せに倒れ、ミサイルスパルタンの巨躯に押し潰されたアイアンザックは、そのまま最愛の傑作と運命を共にすることになったのである。そんな彼の最期を見届けたヘレンとオルバスは、複雑な表情を浮かべて立ち上がっていた。
『自爆装置が作動しました。全構成員は直ちに避難してください。繰り返します。自爆装置が作動しました。全構成員は直ちに――』
「なっ……自爆ですって!?」
「アイアンザックの野郎、俺達を道連れにしようってのか! どこまでも往生際の悪いッ!」
その時、突如この一帯にけたたましい警報が鳴り響いて来る。どうやらアイアンザックの死に反応して、自爆装置が作動するシステムが設けられていたようだ。万一新世代ライダー達に敗れたとしても、タダでは死なないという執念によるものなのだろう。
とにかく、この場に留まっているわけには行かない。オルバスとヘレンは来た道を引き返して要塞から脱出するべく、アイアンザックが開けた「大穴」を見上げていた。
すでに謎の女は姿を消していたが、ヘレンが降下前に固定していたワイヤーはまだ上階に繋がっている。これを利用しない手はないだろう。
「私のワイヤーなら安全に上まで登れる。さぁ、私に掴まって!」
「……お、おう!」
ワイヤーの固定が十分であることを確認しつつ、ヘレンはオルバスに向けてか細い手を差し伸べる。凹凸の激しいボディラインが露わになっている軽装型のスーツを一瞥したオルバスは、躊躇いがちにその手を取り、彼女のくびれた腰に腕を回していた。
鎧越しである以上は感触など分からないのだから、ヘレンの爆乳がむにゅりと密着して来ることなど、気にする必要はない。そもそも迅速にここから脱出しなければならない場面なのだから、いちいち気を取られてはいられない。この状況を鑑みれば、容易に頭で理解出来ることだ。
「……まるっきり意識されないってのも、それはそれでなんかイヤだな……」
「何か言った?」
「別に!」
それでも、「健全な男子」であるオルバスこと忠義の本心としては――当のヘレンが全く気にする素振りも見せない点について、思うところがあったのか。彼はどこか腑に落ちない表情を浮かべながら、ヘレンの身体を抱き寄せていた。
◆
そして、アイアンザックが開けた「大穴」から上階に登った2人は、残された力を振り絞って要塞内部を走り抜けて行く。疲弊し切った身体を引き摺るように、入り口前まで足を運んだ2人を待っていたのは――1機のヘリコプターだった。
「待ってたぜぇお2人さん! エスコートの準備は万全だァ、早いところ乗ってくれッ!」
「おうっ、待たせたなマイク! アーヴィング捜査官、行くぜ!」
「ええっ!」
オルバスこと忠義を乗せて来たヘリが、2人を暖かく出迎えていたのである。共に幾つもの事件を解決して来た「相棒」である、ヘリの男性パイロット――マイクに手を振り、オルバスは高度を下げた機内に素早く跳び乗って行く。彼の手を取ったヘレンも、それに続いて何とかヘリに乗り込むことが出来た。
「マイク、急いでくれ! もうすぐ島が吹っ飛ぶ!」
「おいおいマジかそりゃあ!? どんなサプライズだよ、今日は俺の誕生日じゃないぜぇ!? ……それなら超特急で出発しなきゃなぁ、2人ともしっかり掴まってろよッ!」
「えぇ、お願いっ!」
2人の搭乗を確認したマイクは彼らの言葉を待つまでもなく、一気に高度を上げて全速力でその場から飛び去って行く。シャドーフォートレス島を飲み込むほどの爆炎が要塞内部から噴き上がったのは、それから僅か1分後のことであった。
「……っはぁ〜! 今日の俺達、過去最高にツイてるぜぇ……!」
「あぁ……全く、最高だ」
ミサイルスパルタン用の予備弾頭をはじめとする島中の爆薬が、自爆装置によって一気に誘爆したのだ。あとほんの少し離陸が遅れていたら、マイク達も島と運命を共にしていたのだろう。その光景を見届けたマイクとオルバスは顔を見合わせ、共に安堵の息を漏らしていた。
「ふぅっ……今回ばかりはさすがにダメかと思ったぜ。そういやぁ、アーヴィング捜査官はそのスーツ脱がないのか? 随分汗だくじゃねぇか」
「……私にここで裸になれって言ってる?」
「あぁ……そういうタイプのスーツか。悪い、今のはナシだ」
間一髪のところで窮地を脱したことを実感し、変身を解除したオルバスこと忠義。彼は素顔を晒しているヘレンと共に、深く息を吐いて背凭れに身体を預けて行く。水平線の彼方からは朝陽が登り始めており、眩い陽光が彼らを照らし出そうとしていた。
「……帰ったら1杯やろうぜ、マイク。今日ばっかりは、飲まなきゃやってられねぇよ」
「おう、それなら場所は俺に任せとけ。良い店知ってんだ」
「ハッ、それを聞いてロクな店に当たった試しが無いんだが?」
「今度は間違いねぇよ、マイク様の眼を信じなぁ」
「信じてるさぁ、パイロットとしての眼だけはな」
赤と黒を基調とするノースリーブの特殊戦闘服を着用している、金髪碧眼の色白な美男子。そんな正体を露わにした忠義は朝陽に視線を向けながら、疲れ果てた表情を浮かべてマイクと軽口を叩き合っていた。
「……しっかしアイアンザックの野郎、最後の最後まで人騒がせな奴だったぜ」
「本当、間一髪だったわね……。それにしても、このサラマンダーは一体……?」
一方、ヘレンは何故かあの現場に落ちていたサラマンダーのパーツに視線を落とし、訝しげな表情を浮かべている。そんな彼女の手元に気付いたマイクは、あっと驚いたように声を上げていた。
「あっ!? おいおいアーヴィング捜査官! そのサラマンダー、あんたが見付けてくれてたのか!? 対策室の武器庫からサラマンダーのパーツが盗まれてたってんで、あっちじゃ大騒ぎになってたんだぜ!?」
「え……!?」
「監視カメラの映像を細工されてたせいで、誰が盗んだのかも分からなかったって話だが……ひとまず回収には成功したってことだな! さすがはアーヴィング捜査官だぜぇ、ミサイルみてぇなオッパイだけが取り柄じゃないってことだなっ!」
「むっ……ちょっと、失礼ねっ!」
マイクの無遠慮な発言に眉を顰め、ヘレンは抗議の声を上げ始めていた。そんな彼らを乗せたヘリは、水平線を艶やかに彩る朝陽を浴びながら、出発地点であるこの某国の首都を目指して大空へと飛び去って行く。
「……ふふっ」
海面を漂う水上バイクに跨り、その様子を見上げていた1人の爆乳美女は――蠱惑的な笑みを浮かべながら、ハンドルに白く優美な手指を絡ませていた。青い扇情的なチャイナドレスは、その豊満な肢体にぴっちりと密着している。
安産型のラインを描いた極上の爆尻は、シートにむにゅりと押し付けられ淫らに形を変えていた。エンジンが始動した瞬間、推定Kカップという超弩級の爆乳がどたぷんっと揺れ動いている。細く引き締まった腰つきに対してあまりに豊穣な果実が、ぷるぷると弾んでいた。
忠義とヘレンにシャドーフォートレス島の情報を流し、古巣である対策室の武器庫からサラマンダーを「拝借」し、ヘレンの窮地に駆け付けていた謎の美女。彼女は空の彼方に飛び去ったヘリを見送った後、真逆の方向へと水上バイクを切り返し、水飛沫を上げて海原の向こうへと走り去って行く。
「……これからも進み続けなさい、ヘレン。あなた自身が信じる道を。あなた自身が信じる、正義のために……」
自分達はそれぞれ違う「道」に進んで行くしかないのだと、「最愛の弟子」に示すかのように。妖艶な微笑を浮かべる爆乳美女こと真凛・S・スチュワートは、大海の果てに向かって旅立つのだった――。
◆
――私です。アイアンザックは「虎の子」のミサイルスパルタンを撃破され、死亡しました。ヘレン・アーヴィングは仮面ライダーオルバスと共に、無事に島を離脱しております。
――しかし、シャドーフォートレス島は自爆装置の作動によって焦土と化しています。ミサイルスパルタンも失われ、ノバシェードはますます衰退の一途を辿ることになるでしょうが……ヘレン・アーヴィングの功績を証明し得る物的証拠も残ってはいないでしょう。アイアンザックが完成させたミサイルスパルタンを横取りしつつ、彼女に王族としての「箔」を付ける……というあなたの目論見通りには行かなかったようですね。
――あら、あなたともあろうお方が何を驚かれるのでしょう。もしや……この私が何も知らないまま、あなたから提供された情報を対策室とオルバスに流していた……とでも? アイアンザックは気付きかけていたようですし……私もとうに知っているのですよ。本人達ですら知らない、彼らの……アーヴィング兄妹の正体を。
――1980年代にこの国で起きていた、王位継承争い。その政争の中で当時の第2王子は、第1王子派による暗殺から逃れるため、合衆国政府の手を借りてアメリカに亡命された。そして、アメリカ人としての国籍を得た元第2王子の新たな名は……アラン・アーヴィング。
――2人の子宝に恵まれたそのお方は、大恩あるアメリカに報いるため、旧シェードの蛇型怪人に暗殺されるまで……合衆国政府直属の特務捜査官として、命の限り尽力されていた。
――そして、彼が遺された2人の兄妹。ロビン・アーヴィングとヘレン・アーヴィングは、亡き父上の無念を背負って捜査官となり。妹のヘレンは奇しくも、任務としてこの国に還って来た。……数奇な巡り合わせがあったものですね。
――40年前の政争のことは、あなたも深く悔いておられたのでしょう。故に弟君の「忘れ形見」を、1人でも王族として迎え入れようとお考えになった。そのための「箔」を付けさせるために……アイアンザックの計画を察知していながら、マス・ライダー軽装型が完成するまで敢えて彼を泳がせていた。
――しかし、それは決して許されることではありません。彼女はあくまでヘレン・アーヴィングという1人の人間。ご自分が「お世継ぎ」に恵まれなかったからといって……あなたの独り善がりな「贖罪」に、彼女を利用させるわけには行きません。
――あなたの思惑があろうと無かろうと、彼女はこの先も特務捜査官として戦い続けるでしょう。それが結果として、この国を守ることにも繋がります。しかしそれはヘレン・アーヴィングという一個人の矜持であり、この国の王族としてではありません。どうか、それだけは忘れないで頂きたい。
――過去に囚われているあなたに、彼女の将来を決めさせはしません。ゆめゆめ、お忘れなきよう……国王陛下。
後書き
今回でとうとう、シャドーフォートレス島を舞台にした物語も完結となりました。本章も最後まで見届けて頂き、誠にありがとうございます!٩( 'ω' )و
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