八条学園騒動記

「特にだ」
「気にすることはないですね」
「縄張りを出るとな」
「何もなしですね」
「そうだ、狂犬病か相当餓えていない限りな」
　そうした特殊と言っていい状況でないと、というのだ。
「狼は人を襲わず」
「ニホンオオカミも然りで」
「日本ではいい生きものとされてな」
　まさに大きな神と呼ばれるまでにというのだ。
「こうして家畜化もな」
「していますね」
「そういうことだ」
「それが連合ですね」
「狼は嫌われていないどころかな」
「有り難い存在ですね」
「そうした生きものだ、しかしこのニホンオオカミはな」
　寝ているその狼を見てこんなことも言った。
「ずっと寝ているが」
「しかも気持ちよさそうに」
「まさに飼い慣らされたな」
「牧羊犬の様ですね」
「狼と言ってもな」　
　それでもというのだ。
「よく言われている獰猛さや精悍さがな」
「見られないですね」
「これが連合のだ」
「狼ですね」
「そうなのだろうかな」
「肉食であっても」
　上等兵も言った。
「野生から外れると」
「こうなるのかもな」
「そういうことですね」
「エウロパでは狼はあくまでだ」
「狂暴で精悍な」
「残忍で狡猾でな」
　そしてというのだ。
「そうした生きものだな」
「その認識です」
「家畜を襲うからな」
　それ故にというのだ。
「そうした認識だったが」
「農業から見ると」
「これで柵をして番犬を置くとな」
　牧場にというのだ。
「何でもない」
「狼が近寄らないので」
「それでも周りにいると嫌だな」
「どうしても」
「だから言われた、まして牧場がなくな」
　それでというのだ。
「山等で放牧をしているとな」
「狼少年の童話の様に」
「そうしているとな」
「何時襲われるかわからないですね」
「家畜がな、だからだ」
「エウロパでは恐れられ嫌われていますね」
「その時からな」
　放牧の為にというのだ。
「連合では放牧はな」
「まずしないですね」
「モンゴルでは行うが」
　この国ではというのだ。
「これは彼等が遊牧民でな」
「牧場をもうけず」
「草原を移動してな」
　そうしてというのだ。