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海底で微睡む

作者:久遠-kuon-
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狭間-4

 段々と潮が引いていって、陸が現れる。
 ……そこでなんとなく、この風景の"終わり"を感じた。

 また、風景が変わった。

 冷たくなってきた風が、木の葉を揺らして向こうのほうへ駆け抜けていく。
 今度の景色は、紅葉が美しい山。おそらく、登山道だろう。

 ヒラヒラと舞い落ちてきたもみじをつかまえて、私は力なく笑った。

「みんながお母さんやお父さんと旅行に行ってるのに、私だけ行けなくて……ここにも、一人で来たんだよね」

 母を亡くして、父は壊れた。そんな現実から逃げ出したくなって、初めて一人で来た場所。
 でも、周りの楽しそうな声を聞いて、結局この場所を楽しむことはできなかった。

「……こんなに綺麗なのに。あんなに、いろいろな場所に連れていってもらって、風景の楽しみ方を知ったのに……結局、忘れてしまうなんて」 
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