リュカ伝の外伝
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幕間狂言『女の涙に要注意』
前書き
平和だなぁ……
(グランバニア城・宰相執務室)
ユニSIDE
今日は月曜日。
彼氏との楽しい休暇は昨日の日曜日。
ムカつく上司の下で、今週もお勤めだ。
仕事自体は楽しい。
リュカ様の為に働けることは、心の底から嬉しい。
仕事内容に不満を持ったことは一度も無い。
でも月曜日の朝は憂鬱だ。
何度も言うが仕事は楽しいし、リュカ様の為なので嬉しい。
だが直属の上司が……
彼氏のクロウは直属の上司がリュカ様だ。
凄く羨ましい!
だが私の直属の上司は……
月曜は毎週こんな感じだ。
いや……日曜の夜からクロウに愚痴ってるわね。
でもリュカ様の為と自分に言い聞かせ、今週も出仕致します。
AM8:35。
宰相閣下は基本的に一番乗りで仕事をしている。
始業はAM9:00からなので、その間は常識の範囲内でおしゃべりをしていても問題無い。
とは言え無駄に騒ぐ必要も無いから、上司に『おはようございます』とだけ発し自分の席へ……
私は出仕して最初に自分の机周りを雑巾等で掃除し、それから席に座って今日の予定などに目を通している。
予定はほぼほぼ頭に入っているが、それでも抜けがあった場合に備えて毎朝確認を怠らない。
そうこうしてるとAM8:50になり、執務室内にも部下達が出仕してくる。
殆どの者は席に着くとAM9:00までの間、仕事の準備に取りかかり、書類等に目を通したり記入したりしている。
そんなタイミングだった……
もう既に仕事を始めてる宰相閣下に勢いよく近付いてくる人物が。
総参謀長閣下だ。
またどうせ面倒臭いことに巻き込まれて、文句を言いに来たのだろう。
私も部下達も最初だけ目で追って、直ぐに自分の仕事分に視線を戻す。
また騒がしくなるんだろうなぁ……と思いながら。
「ウルフ君! 陛下がピエちゃんを泣かしたって聞いたんだけど、如何言う事!?」
爆弾発言!
この部屋に居た誰も(宰相閣下を除く)が持っていた書類を“バサッ”と机に落とし視線を総参謀長閣下へと向ける。
流石の宰相閣下も寝耳に水だったのか、机の前に立ってる総参謀長閣下をチェック中の書類を手に持ったままの状態で驚き見上げてる。
これは仕事どころでは無いわ! さあ宰相閣下、その痴話喧嘩を根掘り葉掘り聞きましょう!
「お前……人前でも彼女のことを『ピエちゃん』って呼んでんの?」
「「「今そこじゃねーだろ!!」」」
思わず叫んでしまったが、周囲の者も同じ気持ちだったのか何人かとハモってしまった。
「何だお前等……他人のプライベートに口出ししてんじゃねーぞ!」
代表して私に視線を向けて、つい叫んでしまった事を咎めてくる。
いや、黙ってるなんて無理でしょう!?
「そんなことより、深く内容を聞いてこないなんて……やっぱり君は何か知ってるんでしょ!?」
「知らねーよ。深く内容を聞かないのは、巻き込まれたくないからだよ。一番面倒臭ーんだよ……痴情の縺れって! 何で俺が王様の女関係の後始末をしなきゃなんねーんだよ!」
国家に貢献してるだけでリュカ様の弟子を名乗るな!
そういった諸々に巻き込まれるのもお前のポジションだろうが!
いいから根掘り葉掘り聞きなさいよね!
「大体何で俺が内容を知ってるって思ったんだよ? そんなん俺の下に来る前に、当事者に事情を聞くとか、情報の出所にその場で問い質すとか……先にやることが色々あんじゃんか!」
た、確かに……そうしてればもっと話が早かったのに。
「き、聞こうとしたよ! 今朝、廊下ですれ違った際に僕へこの事を教えてくれたピエール大将に、詳しいことを聞こうと……で、でも“これ以上は聞くな”的な感じのオーラを醸し出して行っちゃったんだよぅ」
うっ……それは聞きづらい。
ピエール大将閣下の圧力で気圧されたら、ピュアな一般人にはそれ以上の追求は出来ないわ。
それで大概のことを知ってる自称天才に尋ねに来たわけね。
「何度も言うが知るかそんなん! 情報元がダメだったら、直接当事者本人に聞けよ! 仮に俺が何か知ってたとしても、張本人に聞くのが一番手っ取り早いだろうが!」
いやいや……張本人には聞きづらい事でしょうに。
「バーカバーカ! 相手は王様だぞぅ! そんなことを聞けるわけないだろ!」
「馬鹿はお前だ馬鹿! 当事者の中には平民女も居るだろうが! そっちの方に誠意を持って優しく尋ねるとか、権力を笠に着て高圧的に詰問するとか、やり様は色々あんだろが!」
「自分の彼女相手に権力を振り翳せるわけないでしょ!」
「尻に敷かれてるから出来ないんだ、この小心者!」
いや自分の彼女相手に権力を振り翳すヤツの方が異常よ。
「はぁ~まったくもぅ……本当に君は常識を持ち合わせてないお子ちゃまだな!」
「何だとこの小心者!?」
良いぞ、言ってやっちゃって下さい総参謀長閣下。
「世の中には怒らしちゃいけない……敵に回してはいけない存在ってのが三種類居るんだ。」
「……種類?」
三人……ではなくて?
「最初にグランバニア国王陛下。この人を怒らせると色んな意味でヤバい」
「それは同意だ。そしてそんなことは誰よりも知っている」
私も知っている。
「そして次に彼女や妻などの存在だ! グランバニア国王陛下よりは怖くないが、怒らせると心身を磨り減る人生になる」
「人によるだろ」
解ってないガキねぇ。
「最後に世の中の女性全般だ! 女性を敵に回してはいけない! 女性を敵に回した時の心労たるや子供の頃に体験した恥ずかしい黒歴史の比ではない!」
「俺は今、お前の子供の頃の黒歴史を知りたくなってきたぞ」
「僕の黒歴史なんか今は良いんだよ! それよりも今回の件……今回の件は今言った三種類の存在が100%当てはまるから、捨て石として君に調査依頼をしてもらいたいんじゃないかぁ!」
「つまり……俺ならリュカさん以外の存在を敵に回してもいい……と?」
「既に世の中の女性と複数形で彼女を敵に回してるじゃないか!」
「……………」
流石に言葉を失った宰相閣下は、口をパクパクさせた後に傍に立て掛けてあった剣を徐に抜き、総参謀長閣下と周囲の者を少し退けて懐から机の上に何かを設置する。
抜刀の所為で一瞬は何を設置したのか理解出来なかったけど、直ぐに思考が追い付きそれが何かを理解する。
何と設置した物体は一部の人間のみが所持してるMHだった!?
そして手早く誰かに連絡をすると……MHに映し出されたのはリュカ様だった!!
ヤベェ……巻き込まれた!
『何? こんな月曜の朝っぱらから……どゆこと?』
「リュカさん、申し訳ないんですけど今すぐ俺の執務室に来てくれますか。ピエールさんと一緒に!」
更にヤベェ!
VIPをも巻き込みやがった!
『え!? 何で上司で王様な僕が部下の下へ出向を命令されてんの? 普通逆じゃない?』
「普通は逆ですけど、今回はリュカさんの所為で俺が巻き込まれてるんでいいんです。大至急ピエールさんを伴って出向して下さい!」
そこまでぶっきらぼうに言い放つと、一方的に通信を着る宰相閣下。
リュカ様がピエール大将閣下を伴って執務室へ来るまで、宰相閣下は我々に向けて剣先を向け動きを封じていた。
部屋に入ってくるなり、後を付いてきてるピエール大将閣下は反省の色を覗えた。
如何やらここに来る前にリュカ様から今回の出向の理由説明要求があったのだろう。
そして、その内容は実にくだらない内容で在ることはリュカ様の『やれやれ』とした表情から覗える。
これは……月曜の朝からお説教をされそうだわ。
だからこの上司の下で仕事するのはストレスなのよぅ(泣)
追伸:
結局、今回の件は最近リュカ様が個人的に活動している音楽関係での事であり、ピエッサさんが泣かされたって事情はピエール大将閣下を初め、その場に居たビアンカ様・スノウさん……それとピエッサさんのご友人のアイリーンさん等の間での笑い話であった。
色恋ごとには一切関係ない。
私を含め、この部屋に居たオーディエンスにはお咎めもお説教も無く、終日不機嫌な宰相閣下との和気藹々としたワークタイム刑だけで済んだ……が、総参謀長閣下は夕方にピエッサさんから大説教が!
ピエール大将閣下にはリュカ様から数日間の禁欲生活の刑が言い渡されたわ。
ユニSIDE END
後書き
すぐパパに言い付けるウルポンw
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