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ハッピークローバー

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第八十四話 映画を観てその十三

「そういえば」
「そうだよな」
「不思議とね」
「何か正門のところに出るとかいう話もあるけれどな」
「それ以外はないわね」
「あそこで戦いがあってな」
 大坂の陣のことである。
「相当な人が亡くなったがな」
「無念を飲んでね」
「豊臣秀頼さんとかな」
「それでもそうしたお話ないわね」
「あるだろ、城が落ちてな」 
 そうなりというのだ。
「その後な」
「落ち武者の幽霊が出るとか」
「大坂城も激しい戦いがあってな」
「落城して」
「大勢の人が無念の死を遂げただろうしな」
「そうした話があってもおかしくないわね」
「そう思うけれどな」
 それがというのだ。
「あのお城にはな」
「ないわね」
「そうだよな」
「あれ何でかしらね」
「俺も不思議だ、二次大戦の時も空襲があって」
「天守閣だけ残ってね」 
 昭和六年に建てられたそれが奇跡的に残ったのだ、尚その周りは文字通り瓦礫の山になってしまっていた。
「あそこ陸軍の司令部あったから」
「それでやっぱりな」
「結構な人犠牲になったかもね」
「それでもな」
「軍人さんの幽霊のお話もないわね」
「不思議だな」
「そうね、大阪の幽霊とくれば」
 その話はというのだ。
「あそこなのよね」
「有名なのはな」
「それがわからないわね」
「ああ、それで富ちゃんもサンタさんは怖くなかったな」
「あまりね、というかサンタさんが妖怪で集団で襲って来るっていう」
 富美子は越智にここでは笑って話した。
「あの発想が面白かったわ」
「怖くなくてか」
「ええ、もっともサンタさんが怨霊だったら」
「怖かったな」
「そう思っていたわね」
「日本人で一番怖いのはな」
 越智はまた言った。
「怨霊だな」
「何と言ってもね」
「そうなるな」
「そうよね、祟られたくないわ」
 富美子は心から思って言った。
「八条学園って妖怪の話も多くて」
「幽霊の話も多いな」 
「そうだけれどね」
 自分達が通っている学校の話もした。
「どの妖怪も幽霊も出るだけで」
「俺達に何もしないからな」
「いいのよね」
「だから皆怖がらないだろ」
 学校の中にある数多くの怪談話をとだ、越智は富美子に話した。見れば二人も怖がっている気配は全くない。
「そうだろ」
「そうよね」
「外国の人達もな」
「ただ暮らしているだけなら」
 学園の中にというのだ。 
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