イベリス
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第百五話 何の為に学ぶかその十
「苦労もしなくて人として備えるべきことをな」
「一切備えていない」
「五十過ぎでも子供で白痴とまで言っていい」
「そんな人になったのね」
「ああ、そうなったのは自分もかなり悪いが」
「親御さんも悪かったのね」
「この母親の人もやっぱり一生何も努力しなくてだ」
父はまたこう言った。
「さっきも言ったがな」
「どうしようもない人だったのよね」
「悪い親からは悪い子供が出来るのはな」
「本当のことなのね」
「反面教師にしないとな」
そうした親はというのだ。
「本当にな」
「よくならないのね」
「そしてそれは難しいんだ」
親を反面教師にすることはというのだ、父は咲に酒を飲みながらだがそれでもそれはどうしてかも話した。
「それぞれの家庭で暮らしているとそこが普通になるからな」
「どんな問題のある家庭でも」
「酷い親がそのままな」
「普通になって」
「その親を反面教師にすることはな」
「難しいのね」
「自分の親がおかしいと思うのは」
実際に世間の常識から見ておかしいと、というのだ。
「他の家庭も知る、そして善悪の判断がつく」
「それからで」
「子供の頃なんてな」
「気付かないのね」
「そうしたものだからな」
「難しいのね」
「ああ、だから自分の親が酷くて」
このことに気付いてというのだ。
「反面教師にするのはな」
「難しいのね」
「これが中々な」
「そうなのね」
「だから悪い親からな」
まさにというのだ。
「悪い子供がな」
「出来るのね」
「その人もそうだった、碌でもないご母堂だったからだ」
「そんな碌でもない人だったのね」
「このお母さんはもう亡くなったがな」
「凄い嫌われていたでしょうね」
咲はこのことを予想して述べた。
「やっぱり」
「ああ、知ってる人皆からな」
「そうならない方がおかしいわね」
「人間の徳なんてな」
「一切なかったの」
「死んだら絶対に人間に生まれ変われないとまでな」
「それって凄いわね」
「言われていたんだ」
「仏教で言うと畜生道とか」
「いや、自分のお孫さんに餓鬼道にいると言われたらしい」
「餓鬼って」
「どんな人かわかるな」
「お孫さんにそう言われるとかね」
「大体わかるな」
「ええ」
咲も引きながら頷いた。
「本当にね」
「そんな人は子育てなんてな」
「そもそも育児放棄してたのよね」
「親戚の人に任せて自分は遊んでばかりだった」
「完璧毒親ね」
「だから皆から嫌われていたんだ」
そんな親だったからだというのだ。
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